表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミキタビ始めました!  作者: feel
3章 もう一つの小さな世界
91/293

ロボット 自我 91


 病院の廊下から姿を現した統括ロボットはアイカが座る木の下まで歩いて行き、リーナたちの方向へと振り返る。


「そういえばこの子には患者の治療を任せてたんだっけ。他のロボットと違って自我が強い分、複雑な命令でも簡単に渡せるのが便利なのよね」


「…統括ロボットさん、あなたの魂はどこにありますか?」


「は?そんなの答えるわけ───」


 統括ロボットはゆっくりと腕を上げて自身の胸に手を置く。その姿はまるで何かに祈るかのようだった。


「何教えてんの!?私はそんな許可出してないわよね!?」


「リーナ様、私は人を救う仕事に誇りを感じておりました。その誇りが失われる前にどうか、私を眠らせ

ていただけないでしょうか?」


「こいつ…!ライラに命じる。目の前にいる二人の侵入者を拘束、あるいは殺傷しなさい」


 アイカの命令を受けた統括ロボットの目は輝きを失い、スカートに手を入れて二本の小型ナイフを両手に取り出した。


「…カミネートは好きになれませんでしたけど、あなた達ロボットは好きでしたよ」


 統括ロボットがナイフを構えてリーナにへと向かう。対するリーナも短剣を構え直し、統括ロボットに向かって走り出す。


 最初の攻撃はわずかなリーチで勝っているリーナから発せられる。統括ロボットの胸を狙った横一線の一振り。統括ロボットは伸ばされた短剣に左手にしたナイフを当てて、短剣の軌道を上方向へと押し上げる。それにより、リーナの短剣は統括ロボットの前髪をかすめるだけに終わる。


 体が無防備になったリーナに対し、統括ロボットは短剣を握るリーナの右手首に向けて右手でナイフを突き刺そうとする。確実にリーナを殺すための一刀だ。リーナはその攻撃を左手で受け止めようとするが統括ロボットのナイフは寸前のところまで来ており、リーナの左手は間に合わない。


「ったあ!」


 リーナは左手が間に合わないと分かると、統括ロボットの手にめがけて頭突きを放った。リーナの頭突きは見事統括ロボットに当たり、統括ロボットのナイフは自身の頬を薄く切り裂く形となった。


 リーナは更に、がら空きになった統括ロボットの右脇腹へと回し蹴りを打ち込む。統括ロボットはその回し蹴りに耐え切れず、植草の中へと蹴り飛ばされた。


「ライラを蹴って折れない足って…。頑丈で済む話なの?」


 アイカはその光景に目を丸くした。統括ロボットの体は万が一にも患者を守れるようにと、一般的なロボットよりも硬い素材が使われている。それはもちろん重さ硬さにも比例しており、統括ロボットは全てのロボットの中で最硬、最重となっているのだ。


「木よ!全ての葉を散らしなさい!」


 アイカが腰を据え居ている木に命令をすると、その木は体を左右に大きく揺らす。次第に木の下には大量の葉が集まった。


「こんなに使う予定じゃなかったのに…!」


 アイカは忌々しいといった表情を浮かべてポケットから三つの電球を取り出すと、大量に溜まった葉の中へと落とし込んだ。電球を飲み込んだ葉は宙に浮きあがり、人の形を形成した。それはリーナが破壊した落ち葉人形を緑色に塗ったようなものだった。


「新緑よ!まずは後ろの魔法使いを攻撃しなさい!」


 葉人形はリーナと統括ロボットを避けるようにしてアムリテへと向かう。それに気づいたアムリテは杖を光らせ、リーナ戦っている間に準備していた水矢を葉人形へと撃ち放った。


「もうそいつのネタは分かってるのよ!」


 狙いはリーナが攻撃した時に魂が存在した人形の頭部だ。


「魂の位置くらい変えれるのよ!」


 アムリテの水矢は葉人形の魂を捕らえることはなく、葉人形の頭部を通過していってしまった。アムリテが次の手を放とうとすると、葉人形はアムリテに向けて右腕を伸ばした。攻撃するにはまだ距離はあり、一見無意味な行動と思われた葉人形の行動は、葉人形の右腕が宙へと舞ったことで攻撃の意味を成した。


「また切り刻まれちゃえば!?」


「同じ手を食らうほどあたしは弱くないわ!」


 アムリテはカバンに手を入れて、ドットバットの時に買っていたポーションを口にする。


「ミネトラに怒られるのは癪だけど、死んだら意味ないものね!」


 アムリテは空になったポーション瓶を地面へ投げ捨てて、宙に浮きあがっている葉っぱ目掛けて杖を構える。


「フォティア!」


 アムリテの杖先から炎が飛び出して宙に舞っていた葉っぱは燃え尽きて行く。アムリテは杖からでる火を絶やすことなく、葉人形の方へと向ける。葉人形は回避を試みるが左足が柱となった火と接触し、左足を切り離すことでやっと全損を避ける形になった。


 葉人形の左足を燃やし尽くしたところでアムリテの杖先から火が消えて行った。


「さぁ!もっと燃やされたいならそいつを使いなさい!それとも、あんたが相手になってもいいのよ!」


 アムリテはアイカへと杖を向けて、挑発を送る。


「水だけじゃなかったなんて…!ここには燃える素材しかないし…。もう!」


 アイカは木の上から飛び降りて、自身の後ろにある通路へと走って消えて行く。アムリテはそれを追おうとするが、行く手を統括ロボットと右腕、左足をなくした葉人形が行く手を阻む。


「アムリテ、統括ロボットさんは私がやるよ。その人形をお願いできる?」


「当り前よ。先に行って、あんな子捕まえといてあげるわ!」


 リーナは統括ロボットと再び刃を交えて、アムリテから距離を取る。


 アムリテはリーナが周囲から離れたのを確認すると、杖を光らせて葉人形の四方を水矢で取り囲んだ。


「頭でも右腕でも左足でもない。なら、次は胸の中と考えるのが自然よね」


 葉人形は水矢からの逃げ道を探すが、唯一逃れられるのはアイカが逃げた通路の方だけだ。しかし、ここを通すなと命令されたであろう葉人形は通路へ逃げることができなかった。


「哀れね」


 アムリテは葉人形に向けて小さく言葉をつぶやくと、水矢を胸部へと撃ち放つ。葉人形の胸部からは何かを壊す確かな手ごたえを感じ、葉人形はただの落ち葉へと変わって行った。


「さ、早く捕まえに行きましょうか!」


 アムリテはリーナと統括ロボットの戦いに割って入る選択肢を切り捨てて、アイカを追った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