ナオキ 78
カミヤは能力を使い、カミネートがいる部屋の前まで瞬間移動した。カミヤがドアを開けようと手を振れると、ドアは自動で開いた。
カミヤが少しの廊下を歩くと、奥ではカミネートが待っていた。その顔は、カミヤがここに来ることを知っていたようだ。
「元気そうで何よりです。カミヤばあ様」
「あんたも変わってないね。カミネート。機械の寿命は長いんだね」
お互いがお互いを侮蔑しあうかのように、薄い笑みを浮かべる。
「私がここに来た理由は分かってるんだろ?そのうえであんたは、私を中に入れた。何を企んでる?」
「私は何も企んでいませんよ。あと、ミネトラ君は自身の意志でここに居ますので無理にでも連れて行くつもりなら、ご覚悟を」
「そうだね。あの馬鹿は二の次だ。私はリーナとアムリテ、そして私が呼んでしまった者たちを家に帰すんだよ。それを邪魔するなら、今度こそ殺すからね?」
カミヤがカミネートを睨みつけるが、カミネートは気にした様子もなく、飲み物を飲む。
「異世界の人間を帰すのは良いですが、それをやれば次に死ぬのはあなたですよ?」
「分かってるさ。この姿になった晩に命への執着心は消えたんだ。この言葉遣いもそれを忘れないためだ」
「ミネトラ君を残して死ぬんですか?彼はあなたの家族でしょうに」
「無駄話は終わりだ。私は異世界人のところへ飛ぶ。カメラの奥で指をくわえて見てな」
カミヤは能力で異世界人、ナオキがいる部屋へと飛んだ。部屋に残ったカミネートは、ミネトラへとロボットを通して会話を試みる。
「さてと、ミネトラ君聞こえますか?」
「あぁ。また急患か?」
「患者ではないですが、ボケた老婆が資料室へ向かいました。すでに中に入っていますので、止めてください」
カミネートの言葉にミネトラは驚愕のあまり、加えていたタバコを床に落としてしまう。
「ロボットどもは何してたんだよ!?どっちの部屋に行った!?」
「ナオキ君ですね。彼を助けられては困ります。お願いしますよ」
カミネートのからの受信は途絶え、ミネトラは資料室へ走り出す。
「おい、ロボット。今すぐ全機を資料室前に固めろ!微生物一匹でも逃したら、お前ら全員スクラップにしてやる」
「了解しマシタ!」
カミヤが入った資料室は電気が完全に消えており、辺り一面暗闇に染まっていた。そんな中、カミヤは中央に縛られているナオキの元へ近づいた。
「誰だ!?」
ナオキはカミヤの気配を感じ、カミヤの方へ顔を向ける。しかし、その目は黒い布で覆われており、ナオキには近づいてきた人間の性別も判断できなかった。
「私はカミヤ。あなたをここへ呼んだ人間」
「カミネートじゃない…?いや、それよりも俺たちを呼んだって言ったか!?」
「ええ。私とカミネート、そしてもう一人の力であなた達はこの世界に呼ばれたの。そして、次は私の力であなたとアイカをもとの世界へ帰す」
カミヤの言葉を聞いたナオキは数秒口を閉じた後に、語気を強めた。
「……ふざけるな!勝手に呼んでおいて、拘束していらなくなったら帰す?俺たちは使い捨ての部品じゃねぇんだぞ!?お前が呼んだせいで、三人の大人が死んだ。そして、俺とアイカは五年以上もこの部屋の中だ!」
ナオキは椅子の上で暴れるが、拘束をほどくことができずに椅子が倒れてしまう。
「俺たちは復讐する!お前たちを殺した後に、この世界で笑ってるやつら全員皆殺しだ!」
「呼んでしまったのは謝る。だけど、世界の人間を殺すなんてあなた達にはできない」
「うるさい!俺たちは此処に来るときに、スキルを持った。お前らなんて、全員殺す!」
「なら、あなたの能力で見てみるといい。あなたの未来を…」
カミヤはナオキの目を覆っている黒い布を取り外した。その瞬間、ナオキは目を見開く。
「future is mine!」
ナオキはスキルを発動した。すると、ナオキの視界は七色に輝き、ナオキが選択する未来を映し出した。
「なんだよ、これ…」
「それがこの世界での現実。未来を読めたところで、この世界は手に入れられない」
ナオキが選択した未来はアイカと共に、この世界に復讐すること。この施設を破壊しつくした後、二人に待っていたのは押し寄せる大量の魔法。その攻撃になす術なく、二人は息絶える未来だった。
「ナオキ、よく聞きなさい。あなたを助けた後に、アイカの部屋に行く。そこであなた達を帰す。それが唯一生きる道よ」
カミヤが呼びかけるもナオキは反応せず、ただ下を向いていた。カミヤが焦りを感じると、部屋の端から声がした。
「おい、ばあさん!一歩でも動いたら、撃つからな!?」
「…あんたにはまだ会わないつもりだったんだけどね」
カミヤはその声を聞いただけで、誰なのかが容易に分かった。
「ミネトラ、あんたは何様になったんだ?」
「黙れ!両手を後ろに回して、膝をつけ!」
カミヤはゆっくりと手を後ろにあげる。そして、ひざを折るタイミングでミネトラの後ろに瞬間移動た。
「な!?」
突然の出来事にミネトラの反応が遅れる。振り向こうとするミネトラは膝を蹴られて、頬に杖をぴったりと付けられてしまう。
「その魔法、カミヤのか!?」
「……ダメだね。……ミネトラ、ごめんなさい」
カミヤの声は震え、地面に涙が落ちる。ミネトラは老婆の突然の謝罪に困惑している。
「私が無理矢理にでもあなたを連れて行ったなら…」
「カミヤ、なのか…?だが、その声と姿は…」
「私達は罪を犯した。だから、私は償なうの。邪魔はしないで」
「カミヤ────」
カミヤは杖の先を光らせ、ミネトラを遠くまで瞬間移動させた。ミネトラがなにを言おうとも彼女は自分の意志を変えないと決めているのだ。
「いいかいナオキ。アイカはずっとあんたを待ってる。だから、会いに行ってやるんだ。そのすべてを私が助けるから」
「…そうだ。アイカ!」
ナオキは思い出したかのように、顔を上にあげてカミヤを見つめる。
「ばあさん、俺をアイカの元に!」
「もとからそのつもりだ!目をつぶりな!」
カミヤはナオキの肩をもって、アイカの反応がある位置まで瞬間移動した。




