貴族・武器・野菜!!! 38
リーナはギルドを出て、宿を取ると受付の女性におすすめされた店の中に入る。店内はスムージーを求めてか、多くの客がいた。
「すごい人気…。みんな女の子ばかりだし」
リーナは行列に並び、順番が来るのを待つ。回転率は速く、思っていたよりもすぐにリーナは注文を済ませることができた。
「お待たせしましたー!こちら、野菜スムージーです!」
従業員の女性から、透明なカップに入ったスムージーを受け取る。色は鮮やかな緑色で、ひんやりとした冷気が手に伝わる。店から出て、街を観光しながら一口飲む。
「んー!冷たくて飲みやすい!」
さわやかな苦みが鼻を抜け、後に残る甘味が口を満たす。野菜と言うので、もう少し青臭い物と思ってい
たが、これなら何倍でも飲めそうだと思った。
「ここを出る時にも、買って行こうかな」
リーナはスムージーを味わいながら、武器屋を目指して通りを歩く。魔獣との戦いやデルゴンに傷つけられたのもあり、相当ガタが来ていたのだ。
「ぶきやー、ぶきやー♪」
美味しい物で機嫌がよくなり、人目がなければスキップをしたいほどだ。そんな時に、耳に嫌でも入るような警報音が鳴り響く。
「なになに!?」
リーナが周囲を見渡すと、周りの歩行者たちは皆建物内に入りだした。気づけば、通りに立っているのはリーナだけだ。リーナが困惑していると
「あんた!こっちに早く!」
近くの店にいた従業員らしき、男性がリーナを呼ぶ。リーナは急いでその店に入ると、リーナが来た通りから耳がいたくなるような音楽が聞こえてきた。
「あんた、この街は初めてかい?」
「は、はい。今日着いたばかりですけど…」
「なら、覚えておくといい…。これから貴族どもの見せしめが始まる」
男性は忌々しそうに通りを見つめる。リーナも同じ方向を見ると、何やら大群が見えてきた。それは大の男たちが首に鎖を付けられ、半裸で大きな縄を引かされていた。
「…っ」
リーナはその光景に、息をのんだ。縄の先には豪華な椅子のようなものが付いており、太った男が乗っていた。さらにその大群の後ろには、首に鎖を付けられ、貧相な格好をした女性達が甕を持たされていた。
「あれは…?」
「貴族がその日買ったものを入れたり、貴族の食べ物を入れたりしてるな。気に入らない奴隷の甕にはたらふく水を入れて、落としたりしたら…」
男性は言葉を濁し、その大群から目を逸らした。
「あんなもん見ててもしょうがねぇ、あんたはどうしてこの街に?」
「この街に来たのは観光みたいな感じなんですけど、武器もちょっと見ようかなって」
リーナも大群から目を逸らした。許す気にはなれなかったが、自分がどうにかできるものでもないと理解したからだ。
「そりゃあ、ちょうどよかったな!リーロット一の武器屋はうちだ!」
男性は手を広げ、大声を上げた。その声につられ、店内を見るとたくさんの武器が置いていた。
「あんなもんを見せちまった詫びだ!安くしとくぜ!」
「ありがとうございます!」
店内にはミサキやネルが使っていた剣や杖、槍や棍棒まで揃えられていた。
「あんたは何をメインで使ってるんだ?その体格なら弓とかか?」
「いえ、私はこの短剣ですね。王国の店ではお金がなくて、予備も買えなかったので予備も欲しいかもです」
あの時に店主の勧めを無視して予備を買っていたらと思うと、ゾッとする。
「ちょっと使ってる短剣を見せてくれないか?」
リーナは腰から短剣を抜き、店主に渡す。
「おぉ!見たことも無い短剣だなぁ…。惚れ惚れする」
店主は短剣を軽く握り、上に向けたり、刃先を指で触れたりしている。店主の指が切れるのではないか
と、リーナは少し心配した。
「返すぜ、良い短剣だ!買取なら、言い値で買い取るが売らない方がいいだろう」
店主から短剣を返してもらうと、リーナは短剣を腰の鞘に戻す。
「この剣は師匠から貰った剣なので売れないですね」
それに使い慣れているのもあり、メインを変える気にはならなかった。
