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ミキタビ始めました!  作者: feel
2章 旅に出ます!
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貴族と騎士と冒険者 40

 翌朝、リーナは朝食を食べ終えると防具店に駆け足で向かった。防具店に着くと、ちょうど開店の準備をしている途中の用だった。


「お、早いねお客さん!調整は済ませて試着室に入れてるから、試してみてくれ」

「わかりました!」


リーナは店の中にある試着室に入ると、傷一つない胸当てと膝の防具が籠の中に入れられていた。まずは胸当ての方から着けようと手にすると、想像以上に軽いことに驚いた。


「これなら、動くのは楽そうだけど…」


軽いのはありがたい話だが、耐久面が低いと元も子もない。だが、持っている短剣で買ってないものを攻撃することはできない。リーナはとりあえず、胸当てを装着して買ってから試してみることにした。


「次は、膝の方だね」


こちらも胸当てと同じ素材が使われているのか、重さは全くに気ならなかった。リーナが胸当てと膝の防具を着け終わり、外してから試着室を出ると店主が前で待っていた。


「サイズは問題なかったかい?重さとか気になるところは?」

「いえ、大丈夫です!むしろ、軽すぎてびっくりしてるくらいなので!」


耐久以外はこの装備を気に入っていたので、店主に防具を一度渡してからお会計をしようとする。


「じゃあ、最後にお客さんの短剣で突き刺してみてくれ」

「え、いいんですか!?もし、壊したりしたら…」


リーナの心配をよそに店主は笑い飛ばした。


「そんな不良品を渡す方が問題になるよ!いいから、本気で刺してみてくれ」


店主は胸当てを自分の正面に持ち、リーナが突きやすい位置で構える。その様子にリーナも腰から短剣を出し、突き刺す。


カーン!


防具と短剣がぶつかり、甲高い音を立てた。短剣は防具を貫くことはなく、確かに芯を刺したはずの攻撃は横に逸れていた。


「あれ、私確かに芯を刺したと思ったのに…」

「いい攻撃だったよ!逸れたのはこの防具がそう言う目的で作られてるからなんだ」


リーナはその言葉に理解できないでいると、店主は説明しだした。


「ある程度の攻撃は正面から受けるけど、一定を超えた攻撃は力を分散するようになってるから、さっきみたいに逸れるんだ」


つまり、この防具は全てを受けるのではなく、受けれる攻撃だけ受けて、強い攻撃は受け流すようだ。


「そんな、すごい防具を安くしてもらっていいんですか!?」

「お客さんみたいな人が、顧客になってくれるなら喜んでだよ!」

「ありがとうございます!」


そうしてリーナは新たな防具を身に着け、店を出た。



 防具を購入したリーナは一通り弓の練習をした後に、パスタ屋に入り昼食を食べていた。なお、弓の的中率は上がっていたが、真ん中を抜くことはできなかった。

 パスタ屋のほうは一番人気がやはり、野菜を使った冷製パスタでトマトやナスなどの野菜がふんだんに入っていた。それをリーナは注文し、通りがよく見える席で食べていた。


「さっぱりしていて、おいしい!でも、どうやってこんな新鮮な野菜を確保してるんだろう?」


この街の飲食店全体が十分すぎるほどに野菜を確保、提供している。それに、どれもこれも見てわかるほどの新鮮な野菜をだ。農家がたくさんいると言われても、少し疑問を抱くほどに。


 そう不思議に思っていると、リーナの耳に昨日聞こえた不快な音楽が入り込んできた。歩行者もそれを聞いてか、昨日と同様屋内に避難していた。


「また、あの大群…」


リーナはせっかくのランチを邪魔されたくないと思い、顔を背けてパスタを口に入れた。


「おいしい!おいしい!」


パスタの味に集中するように、自分に言い聞かせる。さっきまでの軽やかな気分とは程遠いが、少し気がまぎれた。


 不快な音楽がリーナの真横を通り過ぎた時に、何かが割れるような音が鳴り響いた。その音につられるようにして、目を向けると女性が倒れており、そのそばには割れた甕から水が出ていた。


