練習 39
リーナは防具の予約をした後に、弓の練習ができると教えてもらったギルドが所有している訓練場に来ていた。
「とりあえず、打ってみようかな」
弓をリュックから出し、手に取る。リーナの体格を見て勧めたからか、非常に軽くできており取り回しが簡単にできそうだ。
「ここに矢をかけて、引っ張るんだよね?」
リーナは弓と一緒に渡された指南書を読み、見よう見まねで弓を引く。震える腕を力で抑え、照準を的に合わせる。狙いと的が重なった瞬間に矢を放つ。すると、矢は空気を切り裂き一直線に的の手前に突き刺さった。
「もうちょっと、上だったかな?」
リーナは再び矢をかけ、的を見据える。今度は少し上に標準を合わせる。そして、矢を放つと
「おぉ!?」
矢は真っすぐに的の方へ向かう。リーナは二回目にして当たる。そう思ったが、矢は的の少し上を通り抜けていき、奥の木に突き刺さった。
「今度は、下かぁ…」
リーナはその後、貰った百本のうち五十本を打つまでに的に当たったのは、数えるほどだった。その当た
ったのも、的の中心を抜いたものはなく全て枠ギリギリだ。
ぐぅうう…。
リーナのお腹が空腹を告げた。気づけば周囲は暗くなり、的ももう見えなくなりそうだった。
「回収してご飯に行こうかな」
リーナは打った矢を回収するため、的に近づく。周囲に散らばっている矢を数えながら、回収していると、訓練場に誰かが入ってきた。
「君。すまないが、少し打ちたいので離れてもらえるかい?」
「は、はい」
中性的な声をした人物に話しかけられ、リーナはすぐに隣の的から距離を取る。その人物もどうやら弓を使うようなので、リーナは観察することにした。その人物はそんなことを気にせず、弓に矢をかけると、指南書と同じような動きを取り、矢を放った。その矢はヒュウ、と音を立てて的の真ん中を打ち抜いた。
「すごい…!」
一連の美しさや正確さに、リーナは目を見張った。自分がやっているときはプルプルと手が震えたのに対し、この人物はそれがなかった。
「あ、あの!」
「ん?」
リーナはその人物に近づき、声を掛けるとその人物が騎士の恰好をした女性であることが分かった。
「どうかしたかい?」
「どうやったら、そんなにきれいに打てるんですか?」
その質問に驚いたのか、女性は少しキョトンとした後に笑った。
「そんなに、まっすぐに聞かれるとはね。一度、君が打っているのを見せてくれるかい?」
「はい!」
リーナは女性の隣に立ち、先ほどまで練習していた動作で弓を引く。そして、的を見据えて矢を放つと、矢は的の上を通過してしまった。
「弓の練習って、いつくらいから始めたんだい?」
「今日からです!この弓も矢も今日買ったんですよ!」
リーナはキレイな弓を自慢するように、女性に見せる。店主以外だと、この女性が初めて見ることになる。
「それじゃ、次は私が補正するからもう一度打ってみようか」
リーナがもう一度弓を引くと、女性はリーナの後ろに付く。そして、リーナの肩の位置や方向を修正すると
「この形を崩さずに、打ってみて」
リーナは再び弓を構えて、矢を放つと矢は的の真ん中を射抜いた。
「真ん中に…!真ん中に刺さりました!」
「うん。狙いは良いし、さっきの姿勢と力み過ぎないことを覚えていればすぐに上達するよ」
そう言って、女性は訓練場を出ようとする
「ありがとうございます!あ、ご飯でも行きませんか!?」
お礼をするためにリーナは女性を食事に誘うが、女性は手を振り
「すまないね。少し用事があるので、失礼するよ」
そう言って、女性は訓練場を出て行った。後に残ったリーナは矢を回収してから、夕飯を食べて一日を終えた。




