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ミキタビ始めました!  作者: feel
3章 もう一つの小さな世界
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発展した病院 72


 病院から出される晩御飯を食べ終え、二人が眠りについたころに病室をノックする者が現れた。その音にリーナだけが気付き、アムリテを起こさないように病室を出る。


「リーナ、様。カミネート様から返事が来マシタ」


 病室のドアをノックしたのはロボットだった。夜中だからか、いつもの大きな声ではなかった。こんな時間に訪れたのは、カミネートから返事がありしだいすぐに伝えると言っていたからだ。


「許可は貰えた?」


「一度お話がしたいとのことデス」


「今から?」


「できれば今からデ。本日を逃してしまいますと、五日は開けられないとのことデス」


 リーナは頭を悩ませる。眠気は我慢できないほどではないが、呼び出す時間が気になるのと、アムリテを一人にしてしまうのが気がかりだった。


「ロボットさん、私が戻るまで病室の前で居てもらってもいい?もし、起きたら教えてあげて欲しいの」


「かしこまりマシタ。では、案内に統括ロボットをお呼びいたしマス」


 その数分後、病室の前に統括ロボットが訪れて、カミネートが待つという部屋まで案内された。


「カミネート様、リーナ様をお連れいたしました」


 統括ロボットがある部屋の前で止まると、部屋の扉は自動で開き、統括ロボットが中に入るように促した。


 リーナが中に入ると扉は閉まり、統括ロボットが外に取り残されてしまった。


「リーナさん悪いですけども、奥までお願いいたします」


 どこからともなく声が聞こえてきて、リーナは部屋の通路を進む。すると、奥から見えてきたのはソファに座る男だった。体は細く、頭は白くなっている。風が吹けば今にも倒れそうだ。


「初めまして。そこのソファに座ってください」


 リーナはカミネートと机を挟んで対面になるソファに座る。座り心地は大変良く、ここでも眠れそうなほどだとリーナは思った。


「改めまして。私はカミネートです。アナザーへようこそ」


「あ、私はリーナです。助けてくださり、ありがとうございます」


 リーナは座りながら頭を下げる。


「いえいえ、アナザーはもう慣れましたか?」


 その様子をカミネートは穏やかな笑顔を浮かべて、見つめている。


「まだ、病院内しか知りませんけど、トレーニングルームはすごいと思いました。あれは、カミネートさんが?」


「はい。アナザーの全ては私とミネトラ君で作りました。とても素晴らしい協力者もですね」


 その笑顔は穏やかだが、リーナは招待のつかめない不信感を募らせる。


「あの、恥ずかしい話なんですけど──」


「お金のことですよね?」


 早く本題を切りだして、ここから離れようと思ったリーナの台詞にカミネートが被せる。


「そんなに驚かないでください。メール、読みましたから」


「あ、いえ、驚いてなんて…。アナザーの外に出てもいいですか?」


「お金を払わずに、退院させてあげましょう」


 その言葉に今度こそリーナは驚きを隠せなかった。予想もしていなかったためだ。


「それは、嬉しいですけど…」


「なら、私の実験に付き合ってください。なぁに、一時間もかかりませんので」


「…どういう実験ですか?」


 実験の内容を聞いておきながらも、リーナは首を縦に振る気はなかった。リーナの額や背中から冷や汗が噴き出す。


「一時間以内に出来ますよ。不安ならアムリテさんの前で行いましょうか?」


「あの、お金は払いますので退出しても?」


「どうぞ。ですが、私とミネトラくんはアナザー外に出ることは許可しません。過去に何度も痛い目にあってますからね」


 リーナはソファから立ちあがり、出口を目指して元来た通路を歩いて行く。


「お金の宛はあります。ここを退院してから、堂々と出て行きますよ」


「カミヤばあ様のことですか?あの、王国で本屋をしている」


 その言葉にリーナの足が止まる。


「あのばあ様のことはよく知っていますよ。私も昔はよくあの人が出す本で勉学に励みました。今の私がいるのは、あの人のおかげでもありますね」


「そのおばあちゃんが待ってなさい、って言ってくれたので。今日はありがとうございました」


 リーナは歩みを再開する。だが、なおもカミネートの声はリーナに届き続ける。


「あのばあ様は昔から面白い魔法を使うんですよ。物の瞬間移動などね。そう言えば今日、久しぶりに見ましたね。あんな小さい栞からでも、出せるとは驚きです」


「…見ていたんですね」


「患者の様子を確認するのも仕事ですから。あぁ、普段はロボットに任せておりますので、プライベートは守っているつもりですよ?」


 得も言われぬ不快感に襲われ、リーナは通路を走り抜けようとする。


しかし、リーナはあることに気付く。 


「なんで、こんなに走っても出れないの!?」


 入ってきた扉から、話していた部屋までの距離は数十歩だった。なのに、今はどれだけ走っても扉までたどり着かないのだ。


「ははは。どうやら、純血の魔族にも異世界の薬は効くようですね」


「どうしてそれを!?」


「私は医者ですよ?あなたの血を抜くことなんて、できて当たり前です。気づいた時には年甲斐もなく声を上げましたがね」


「どうするつもり!?」


「何もしませんよ。私も魔族の怒りを買うのは避けたい。なので、協力してくれるようでしたらロボットに言ってください。私の元へ案内させます」


 カミネートが話し終えると、同時にリーナは扉に激突した。扉は再び開き、外には統括ロボットがいた。


「大丈夫ですか?治療をしますか?」


「い、いえ…」


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