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ミキタビ始めました!  作者: feel
2章 旅に出ます!
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アッシュ戦 1 53


 アムリテが睡眠から起き上がり、リーナも短剣の手入れが終わってしばらく待っていると部屋の扉がノックされた。


「リーナさん。決闘の時間です。付いてきてください」


「はい」


 部屋の扉を開けたのは門番の男ではなく、アッシュと同じような格好をした女性だった。リーナとアムリテはその女性の後ろをついて行く。廊下は大きな窓がいくつも張られていた。


 しばらく進むと、女性はある部屋の前で止まった。その部屋の上には運動場と書かれた看板があった。


「ここからはリーナさん一人でお進みください。お連れの方はもう少しついてきてください。観客席にご案内いたします」


「リーナ、頑張りなさいよ」


 アムリテはリーナの背中を押し、リーナを元気づける。


「うん!ちゃんと見ててね!」



 二人は手を叩き、リーナは扉の中へ入って行った。




 扉の中へ入ると、大きな広場が広がっていた。広場を囲っている壁と思っていた周りの建物には窓が付いており、その中には貴族らしき人物たちが入っていた。


「すまないね。見られながらの決闘は気の良い物ではないだろうに」


 向かいの扉からアッシュが広場に入ってくる。その恰好は見慣れた白い服ではなく、赤い服を着ていた。その手には話していたレイピアが握られている。


「さて、もうそろそろニョルデゴートが開幕を告げるだろう。あぁ、こっちの声は聞こえてないだろうから、安心してくれ」


 アッシュがそう言うと、広場にキーンと甲高い音が鳴り響いた。


「あー、あー、今日は集まってくれて感謝するにょ!このリーロットは野菜がおいしいから、来てくれた貴族の方は食べて行ってほしいにょ!」


 ニョルデゴートは周りの中で一番高い建物の中におり、魔法を使っているのかその声は嫌というほど耳に入った。


「あぁ、ギルドの野菜は偽物だから食べたらお腹を壊すにょ!」


 ニョルデゴートは大口を開けて大笑いした。それに同調するかのように周りの貴族たちも、声は聞こえないが笑っているのが分かった。


「さて、今日の決闘は僕の騎士であるアッシュが戦うにょ。こいつはマナーこそ中途半端だけど、なかなかに面白いから期待していいにょ!」


 アッシュはニョルデゴートのセリフが終わると、一歩前に出て礼をした。


「っで、相手の方はあの小娘にょ!こともあろうに貴族様である僕を殺そうとしたにょ!だけど、心優しい僕はこうしてチャンスを与えることにしたにょ!」


 リーナはアッシュと同じように前に出るが腰はおらず、ただアッシュを見つめた。


「ルールは説明した通り、故意の殺傷は禁止で先に降参したほうの負けだにょ。では、待つのは嫌いだと思うから、さっさと始めるにょ!」


 ニョルデゴートはその言葉の最後に、腕を振り上げた。それが開始の合図だったのか、アッシュはリーナに向かって駆け出した。


 リーナはリュックから弓と矢を取り出し、アッシュの足に照準を合わせる。狙われていると知っても、アッシュは速度を緩めない。


 アッシュの足に向かって、リーナは矢を放った。しかし、アッシュはその矢が刺さる直前でレイピアを切り上げることで弾いた。


 リーナは矢が刺さらなかったのを見ると、すぐに走り出してアッシュとの距離を取ろうとする。しかし、リーナが思っていたよりも近くににアッシュは接近していた。


「っは!」


 アッシュの鋭い一撃がリーナの腹部を突き刺そうと、襲ってくる。それをリーナは弓を盾にすることで防ぐが衝撃で後ろに倒されてしまう。


 アッシュは倒れたリーナの頭部を再び突き刺そうと、リーナに覆い被さる形でレイピアを突き立てた。リーナはその攻撃を横に転がることで回避する。しかし、アッシュはその行動を読んでいたのか、転がるリーナの腹部に右足で蹴りを入れた。


「っが!」


 唾液と空気が口から漏れだす。アッシュに蹴られたことによって生まれた回転が収まると、リーナはすぐに起き上がり弓をリュックの中にしまう。


「おや、弓はもうおしまいかい?」


「……全然本気じゃないですか」


 もっと簡単に終わると思っていた決闘だったが、アッシュの攻撃はどれも致命傷になるものばかりだ。


「…早くこのレイピアを壊すんだ」


「言われなくても!」


 リーナはリュックを肩から外し、地面に放り投げる。そして、腰から短剣を抜いてアッシュに向かう。アッシュは迎え撃つように、レイピアを自分の腰の位置まで落とし、レイピアを右側に構えながら走る。


 二人が接近すると、リーチの長いアッシュが先に攻撃を繰り出した。腰まで落としたレイピアをリーナの顎めがけて突き上げる。それをリーナは身をよじり、回転することで回避する。目標を捕らえ損ねたレイピア、アッシュの腕は勢いを止められずに突きあがったままだ。


 リーナはレイピアを避けるために回転した勢いをのせて、がら空きになったアッシュの腹部に短剣を走らせる。アッシュの腹部を切り裂くはずの短剣は、どういうことかアッシュの頭の上を通過した。


 通常なら、流血が避けられないはずの攻撃をアッシュは自ら転倒することで、短剣を回避していた。アッシュはしりもちを着いた状態から、左に体を倒し起き上がる際に自分の足をリーナの足に引っ掛ける。


リーナはアッシュの攻撃により、右肩を地面に強打した。右手に持っていた短剣を地面に落としてしまう。リーナはすぐに左手で短剣を拾おうとすると、アッシュに短剣を蹴り飛ばされてしまう。


「リーナ、頼む。この程度では、八百長だとばれてしまう…」


 アッシュに悲しげな瞳を向けられるが、リーナは右肩の痛みと絶望的な状態を打開することで頭がいっぱいだった。


 アッシュはニョルデゴートの方をちらりと見る。そこには何かを飲みながら、ニヤニヤと笑っているニョルデゴートがいた。アッシュは小さなため息を吐いて、いまだに倒れているリーナにレイピアを向けた。


「すまない」


 短い言葉を発して、アッシュはリーナにレイピアを振り下ろした。




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