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ミキタビ始めました!  作者: feel
3章 もう一つの小さな世界
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魂の在りか 89


 アイカが水球の中にいるアムリテに向かって手を振ると、水球の中に残された落ち葉人形の片腕が散り散りになって水球の中で旋回を始めた。


「なっ!」


 水球の中で動き回る落ち葉はアムリテの皮膚を切り裂き、透明だった水球が赤く濁り始める。アムリテは水球の中で体を小さくして、被弾箇所を少なくしようとする。


「ほらほら、そのままだと細切れになっちゃうよ?」


 アイカと落ち葉人形はその光景を見つめているだけで、行動を起こす気配はない。


「魔法を解除して!」


 アムリテは杖を光らせて、水球を解除する。急な解除によりアムリテは地面に落とされ、アムリテの魔法から解かれた水は地面に広がる。しかし、落ち葉人形の片腕だった葉っぱたちは地面に落ちることなく人形の腕へと戻って行った。


「そっちの女の子は魔法は使わないの?せっかくだし、見てみたいな」


 アイカは余裕と言った笑みを浮かべて、リーナを挑発する。リーナはリュックに手を入れて中から弓と数本の矢を取り出す。


「アムリテ、私が時間を稼ぐから戦えるなら魔法の準備を、もう魔力が残ってないならカミヤさんの元まで走ってね」


 リーナは倒れるアムリテに意識があることだけを確認すると、アイカに向かって弓を構える。


「弓なんて私には当たらないわよ。せめて銃を持ってこないと」


「銃がなにかは知らないけど、弓は立派な武器になるんだよ?」


 リーナはアイカの頭部へと矢を放つ。矢は迷うことなくアイカの方へと向かうが、やはりアイカの傍に立っている木が枝を伸ばして直撃を防ぐ。


 それを予想していたのかリーナは弓が防がれる前から、アイカに向かって次の矢を放っていた。


「無駄だよ。枯紅」


 次に迫る矢に対し、落ち葉人形は自身の腕をぶつける。矢は落ち葉人形の腕に突き刺さるが、落ち葉人形は刺さった矢を淡々と引き抜いた。


「アイカさん、あなたがどんな苦しい思いをしたのかは知らない。けど、人の命を勝手にこんな風に扱って、それで人を傷つけるなんて許されるはずがない」


「……だから?私が使ってるのは人殺しや盗人の命。あなたに指図される覚えはない」


「たとえ罪を犯した人だとしても、人は変われる。あなたが変わってしまったように。今のあなたをナオキが見たらどう思うかな?」


「うるさい!私は変わってない!ナオキが私を拒絶するなら、それはあんたたちのせいでしょ!?」


 アイカの激昂に答えるかのようにして、落ち葉人形はリーナへと走り出す。そんな人形に対し、リーナは再び弓を構える。照準を落ち葉人形の右目に合わせて矢を放つ。


 落ち葉人形はその葉を左腕で受け止め、引き抜くことなくリーナへと右腕を振り下ろす。その攻撃をリーナは弓を使って受け止め、自分にかかる重心を横へと傾ける。落ち葉人形は体勢を崩し、前傾姿勢になる。


 落ち葉人形の顔がリーナの腰辺りまで来ると、リーナは落ち葉人形の攻撃を支えている弓から右腕を外して落ち葉人形の顔に殴り込む。殴ったという感触はないが、リーナの拳は落ち葉人形の顔へと深く入り込んでいく。


「三つの電球で何枚もの葉っぱを操れる…。なら、そこに核があると思うのは当たり前だよね?」


 リーナは落ち葉人形の顔の中で腕を振り回すと、落ち葉とは明らかに違う硬い何かに手をぶつけた。リーナはそれをしっかりと握りしめ、落ち葉人形から引きずり出した。落ち葉人形から出されたそれはまるで、電球の光そのものだた。


「これが核───あなたが使った人の命だね」


「私を挑発して枯紅と接近戦をするのが目的だったのね。いいわ。それはあげる。早く壊せば?」


 リーナは手の中に納まっている実態を持つ光とそれを奪われた落ち葉人形を見つめる。落ち葉人形は核である光を奪われたにもかかわらず、膝をつきながらも頭を左右に振っている。それはまるで、落とした命を探すかのように。


「抜いても持ち主のとこへ帰るわけじゃないんだ…。ごめんなさい」


 リーナは目をつぶって手の中の光を握りつぶす。粉々になった光は宙へと舞い、落ち葉人形はただの落ち葉の塊となって風に吹かれていった。


「三つも使って名前までつけたのに…。これじゃあ、大赤字だよ。もうめんどくさいし、あのロボットを呼ぼう…」


 アイカは独り言を言って、電球を一つ取り出す。そして、それを窓のガラスへと投げつけると、電球を投げつけられたガラスはうねうねと形を変えて廊下の奥へと消えて行った。


「リーナ、あたしも態勢は持ち直したけどあいつ、あのでかいロボットを呼びに行ったんじゃない?」


「分からない…。けど、あれをここに呼んだら建物の中にいるナオキも危なくなるから、その可能性は薄いと思ってる」


「正解よ。あなた魔法は使えないくせにさっきから良い勘してるわね。そういう能力でも持ってるの?」


 リーナとアムリテの会話を聞いていたアイカは木の枝を自分の腰まで下ろし、再び木の上に座る形を取った。


「私もあのでかいロボットは好きじゃないの。魂を使いすぎたせいか、いちいち命令にラグが出るし、うるさいし。でも、今呼んだのは特別なやつ。あたし史上最高傑作よ」


 その言葉と共に中庭と建物をつなぐ通路から小さな足音が近づいてくる。それは次第に星明りに照らされて正体を現した。


「統括ロボットさん…」


「リーナ様、騙していて申し訳ございません…」


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