ロボット 人形 83
「ミネトラ様、お引き取りくだサイ!」
リーナとアムリテは病室に戻って装備を整えると、ミネトラの専用ロボットに水を持たせてからロボットが封鎖している通路に向かった。ロボットたちは先ほどと同じように三人の前に立ちはだかる。
「アムリテ、やれ」
「何様よ。今度そんな態度で命令したら殴るわよ?」
アムリテは文句を言いながらも、杖を光らせてロボットの上に水球を移動させる。ロボットたちはそれに反応することなく、ただじっと通路を封鎖している。
「あんた達の分までカミネートを殴ってあげるからね。眠りなさい」
アムリテが杖を振り下ろす動作に合わせて、ロボットたちの頭が水球の中にゆっくりと入って行く。ロボットたちは気泡を吐いて、目の光を消していった。
封鎖していた全てのロボットたちの目から光が消えたのを確認すると、アムリテは水球を解除した。
「体の調子はどうだ?頭痛やめまいを感じたらすぐに言え」
「すこし怠いだけね。多分、久しぶりに魔法を使ったからよ」
アムリテの横にいる専用ロボットが、アムリテの腕を自分の頭の上に置くように移動する。その仕草はまるで、アムリテを支えているようだった。
「ミネトラさん、この子たちは本当に生きてないんですか?」
「生きてないな。少なくとも、俺の基準では。今はそんなことより、カミネートに集中しろ。奥の部屋で待ち構えてるぞ」
ミネトラはポケットから赤い液体がついており、手に収まるほどのナイフを三本取り出し、ゆっくりと通路を進んでいく。リーナとアムリテも置くから伝わる気配に武器を構えて進む。
奥の部屋の前まで着くと、その部屋の扉は空いていた。そして、その中にはリーナよりも少し年齢が上であろう女性とカミネートが、背後に鋼色をした人形を大量に控えて待っていた。
「本当に来ましたね先生。解除しなくてよかったです」
「アイカくん、もう少しだけ頑張ってください。ミネトラ君もあの老婆の仲間なのでね」
カミネートとアイカは三人が訪れるのを知っていたような口ぶりで会話をしている。
「カミネート、一つだけ聞かせろ。あの老婆はカミヤだな?」
「そうですよ。私も生きていたとは驚きました」
「あれ、でも先生はあの人用にこの建物を作ったんですよね?」
「こらこら、アイカくん。口裏合わせくらいは即興してくれないと」
カミネートはたいして困っていないのか、笑いながらアイカを叱る。
「さて、ミネトラ君とリーナ君はともかく、アムリテ君はどうして私に敵対するのですか?仮にも命の恩人ですよ?」
「はん!救われた記憶がないから、知らないわよ!あと、敵対の理由ですって?そんなのリーナが傷つけられたから決まってんでしょ!」
「アムリテ君は知らないでしょうが、彼女は────」
カミネートが話している途中で、ミネトラはナイフをカミネートの方に向かって投げつけた。カミネートの後ろに控えていた人形の一体がカミネートを守るようにして、そのナイフを体で受ける。すると、その人形の体はナイフを中心に赤く染まり、爆発した。
「カミネート、死ぬ準備は出来たんだろうな?」
「ミネトラ君、私はあなたの師です。あなたの考えなど、お見通しですよ?」
ミネトラとリーナがカミネートに向かって走り出すと、カミネートの背後にいた人形たちが一斉にミネトラへと向かう。それをさせまいと、リーナはミネトラに迫る人形の手に短剣を振り被る。
「かったい!?」
人形の腕に当たった短剣は甲高い音と火花を上げるが、断ち切ることはできない。
「リーナ、どけ!」
ミネトラはリーナの肩を掴み、自身の後ろへ下げる。そして、ナイフの一本で自分の腕の皮膚を切り裂くと、流出する血液を人形に浴びせた。
「爆ぜろ!」
直後、ミネトラの血液がついた人形は先ほどと同じように血液を中心に赤く光だし、大きな爆発を起こす。
「その短剣を貸せ!」
ミネトラは爆発を見届ける前にリーナから短剣を取り上げると、人形にしたように自身の血液を浴びせた。すると、短剣は赤く光り、熱を帯び始めた。
「押し付けるように攻撃しろ!」
ミネトラはすぐに短剣をリーナに返して、自身の血を周囲にばらまくことで爆発を生む。
そんなミネトラの背後から接近する人形にリーナは気付き、人形の首を切り裂かんと剣先を走らせる。その攻撃はきれいに人形の首をはねる、ことはできないが先ほどのような甲高い音はなく、剣が振れた首に徐々に剣が入って行くのが分かった。
「はああ!」
リーナは短剣の柄を両手しっかりと握り、人形の首に押し当てる。すると、人形の首は地面へと墜落した。
「ぼさっとするな!」
リーナが一体の人形を倒したところに、接近する人形たち。それらの首をミネトラは手刀で切り落としていく。その手は剣と同じように赤く光っており、白衣がこげていることで熱を帯びているのが分かった。
「ミネトラ君、本当に成長しましたね。今ならカミヤ君よりも欲しいと言えますよ」
「先生、人形の余裕がなくなってきました。どうしましょうか?」
カミネートとアイカの後ろにいる人形はすでに数えるほどになっており、このまま戦闘が続けば底を尽きるのは目に見えた。
「持っている電球を全て使っていなさい。素材はこの建物全てで」
「分かりました。でも、終わったらナオキに合わせてくださいね」
アイカは懐やズボンのポケットから大量の電球を取り出すと、それらを地面に捨てて足で叩き割った。すると、部屋全体が揺れ始める。
その行動がなにを意味するか知っているミネトラはすぐに、リーナとアムリテに声を掛ける。
「今すぐこの建物から飛び出せ!」
リーナとアムリテは疑問を抱くことなくカミネートの部屋から廊下に出て、廊下の窓を突き破ることで外に出る。
「何よ、あれ!?」
アムリテが建物の方向を振り向いて目にした物は、先ほどまで入っていた建物が二足歩行で立っている姿だった。その大きさは、周りの建物を優に越えていた。




