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ミキタビ始めました!  作者: feel
3章 もう一つの小さな世界
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夜明け 98


 統括ロボットのライラは巨大ロボットの頭部にいるアイカの元へと向かっていた。巨大ロボットの頭部は中が空洞となっており、人が数人は入れるほどの余裕があった。


「アイカ様、侵入者を拘束し、地下へと収監いたしました。処遇はどういたしましょうか?」


「ありがとう。処遇は考えとくから、命令を解除するわ」


 アイカが命令を解除すると、ライラの瞳から赤井光が消えていった。


「ライラ様、カミネート様は…?」


「このロボットの魂になったわ。ライラみたいに自我を保つことはできなかったみたい…」


 ライラは顔を下に向けた。ライラはいまだにカミネートが父だったという記憶を有している。父がライラを大切にしていたことも。


 そのため、ライラは父に自分の事を話したい思いがあったが、アイカの命令によってそれは今日まで叶うことはなかった。ない物になってしまった。


「ミネトラも反逆者にしてなさい。これからは私と洗脳が解かれたナオキであなた達ロボットを管理するわ」


「……かしこまりました。残存しているロボットの確認をしてまいります」


「待ってライラ」


 ライラが他のロボットの回収に向かおうとすると、アイカはライラを引き留めた。


「ライラは空が明けるのを見たことはある?」


「はい。生前に見た最後の記憶です」


「そう。せっかくなら、私が初めて見る日の出に付き合ってくれない?」


 アイカは巨大ロボットの眼球に当たる窓から外の光景を見つめていた。外は真っ暗な暗闇ではなく、遠くの空は色づき始めていた。


「アナザーでは日は昇りませんよ?日の出というのでしょうか?」


「なら、夜明けにするわ。ただの夜明け。何も変えることのない、ただ戻すだけの」


 色づき始めた空はある程度明るくなると、強烈な光を放った。ライラはその光に目を細め、光が落ち着いたころに窓の外を見ると、太陽と雲一つない青空が広がっていた。


「風情には欠けるけど、悪くないものね。ありがとうライラ。そして、ごめんなさい」


「どういう事でしょうか?私は感謝される覚えも、謝罪を受ける覚えもありません」


「感謝は夜明けに付き合ってくれたこと。謝罪はあなたに残酷な命令をし続けたことよ」


 アイカはライラの胸に空いた穴をさらりと撫でる。穴が塞がるようなことはなかったが、ライラは不思議な感覚に浸された。


「では残存しているロボットに収集をかけたのち、こちらに戻ってきますね」


「ううん。ロボットを見つけたら、地下に行って鍵を開けて上げて。攻撃されそうになったら、抵抗していいからね」


「……かしこまりました。では、その作業が終わったのちにこちらへと」


 ライラはアイカの言葉を待たずに頭部からの出口へと進んだ。巨大ロボットから降りた後にライラはそんなことをした自分の手を見つめた。




「起きなリーナ!」


ライラの夢を見終わったリーナに眠気は残っておらず、カミヤが瞬間移動で飛ばす第一声でスッと体を起こした。


「夜が明けた。これからそっちにあの女のロボットが食事を運びに来ることだろう。そいつを襲撃して檻の鍵を奪いな」


「襲撃って…。私、ライラに負けてるので、できる可能性は低いですよ」


 リーナはライラへの襲撃という言葉で気分を悪くした。ライラ、統括ロボットへは元々好意を抱いており、出来ることならば苦しめたくない。その思いは夢を見たことにより、更に大きく確かな物へとなっていた。


「あんたが一対一で負けることは分かってる。だから、そこにいる全ての人間に話をつけてやったよ」


「全て…?」


 リーナがその言葉に首をかしげると、突然背後から肩を掴まれた。


「っな!?」


「ここから出ることができるなら、俺達も協力するぜ嬢ちゃん!」


 リーナが肩を掴む人物の方を見ると、それは昨日の晩にリーナを介護した男だった。


 その後ろには昨日の晩ではリーナから距離を取っていた男たちも、リーナを見つめていた。


「でも、数人でどうにかなるとは…」


「この中にいる奴らだけじゃない!この階層にいる奴全員だ!」


 筆頭格の男が声と腕を上げると、同じ階層にいたすべての人間が声と腕を同じように上げた。その声は、床を揺らすほど大きなものだった。


「まずはあのロボットがリーナ達のいる檻の前まで待機する。そして、そこに朝食を置く瞬間を見計らって対面の檻にいる連中が石を投げるんだ」


 カミヤの説明が始まり、リーナがいる檻の対面にいる男たちは手のひらほども先の尖った石を掲げる。その床の多くが剥がされており、男たちがこのために用意したということが分かった。


「石を当てられたロボットが前のめりになる。そこでリーナ達が衣服を引っ張るなりして、ロボットの身動きを取れなくしたら腰にある牢屋の鍵を奪ってどこかの檻に投げるんだ」


「そんなうまくいくとは思えないですけど…」


「前のめりにならなくても石を投げた連中は罰を受けるためにロボットと接触するだろ?そうなったら私が飛んで、ロボットから鍵を奪う。私も余裕はないからね。取り返しのつないような失敗に備えてこれは取っておきたい」


 リーナが最後に見たカミヤの顔はひどく青ざめており、健康にはとても見えなかった。おそらくまだ完全とは言えない容体なのだろう。


「ロボットから鍵を奪ったら、あとは全員を連れて巨大ロボットに向かう。そこで、私も合流してアイカとカミネートを倒して終わらせるよ」


「……分かりました。カミヤさんも無理しないでくださいね」


「私が無理しないと何も解決しないからね。あんた達とあの子たちだけは無事に帰してみせるよ」

 


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