友達っぽい! 44
リーナに追われる少女はリーロットに入ると、その足でギルドに入った。
「リンリン!早く、査定お願い!」
「アムリテさん、そんなに慌ててどうしました?」
少女──アムリテは慌ててカバンから大量のハタアラシを出し、リンリンに渡す。その、慌てようにリンリンが驚いていると、ギルドの扉が開き、元気な声が鳴り響いた。
「ねぇ、水の子ー!どうやったら、あんなにキレイに落とせるのー?」
リーナはアムリテを見つけると、大きな声で呼んだ。その呼び方にギルド内がざわつく。
「あ、リーナさん!アムリテさんと友達になれたんですね!」
「なってない!」
リンリンがその様子を見て、友だと思ったのをアムリテは訂正する。
「リンリンさん!その子、アムリテって言うんですね!」
リーナはアムリテとリンリンの方に近づく。アムリテはリーナから距離を取ろうとしたが、査定中のため離れられなかった。
「ちょっと、リンリン!早く査定を!」
「はいはい!今すぐに!」
リンリンはアムリテが持ってきたハタアラシを持って、受付の奥に消えて行った。そのハタアラシの数は軽く二十は超えていた。
「ねぇ、アムリテ!どうやったら、あんなに取れるの?私が弓を打ってもすぐに飛んで行っちゃって…。何か、コツとかあるの?」
アムリテはリーナの質問に一切反応せず、かたくなにリーナの方を向こうとしない。
「あの水の魔法すごかったね!あの魔法以外にも、使えるの?私は、全然魔法使えなくって…。でも、今弓の練習をしてるんだ!」
「うるっさい!誰もあんたの話なんて聞いてないし、話しかけないで!」
アムリテは出会った時と同様、リーナを拒絶する。しかし、リーナはめげることなくアムリテに話しかける。それは、弓の上達のためだけではなかった。
「お待たせしましたー!二十七匹のハタアラシと処理報酬を含めまして、合計八千八百エルです!」
「二十七匹!?三十匹じゃなくて!?」
アムリテは報酬の内訳を聞き、声を上げた。どうやら、想定していた数よりも少なかったようだ。
「数え間違いはない!?ちょっと待って、カバンの中にいるかも…」
アムリテは先ほどとは別の焦りを出し、カバンの中をひっくり返して確認する。だが、中から出てくるのはハタアラシの羽だけだった。
「リンリン、明日の朝に三匹持ってくるから何とかできない?」
「すみません…。規則は規則なので…。今日中でしたら、なんとかできるのですけど…」
アムリテとリンリンは困ったような顔を浮かべ、沈黙してしまった。
「三十匹だと何かあるの?」
リーナは双方に聞くような形で質問する。その質問に答えたのは、やはりリンリンだった。
「えっと、このクエストでの処理報酬は十匹ごとに五百エルが入るんですよ。なので、あと三匹居ると報酬が上乗せできるんですけど…」
リーナはその話を聞き、自分が狩ったハタアラシを思い出す。
「アムリテ!私の狩った三匹あげるよ!」
「…え?」
落ち込んでいたアムリテがリーナの言葉で少し顔を上げる。その目には期待の光が宿っている。
リーナはその期待に応えようとリュックに手を突っ込み───そこで、もう一つ思い出した。
「あ、私ハタアラシ持って帰ってきてないや…」
リーナはリーロットに帰ってきたのは、矢の調達のためで、ギルドに報告しに来たわけではない。なので、ハタアラシも雑木林に置いてきたままだったのだ。
「うぅ…」
一度期待したアムリテの肩がさらに落ち込む。
「元気出して!ほら、アムリテの魔法があれば───」
「うっさい!もともと、あんたが来たせいでこんなミスを!」
アムリテは泣きそうな目でリーナに近寄る。リーナは圧倒され、一歩後退する。
「ご、ごめん!あ、なら、お詫びにご飯おごるから!一緒に行こ?」
「ご飯!?」
リーナの言葉にアムリテは先ほどと同じように、目を輝かせた。よっぽどお腹が空いているのだろうか。
「うぅん!それって、ギルドのご飯でもいいわけ?」
自分でも興奮したのが恥ずかしくなったのか、アムリテは先払いをしてギルドのご飯を要求する。
