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ミキタビ始めました!  作者: feel
2章 旅に出ます!
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朝の海と言えば 64


 日も昇りきっていない早朝にリーナとアムリテは宿を出発した。その理由は、アムリテが朝市というものに行きたいと言い出したからだ。


 出発前に朝ごはんを食べようと提案したが、朝ごはんは朝市で食べるからと却下された。標高がそれほど高くはないと言っても、朝の山は冷える。血の巡り切っていない体を温めようと、リーナは太ももを高く上げて歩く。


「あんた、何してんの…?足でもつった?」


「いや、ただ寒いからちょっとでも動こうと思って。アムリテは寒くないの?」


「寒いわよ」


 当たり前化のように話すアムリテの服装は、およそ防寒と言えるものはしていなかった。


「あんたも体は冷やしときなさい。朝市で絶対冷やしてよかったと思うから」


「えぇ…。普通は冷やすなって言うんじゃ…。これで風邪ひいたら、アムリテのせいだからね」


 リーナは体を動かすのをやめて、小さな歩幅で歩き出した。


 山道には二人以外の姿はなく、鳥の声が小さく鳴っていた。




 街の方まで降りてくると、アムリテはある路地に入った。そこは太陽が昇っていないのを関係ないがごとく、まばゆい光を持った出店が大量に出ていた。


「わぁ!昨日はこんな場所なかったのに!」


 この路地は昨日通らなかったものの、視線の端には入っていた。しかし、その時はこのように出店が出ているわけではなく、何の変哲もない路地だったと覚えている。


「これが朝市よ!今日の朝に穫れた新鮮な海の魚をすぐに食べられるの!色々買いたいものはあるけど、まずは朝ごはんよ!」


 アムリテは路地を埋めんばかりの人ごみの中を突き進む。リーナも離されないように後を追う。アムリテが立ち止まった先にあったのは、出店ではなく一軒の店だった。


「せっかく朝市に来たのに、出店は見ないの?」


「ふふふ、甘いわよ。この朝市の一番おいしい料理はこの店が出す刺身定食なの!」


「刺身?」


「とりあえず入りましょ!一日三十食限定だから、売り切れちゃうわ!」


 アムリテは店の扉に手をかけて、横にスライドする。店の中は多くのお客でにぎわっていた。


「いらっしゃい!二名なら、そこのカウンターでお願いね!」


 店員に指示された席に着くと、目の前で料理を作っている姿が見れた。


 まだぴちぴちと跳ねて、生きている魚に包丁を一本入れる。それだけで、魚はピタリと暴れることをやめる。大人しくなった魚のお腹に包丁を入れて、内臓を取り出す。そして、魚の背骨に沿うように包丁を流すとあっという間に三枚おろしができた。


 その一枚の切り身に薄く包丁を入れて、魚を切って行く。その様子を見ているだけで、リーナの口には唾が溢れた。


「お待たせしました!刺身定食二人前です!」


 女性の店員が持ってきたお盆の上には先ほど切られていたばかりの、魚の切り身が乗っていた。しかも、魚の切り身は一種類だけでなく赤や橙、真っ白な切り身もあった。


「厨房の方を見てたから、先に注文したわよ。まずは、お汁から頂きましょ!」


 お盆の上には先ほど見た魚の切り身と真っ白なご飯、そして湯気を出している魚の頭が入ったお味噌汁があった。


 お味噌汁の器を手に取り、一口流し込む。それだけで、冷え切っていた体は芯から温まりった。


「これが、あら汁よ。魚のだしがよく出てるでしょ?で、薄い魚の切り身がリーナの食べたがっていた刺身よ」


「これが刺身なんだ!」


「この黒い液体、醤油をつけて食べるのよ」


 リーナは赤い刺身を箸でつまんで醤油に付ける。醤油が付いた刺身を口に入れた瞬間に、刺身は口の中でとろけてほど良い脂を残して、喉の奥へ消えて行った。


「おいしい!このあら汁の魚とは全然違う味になってる!」


「でしょ!?冷えた体にあら汁。新鮮な刺身とつやつやのご飯!あ、その緑の奴も食べてみてね」


 リーナは刺身が乗っている皿の端にあった緑の物体を口に入れた。すると、鼻を突き刺すような痛みに襲われ、涙と共にむせてしまった。


「何これ!?」


「あははは!ワサビよワサビ。一度は体験しとかないとね!」


 その後、二人は朝ごはんを完食して朝市を見て回ることにした。




 朝市の出店には新鮮な魚を取り扱っている店が多く、中には切られているのもあったが、二人が購入しても仕方ない物だった。


「あ、あそこにおいしそうなのが売ってるよ!」


 リーナは串が黒いたれに入っている料理に目が行った。その串の先には貝が刺されていた。


「あんたまだ食べるの…?言っておくけど、この後クエストに行くからね。食べ過ぎてお腹痛いなんて言わないでよ?」


「大丈夫だよ!それに、何でも食べてみないと!」


 リーナは店主にお金を渡し、貝の刺さった串を受け取る。貝はよく出汁を吸っているからか、全体的に茶色くなっていた。


「おいしい!アムリテもどう?」


「あたしはパス。定食でお腹いっぱいなの」


「そういえば、クエスト、この街にもギルドってあるの?」


「ううん。この街はギルドとかどっかの権力は一切いないわよ」


 リーナはその言葉に驚いたどんな小さな村にでもどこかの権力に守られて治安を守っている。力を持つ組織がないということは、犯罪が容易にできてしまうと言うことになるからだ。


「この街って事件とかないの?誰もいないんじゃ…」


「無いことはないけど、そもそも入るときの門番たちは王国とかのだし、ギルドの役員も住んでるからね」


「え、でもさっき…」


「簡単に言えば、有志なのよ。この街はどこにも属さなけど、守ってください。って言ったら、そこら中から守ってもらえてるの」


「どうして?そんなことをしても意味ないんじゃないの?」


「どこにも属さないならそれでいいの。ここは資源も豊富だから、守ればお礼は帰ってくるしね」


 つまり、何かが起これば周辺の街から来ている兵士が取り押さえる。そして、事件が解決すると、その兵士が属する機関に見返りが入るということだ。


「さて、海も満喫した!良い宿にも泊まった!おいしいご飯も食べた!なら、この後にやるのは?」


「クエストー!」


 二人は久々のクエストに胸を弾ませて、速足で目的地へ向かうことにした



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