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ミキタビ始めました!  作者: feel
3章 もう一つの小さな世界
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病院と違和感 69


 リーナが次に目を覚ましたのは太陽のない空が暗くなり、星が浮かび始めたころだ。


 アムリテは依然として眠ったままだ。固まった体を伸ばそうと立ち上がった時に、扉がコンコンとノックされた。


「はい?」


 リーナはこの施設の関係者だと思い、扉を開けるとそこにはリーナの腰くらいの高さもある、頭が丸くなっているゴミ箱のようなものが置いていた。


「ゴミ箱?」


 リーナがゴミ箱を持とうと中腰になると突然、ゴミ箱の頭が緑色の小さな光を出し、点滅を始めた。


「リーナ、様!」


「っわ!?」


 リーナは発せられた無機質な声に驚き、中腰から立ち上がった。すると、ゴミ箱の頭が勝手に開き、中から晩御飯と思える食事が用意されていた。


「お食事をお持ちいたしマシタ!ドウゾ!」


 ゴミ箱はところどころおかしな発音になりながらも、変わらぬ無機質な声で食事を差し出す。


「これ、取っていいの?」


「ハイ!」


 リーナはゴミ箱だと思っていた物の頭から、お盆ごと食事を取り出す。ベッドの上に簡易的な机があったので、そこにお盆を置いた。


「ねぇ、アムリテの分ってある?」


「アムリテ、様は点滴投与での栄養補給デスノデ!新しいものとお取替えいたシマス!」


 そう言ってゴミ箱はアムリテの傍まで移動すると、体の両面から手のような物を出して器用にアムリテに付いている袋を新しい物に取り換えた。


「リーナ、様もお取替えいたシマス!飲食が十分にできるようデスノデ、点滴はこれで最後とナリマス!」


 ゴミ箱はアムリテの時と同様、袋を取り換える。リーナとアムリテについている袋の色が違うのは、おそらく薬の種類だろう。


「では、食事が終わりまシタラ、壁にある返却口へお入れくだサイ!」


 ゴミ箱は用事が終わったのか、扉を開けて出て行こうとする。それにリーナは声を掛けて、引き留めた。


「……あなたは生き物なの?」


「ワタクシは生きておりまセン!識別番号、四千六百三十五番デス!」


「四千…?」


「患者、様はワタクシ達をロボットとお呼びいたシマス!」


「ロボット…」


 おそらくそれは魔法の力で動かしている人形なのだとリーナは思った。魔王領にも魔力で人形を操り、人のように魅せる魔法は存在した。


「それでハ!」


 ロボットは扉を閉めて、部屋から出て行った。


「ミネトラ先生の魔法かな…?」



 

 翌朝、リーナはロボットが届ける朝ごはんを食べ終わると、病室から出て建物の中を散策していた。点滴は夜の間にロボットが訪れてきて、外していったのだ。


 それぞれの部屋が防音になっているのか人の話し声などは一切聞こえず、ただ明るく長い廊下が続いていた。その廊下は床が木ではなく、石のような物で作られているのにも少し驚いた。


「見たことない物ばっかり…。それに、これだけ広いのに人がいない…」


 リーナが廊下を歩いていると、草木が植えられている庭に出ることができる扉を見つけた。扉は非常に軽く、片手で押せば開いた。


「やっぱり太陽がない…」


 外に出ても太陽を感じることはできず。太陽の暖かさも感じることはできなかった。それどころか、鳥の声も虫の鳴き声も聞こえない。


 リーナは庭を歩いているうちに、さらなる疑問を感じた。


「風も吹いてない…」


 病院の庭だからか、外で感じるはずの『自然』が感じられなかった。しかし、庭にはガラスなどの風を遮る物はなかった。


 リーナは植えられている草木に近づき、葉っぱを触る。そこにも違和感は存在した。


「これも偽物…。そう言えば、ミネトラ先生が何か言いかけてたような?」


 昨日、病室に来たミネトラはリーナの独り言に反応した。あの時は、アムリテの容体を聞くことで頭がいっぱいだったので、違和感の正体を聞けなかった。


「リーナ様、何かございましたか?」


 リーナが草木を触っていると、後ろから女性の声に話しかけられた。あの無機質なロボットの声とは大違いだ。


 リーナはミネトラ以外の人間が話しかけてくれたと思い振り向くと、そこには表情のない顔を浮かべている白衣の女性がいた。その顔を見て、リーナは直感でロボットだと気づいた。


「あなたもロボットですか?」


 そう聞いたものの、心では否定して欲しかった。そうすれば、確信が間違っていただけだと思えたから。しかし、女性から帰ってきたのは期待を裏切る言葉だった。


「はい。私は看護ロボット統括、百十二番です。リーナ様とアムリテ様の点滴や食事管理も全て私の指示でご用意させていただきました。何か、不満はございませんでしたか?」


「いえ、ありがとうございます…。あの、一つ聞いてもいいですか?」


「はい。与えられている権限でお答え出来るものでしたら」


 与えられている権限。それがどういう意味なのか、リーナは分からなかったが第一の疑問を統括ロボットに質問する。


「ここはどこですか?」


「ここは、アナザーにある中央病院でございます。記録によりますと、リーナ様たちはロドリアにございます転移ゲートを使ってこちらにお越しいただいたとのことです」


「転移ゲート、ですか?」


「離れた街から、こちらのアナザーへ。原理や各機材の説明はミネトラ様とカミネート様により固く禁じられておりますので」


 聞きたいことは増える一方だが、転移ゲートのことは諦めてリーナは質問の内容を変えた。


「どうして太陽や風、生き物がいないんですか?」


「自然と言うものは人間が生きる上では必要最低限でよろしいのです。なので、天候はアナザーが管理し、人間以外の生き物はアナザー外へ排除させていただきました」


「天候を管理…?それに外へ排除って…。まるで、ここが施設の中にいるみたいですね」


「左様でございます。この空間は全て、アナザーという施設の中にございます」


「え…?」


 間の抜けた声が出てしまった。なぜなら、大量の違和感はあってもここが外だという前提があってこその疑問だったのだ。前提から否定されるとは思っておらず、思考が停止した。


 言葉が出なくなったリーナに対し、統括ロボットは上を見上げた。


「アムリテ様の意識が戻られましたよ。一緒に参りますか?」


「え、あ、はい!お願いします!」



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