「なにをしているにょか!?」


貴族らしき腹の肥えた男性が、男性に引かせている椅子から降りて、倒れている女性に近づく。その様子にリーナは目を離せないでいた。


「ろくに荷物持ちもできないにょか!?」


腹の肥えた貴族は倒れている女性の前髪を持ち、顔の前で怒鳴り散らした。女性の方は、震えながら、今にも泣き出しそうな目をしていた。


「も、申し訳ございません…。ここのところ、休暇をもらえていない疲れが───」


「黙るにょ!ご主人様である僕に口答えか!?」


腹の肥えた貴族は女性の言葉が気に入らなかったのか、女性の顔に平手打ちをする。それに耐えられず、女性は再び倒れてしまった。


「全く!奴隷ごときが!誰のおかげで、生きられていると!」


腹の肥えた貴族は一句怒鳴るたびに、倒れている女性のお腹を蹴る。女性は抵抗せず、ただ黙って蹴られていた。


 その様子に耐えかねたリーナは店を出る。その様子を見ている周りの奴隷は一切動かない。貴族の方はリーナに気付いてもいない。


「お前のようなやつは、畑送りにしてやるにょ!」


そう言って、貴族が女性の顔めがけ、蹴りを入れようとしたところにリーナの膝が入り、貴族の脛はリーナの膝に激突した。


「痛いにょー!」


貴族は脛を抱えて転げまわる。リーナはそんなものに目もくれず、倒れている女性に手を貸す。


「立てますか?これを噛んでから、水を飲んで下さい」


リーナは王国で買った、痛みが引くという草を女性に噛ませた後、リュックから水筒を取り出して女性に差し出した。


「…ありがとうございます!ありがとうございます!」


女性は涙を流しながら、水を飲む。


 後ろでは転がりまわっていた貴族が起き上がり、血走った目でリーナを見ていた。鼻息は荒れ、今にも襲い掛かってきそうだ。


「お、お前、僕が貴族様だってわかってるにょか!?」


「あなたが貴族であろうと、こんなことは許されません。この方に謝ってください」


リーナは貴族の目の前に立ち、女性への謝罪を要求する。もちろん、応じるとは思っていないが、それで

もリーナは許してならないと思った。


「それは、僕の所有物にょ!僕がどうしようと関係ないにょ!」

「人を所有物だなんて、言わないでください!この人はあなたの物ではありません!」


その言葉が気に入らなかったのか、貴族はリーナを殴ろうと拳を出してきた。その拳をリーナは軽やかに躱し、足払いをして貴族をうつ伏せにした。


「痛いにょ!何をするにょ!?」

「あなたがしたことはこんな痛みと比べ物になりません!」


リーナはさらに手を出すことも考えたが、それでは貴族と同じになると考えて手を止める。


「アッシュ!アッシュ!」

「はい。ニョルデゴート様、お呼びでしょうか?」


貴族に呼ばれ、椅子の陰から出てきたのは昨日リーナに弓を教えた女性だった。


「この娘を殺すにょ!今すぐにょ!」

「あなたは…」


アッシュと呼ばれた女性は貴族のニョルデゴートとリーナを交互に見比べると


「ニョルデゴート様、落ち着いてください。いくら、貴族といえどこんな街中で人を殺すような権限はありませんよ」

「うるさいにょ!こいつは僕に怪我を負わせたんだにょ!?」


ニョルデゴートは顔を抑えているが、特に目立った傷はなく多少赤くなっているだけだ。


「そもそも、僕が襲われているのにどうして出てこなかったにょ!?近づく前に止めるのがお前の仕事にょ!」

「ニョルデゴート様に指示を仰いだのですが、なにやら興奮されていたようで」


その言葉にリーナは疑問を抱く、リーナがニョルデゴートに近づいた時にはそんな光景は見えなかったからだ。


「とにかく、殺すにょ!それが無理なら、殺人容疑でもなんでもいいから、捕まえるにょ!」


「すぐに捕まえるのは無理ですね。ですが、その者が望むなら後日屋敷に招いては如何でしょう?」


「何を言ってるにょ!こんなやつ、家に招くわけがないにょ!」


ニョルデゴートはアッシュにも掴みかかりそうな勢いで叫んだ。


「落ち着いてください。ニョルデゴート様の屋敷の庭で、この者と私で決闘をすればいいのです。それな

らば、事故で死んでしまっても誰の目にも触れられません」


ニョルデゴートはその言葉を聞き、しばらく考える様子を見せると


「...わかったにょ。おいそこにょ!今すぐ、僕の屋敷に来いにょ!」

「お待ちくださいニョルデゴート様」


ニョルデゴートの言葉を遮るように、アッシュは口を挟んだ。


「なんだにょ!?」


「期日を設けましょう」


「なんでだにょ!?」


思い通りに事が運ばないことにイライラしたニョルデゴートが、叫び散らす。その様子にアッシュは一切ひるまない。


「貴族に背けばどうなるかを平民に思い知らせる良い場ではありませんか?それに、他の街の貴族の方々もお呼びするのはいかがでしょう?」


「…要するに、大勢の前でこいつを処刑っていう事だにょ?それはいいにょ!」


ニョルデゴートは想像しただけで、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべた。その顔を見ると、リーナは鳥肌が立ちそうだった。


「では、この娘には私から詳しい内容を伝えておきます。ニョルデゴート様は早く怪我を医師にお見せく

ださい」


「うむ!逃げるなにょ!」


そう言って、ニョルデゴートは椅子に戻、通りを歩いて行った。後に残された女性にアッシュが肩を貸し、立ち上がらせる。


「あ、あの」


昨日と同じ言葉でアッシュに声を掛ける。しかし、その言葉に込められた気持ちは全く違うものだった。


「昨日と同じ時間帯に訓練場で」


アッシュは短くそう言い残し、その場を去った。



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