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ミキタビ始めました!  作者: feel
3章 もう一つの小さな世界
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二つの戦い 87

 

作戦の決行時刻を迎えたリーナとアムリテ、ミネトラとナオキの四人はミネトラの案内で地下の街から病院の中に潜入していた。リーナ達を襲った巨大なロボットは病院の庭で動きを止めていた。

電灯の消えた廊下を徘徊するロボットたちに見つからないように移動をする。目的の階段までたどり着いたところで四人は足を止めた。


「作戦通り、ここからは俺が先導して歩く。カミネート達と接触後、戦闘になったら廊下に向かって爆発を撃つ」


「はい。気をつけてくださいね」


 ミネトラは先に階段を上がり、上の階の様子を注意深く見る。ミネトラの足音が階段を上り終えたのを確認すると、三人は足音を立てないように階段を進む。


 三人が階段を上り終えた後に廊下に目を向けると、ミネトラはある一室に入っていた。


「あの部屋ね。行くわよ」


 三人はミネトラが入室した部屋の扉まで近づき、耳を立てて中の様子を伺う。




「やぁ、君一人ですか?ミネトラくん」


「カミネート、昼間は悪かったな。俺も懐かしい顔に動揺してたんだ。許してくれないか?」


 部屋の中はカミネートの部屋と同じように、二つのソファとそれに挟まれる形に置かれているテーブルがあるだけだった。そして、そのソファにはカミネートとカップに入ったお茶を飲んでいるアイカが座っていた。


「それはまたここで医者をしたいということですか?死ぬ準備を強要した人物の下で?」


「だから悪かったって言ってんだろ。それに、カミヤのことを黙っていたお前にも非がある。お相子ってことで見ずに流せよ」


「この人、何かを頼んでる態度じゃないですよ。追い払いますか?」


 アイカは手に持ったカップを置くことなく、左手をポケットの中に入れる。その動作で電球、もとい魂の補充が完了しているのが分かる。


「アイカ、これは仕事の話だ。関係ない子どもは外に出てろ」


「うるさいですよ。やぶ医者に指図される義理はありません」


 アイカはポケットから小さな光を放つ電球を取り出し、持っていたカップの中へと沈める。すると、カップはわずかな振動を放ち、中に入っていた液体が重力に反発して浮かび始めた。宙に浮かぶ液体はくねくねと形を変えて、ミネトラの前で『かえれ』という文字を描いた。


「アイカくん。無駄な能力の仕様は控えて下さい。それも一つの命です」


「犯罪者に自由や権利なんてものはない。って教えてくれたのは先生じゃないですか」


「……何度見ても胸糞悪いな。そんなんじゃ、ナオキにだってドン引きされるぞ」


「うるさい」


 アイカが指を一振りすると、文字を描いていた液体はミネトラの顔に向かって勢いよく動かされた。ミネトラはそれを避けることなく、顔で受け止める。ミネトラの顔に張り付いた液体は衝撃こそあった物の、ミネトラの顔に触れた後は静かに流れ落ちて行った。


「カミネート、こいつを外に出せ。話もできねぇ」


「それもそうですね。アイカ君、退出を」


「はいはーい。私の部屋、壊れちゃってるんで早くしてくださいね」


 扉に張り付いて耳を立てていた三人は慌てて、扉から離れて廊下の角を曲がる。アイカはそんなことを知らない様子で部屋から出ると、扉を閉めてその場に座り込んだ。


「さて、これで君の望む状況は作れましたか?」


 アイカが去った後の部屋でカミネートは静かにミネトラを睨む。ミネトラはその目線に寒気を感じるが、平然を装う。


「アイカを退出させたってことは、俺にまだ働いて欲しいんだろ?いくつかの権限はお前の優先にしてやるよ」


「そうですね。なら、君の命の権限をいただくとしましょう」


 カミネートは言葉を言うが早いか行動するのが早いか、ソファの肘あてに設置されているボタンを押した。すると、白い天井が左右にスライドされていき、無数の穴が開いた黒い天井が姿を現す。