「うん!その代わり、友達っぽく喋ろうね!」
「仕方ないわね…!」
こうしてアムリテはハタアラシ二十七匹分の報酬を受け取り、リーナと共にギルドの食堂に向かった。
「おばちゃん!あたし、豚の煮込み定食ね!」
「お、アムリテちゃん!今日はしっかり食べるんだね!ちょっとサービスしてあげるよ!」
アムリテは食堂に入ると、さっそく注文を済ませた。会話から分かるように、アムリテはずいぶん食堂の従業員と仲がいいようだ。
「そっちの子はアムリテちゃんのお友達かい?何にする?」
「私は焼き魚定食でお願いします!」
「あいよ!」
リーナも注文を済ませ、料理を受け取るとアムリテが座っている二人用のテーブル席に着いた。
「「いただきます!」」
アムリテはリーナを待っていたようで、リーナが席に座ると手を合わせて食事を始めた。
「見て!プリンおまけしてもらった!」
アムリテは小さい子供のようにサービスで付けてもらったプリンに、ニコニコと笑顔を浮かべた。
「アムリテはよく食堂で食べてるの?あの人と仲も良さそうだったし」
「そうね。毎日、ここの食堂でご飯と豚汁よ。お肉うっま!」
アムリテは食事に夢中になりながらも、しっかりとリーナの質問に答える。先ほどまでと比べると、大きな進歩だとリーナは思った。
「そういえば、あんた弓の練習とか言ってたわね。弓を持ってどれくらいなの?」
「今日で三日目だよ。的には当たるようになってきたんだけど、鳥には全然で…。アムリテはどうやって、あんなに当ててたの?」
魔法と弓とでは何から何まで違うが、獲物を貫くという点に関しては共通している。リーナはそこから、何か分かるかも知れないと思っていた。
「コツって言われても…。あ、でも、あの鳥は人間の事をよく見てるから、こっちがなにかしたらすぐに飛び立つの」
「うんうん!」
アムリテは食事を止めず、リーナに解説する。気づけば、アムリテのお皿は半分ほどすでに消えていた。
「で、飛び立つのはその時体が向いてる方向だから、それを予測して打てば当たるわよ。あとは風とかもね」
「予測…!なるほど!」
的は動かないから、見えている通りに照準を合わせればいい。だが、鳥は動く。しかし、その動く方向が分かっているのなら、そこに合わせればいいだけの話だ。
リーナはアムリテの解説で何かが掴めたような気がした。
「ありがとう!食べ終わったら、もう一回行ってくるよ!」
リーナは今すぐに弓を打ちたいと思い、料理をかきこむ。
「今からは無理よ。あいつら、日が落ちたら鳴くのをやめるし、姿なんか見えたもんじゃない。明日にしなさい」
アムリテの言葉を聞き、リーナの上がったテンションが落ちていくのが目に見えた。
「どうして、そんなに焦ってるのよ。練習なら、いつでもできるじゃない」
「ううん、練習は明日までしかできないんだ。明後日には実践で使えるようにしないと…」
リーナは自分でも焦っているのを感じていた。しかし、その焦りも決闘のことを考えると必要なものと考え、藁にも縋る重いで練習をしている。
「何かあるの…?」
アムリテが真剣な眼差しでリーナを見つめる。その目には心配が混ざっており、リーナはニョルデゴートのこと、アッシュのことをアムリテに離した。
「そう…。あの貴族が…」
アムリテは全てを聞き、しばらく考えた後に口を開いた。
「そういう事なら、あたしも手伝ってあげるわ。感謝しなさい!」
「いいの!?ありがとう!」
リーナはアムリテに抱きつく。まさか、協力してもらえるとは思っておらず、少し寂しかった一人の練習に友達ができたことに嬉しくなった。
「でも、ここはおごってもらうからね!」
そうして、二人は食事を楽しんだ後、訓練場に入った。リーナはアムリテと食べる食事がこの街に来てから食べた食事の中で、一番おいしいと感じた。
この時間はいつもご飯を食べてるので、お腹が空いてやばいです...。
書いてて、お腹の音が鳴りやみませんでした笑




