地下の地下 95
本日6.15日に投稿を予定しておりました94話も投稿させていただいておりますので、まだお読みになっていない方はそちらの方からよろしくお願いいたします。
「……い……のか?」
「……け……るなよ」
ざわざわとした喧噪の中、リーナは自身の周囲に幾人かが集まっているのを感じた。しかし、統括ロボットの戦いで痛めた体は思うように起き上がることができず、目を開けることが精一杯だった。
「おい、こいつ目を覚ましたぞ!まだ生きてる!」
「嬢ちゃん!大丈夫か!?しっかりしろ、今水を持ってきてやる!」
リーナが目を開けると、周囲にいた男たちは慌てて水を持ってくる。
「起きれるか?」
「ん、いたた…」
横になっている体を起こそうと姿勢を変えると、統括ロボットに攻撃された腹部が激しく痛む。リーナは服の下を見るまでもなく、悲惨な状態になっているだろうと思った。
「手や足に傷はねぇな。腹に食らったのか?」
「はい。すみませんが、コップを口に当ててもらえませんか?」
男の一人がコップをもってリーナの口に水を流し込む。冷えた水ではなかったが、リーナはその水を飲みほすと、少し落ち着いた気がした。
「ここはどこですか?私、統括ロボットさんと戦ってて…」
「ここは病院の下の下。拘置所あらため、資材置き場だな」
リーナは男の話を聞きながら周囲を見渡すと、リーナ達がいる場所は檻で囲われており、檻の外には同じような部屋がいくつもあった。その部屋の中にも多くの人間が入っている。
「資材置場、ですか?」
「あぁ。ここは上の街で働けなくなった奴らが落とされる場所でな。俺達はここでアイカっていう女の能力に使われる時を待つんだ。まるで資材みたいだろ?」
男が説明すると周りの人間は顔を下に向けてしまった。
「皆さん、どうして抵抗しないんですか?」
「できないからだ。俺達はみんな体のどこかに不調を抱えている。それは病だったり、怪我だったり。もし、反乱を起こして成功したとしても勝った俺達はそれまでなんだ。何でも治る病院があるなんて甘い言葉に騙された俺達が馬鹿だったんだ!」
男は握り拳を作り、床を強く叩く。見ればその男には右足がなく、細い金属の棒が刺さっているだけだった。
「…その足を治すためにアナザーに?」
「あぁ。俺は生まれつき両足がなくてな。一度でいいから外を走ってみたいと思ってた。そんな時にアナザーの噂を聞いて友人と来たんだ。それで、医者に会って左足に触れてもらったんだ。その瞬間、足が生えたんだよ」
男は左足をさすりながら、見つめている。
「んで、右足は明日やるから入院しろって言われたんだ。したら、その晩に別の医者が来て治療費の話をされた。とてもじゃないが払えない額だったから、俺は左足の分だけ払って退院しようとした。そしたら、地下送りだ」
「ひどいですね…」
「いや、地下の街に行っただけなら良かったんだ。幸か不幸か外にいるような感覚は有ったからな。けど、生活費を友人が二人分稼げと言われてな。初めは気にするなって言ってくれたんだが、次第に苦しくなってきて、とうとう俺は捨てられてここにな」
リーナは男の足を治した医者がミネトラだということ。治療費の話をした医者がカミネートだということが分かった。
「まぁ、友人のことは憎んじゃないがな。せめて、正面から話してほしかったなぁ…」
男は目に涙を浮かべて、涙をこぼさないようにと上を向いた。
「暗い話をして悪かったな。腹も痛むだろうし、もう寝とけ。襲ったりしないからよ」
「いえ、上で仲間が戦ってるんですぐに戻らないと…!」
リーナは体を起こして立ち上がる。平衡感覚は完全には戻っておらず、ふらふらとよろけるが腹部の痛みは我慢できる程度に収まった。
「そういや、さっきも統括ロボットと戦ったとか…。あいつの胸に穴が空いてたがあれは嬢ちゃんがやったのか?」
「そういう訳ではないんですけど、私が空けました」
「そいつはすげぇ!昔あいつと戦ったやつは一瞬で負けたのに!見かけによらねぇな!」
男は感心したようにリーナを褒めたたえた。
「ここから出る方法はありますか?」
「一つだけある。だが、早くても明日の朝になるぞ」
「そんな…。今すぐ戻らないと…!」
焦るリーナは檻を掴んで折れないものかと力を加えるが、檻はびくともしない。それどころか、腹部の痛みがぶり返してしまった。
「いたた!」
リーナはしゃがみ込んで腹部を抑える。
「大丈夫か!?」
男はリーナの背中に手を置き、背中を撫でる。その手は優しい物で、リーナの痛みは引いて行った。
「ありがとうございます…。でも、早くしないと」
「落ち着きな」
どうしようかと悩んでいるリーナの頭に直接カミヤの声が届いた。周囲の人間には聞こえていないようで、男はリーナの方を心配そうに見ていた。
「カミヤさん!?良かった!瞬間移動で出してくれませんか?」
「落ち着けと言ってるだろう。お前はそこで丸一日寝ておきな」
「そんな暇ないですよ!早く戻ってアムリテたちと一緒に戦わないと!」
「そのアムリテ達がアイカに捕まったんだ。今戻しても無駄死にするだけだろ」
リーナはカミヤの言葉に耳を疑った。
「アムリテたちが捕まったって…?どういうことですか!?」
「詳しく聞きたいなら今はそこで寝てな。安心していいよ。まだあの三人は生きてる」
その言葉を最後にカミヤからの声は途絶えた。
「嬢ちゃん?さっきから何を言って…?」
「アムリテが捕まった…。でも死んでない…」
リーナはカミヤからの言葉で状況を整理し、自分にできることを導き出した。
「うるさくしてすみませんでした。私、寝ますね」
「お、おう」
呆気にとられる男を後目にリーナは固い床の上で眠りについた。
予約投稿できてますように!
これからも毎日投稿は続けて行きます!
楽しみにして下さっていた方にはご迷惑をおかけいたしました!