「最初から殺すつもりだったのか?」


「いいえ。君とは戦いたくなかったですよ。そのために、ロボットたちには君がカミヤばあ様と会わないようにと命令しました」


「なら、どうしてだ?俺がカミヤに接触して気が動転したのは認めるが、お前の下になると言ったはずだ」


 ミネトラは袖に仕込んでいたナイフを手に持ち、いつでも血を流せるようにと腕にナイフを押し当てる。


「私は人を信用するという無駄なことは最小限に抑えたいのですよ。そのためのリスクリターンで考えた結果、君はもう用済みです」


 カミネートがソファの肘あてにあるボタンをもう一つ押すと、ミネトラの頭上にある穴から液体が流れ落ちる。


 ミネトラは自分の腕をナイフで切る付けると、流れ出る血液を自分の衣服に付けて爆発を起こす。ミネトラの体は爆風にあおられて、部屋の扉を突き破った。


「頑張れよ。お前らが鍵だ」


 扉ごと廊下に出たミネトラの視界にはアイカとリーナ達の姿はなく、カミネートから引き離す作戦は成功したようだ。




 時刻はカミネートとミネトラが戦闘を始めるより少し戻り、アイカが部屋を出てきた時だ。


「お前たちはここで見ててくれ。やばくなったら逃げてくる」


 ナオキはリーナとアムリテから離れて、アイカの元へ近づく。


「ナオキ!帰ってこれたのね!」


 ナオキの姿を見つけたアイカは嬉々としてナオキに近づき、手を握る。


「明日の朝、先生と助けに行こうと思ってたのに!やっぱりナオキは強いね!」


「なぁ、アイカ。俺達と一緒に来ないか?」


「うん!これからはここでずーっと一緒だよ!先生も実験は必要なくなったからって、いつでもナオキに会えるようにしてくれるって!」


 アイカの幸せそうな表情とは対照的に、ナオキは複雑な表情を浮かべていた。


「やっぱりやるしかないよな…」


 ナオキはゆっくりと目を閉じて未来視を始める。最初に見るのはアイカにすべてを話して、カミネートを敵だと認識させる未来だ。




「アイカ!俺はカミネートに拘束されていて、脅されてたんだ!あいつは俺達をただの道具としか見てない!ここから逃げ出そう!」


「どうしてそんなこと言うの?右も左も分からない私達を救ってくれたのは先生だよ?やっぱりあいつらに洗脳されてるんだね」


 その会話ののち、アイカの能力で生み出された人形によってナオキは拘束されてしまった。





 未来視が終わり、ナオキは再び目を開ける。微かな光と共にナオキの視界に入ってきたのは、間近でナオキを覗き込むアイカの顔面だった。


「うわぁ!?」


 ナオキはそれに驚き、腰を抜かしてしまう。


「ねぇ、ナオキ。今何を見てたの?」


「な、何って…。何も見てねぇよ!」


「嘘。私に嘘を吐くなんて、やっぱり操られてるのかな?それに、女の子を二人も連れてるみたいだし」


 アイカはリーナとアムリテが隠れている角を凝視する。アイカは二人の存在に気付いているようだ。


「リーナ、アムリテ逃げろ!」


 ナオキの声を聞いた二人は角から飛び出す。アイカはその様子に驚くことなく、二人を見つめる。


「ここじゃ、ナオキが巻き込まれるわ。外に出て」



 アイカはポケットから二つの電球を取り出すと、床に叩きつけた。粉々に割れた電球の下にある床がうねりだし、二人の方へと迫る。


「ちょ、何よこれ!?」


 二人はそのうねりに巻き込まれ、廊下の窓から外に放り投げられた。


「待っててねナオキ。すぐ戻るから」


 アイカはもう二つ電球を取り出すと、片方はナオキの元へ。もう片方は自身が立つ床に放り投げた。


 それぞれの床は再びうねりを上げて、ナオキは来た道を戻されていった。




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