「いい師匠に恵まれたな。その短剣が壊れるのは考えにくいし、弓を持ってみるのはどうだい?」
店主はリーナの体格を見て、真っ先に使う武器を弓と答えていた。リーナはその弓押しに少し気になった。
「でも、私弓なんて使ったことないですよ?」
ソリューシャに習ったのは、体術と短剣だけだ。弓どころか、長距離の戦いをリーナはしたことがない。
「あ、そう言えば逃げるホーンラビットに短剣を投げて、仕留めたことはあります」
「すげぇじゃねぇか!なら、もう完璧も同然だな!」
そう言って、店主は奥から蒼く加工のされた弓を持ってきた。
「ちょっと値は張るが、その短剣と合わせて使うならこいつだろう」
リーナの短剣は鞘が黒なのに対し、剣身は深い緑色をしている。この弓と合わされば、すぐに印象が付くだろう。
「お金の方は何とかなると思いますけど、使いこなせるかが…」
魔獣の討伐のお金があるが、買ったところで使えなければ意味がない。
「確か、王国の店でも防具を買ったって言ってたよな?」
「はい。腕と胸の防具を買いましたよ。胸の方はもう壊れかけですけど…」
元々は防具を買うつもりで店を探していたのだ。てっきり、その事を忘れそうになっていた。
「あの店は俺の従弟が経営してるんだ。兄弟店舗割りで、弓はタダでつけてやるよ」
「うぅ…」
タダという言葉にリーナのお財布の紐が緩みそうになる。手に持ったスムージーを一口のみ、落ち着かせると
「よし、買います!」
「まいどあり!」
こうして、リーナは十万エルを支払い、弓を購入した。
リーナは弓を購入した店を出て、勧められた防具店を訪れていた。弓の店主から、ここも兄弟店だから
安くしてくれるとのことだった。
「すみません、防具が欲しいんですけどー」
リーナは店の中に声を掛けると、奥から先ほどの店とよく似た男性が出てきた。
「お、その胸当てと腕の防具はうちの商品だね。何回か来てくれてたのかな?」
店主はリーナの姿を見ると、すぐに防具が自分のとこのだと分かったようだ。
「いえ、これは王国の店で買ったんです。さっき、弓を買った店でここに来ると安くしてくれるって」
「おぉ!お客さんは兄弟店の顧客になってるじゃないか!予算はどのくらいなんだい?」
「えっと、五万エルで抑えて欲しいんですけど…」
ここで手持ちの十万エルすべてを使ってしまうと、宿のお金を払えないどころか、ご飯も食べれなくなってしまう。どうにか半分以下で抑えたいところだ。
「防具をちょっと見せてくれないか?あっちで着替えられるよ」
店主が指さした方向には、扉があり試着室と書かれていた。リーナはそこに入り、身に着けている防具を外すと店主に渡した。
「腕はまだ使えるが、胸の方はもう買い替えだな。結構長いこと使ってたのか?打撃根もあるみたいだが…」
「買ってから一週間くらいですね。魔獣に突進されたり、大男に殴られたりもしましたね…」
リーナは話してる途中に、自分の言ってることの異常さに気付き苦笑いを浮かべた。
「苦労してるんだな…。胸意外になんか欲しいのはあるか?」
「足とかですかね?大男の時も、足を殴られて折れちゃいましたから」
「ちょっと待ってくれ。防具を買って一週間くらいなら、折れたのは何日前なんだよ…」
そう言えば、折れた足が繋がっているのや、痛みを感じないのはおかしい。ネルが治してくれたのだろうか。
「まぁ、胸当てと足は膝を守るのを用意するから、お金は三万いや、二万エルでいいよ」
「え、一万エルも安くしてくれるんですか?」
「お客に寄り添うがうちの鉄則だからね。三軒も回ってくれてるなら、喜んで値下げするさ」
「ありがとうございます!」
リーナはこの店舗を愛用することを決め、リュックからお金を取り出そうとする。
「あぁ、お金は明日渡すときに払ってくれ」
「わかりました!楽しみにしています!」
そう言って、リーナはその店を後にした。




