ミキタビ始まります! 33
「そんなにもらえないですよ!デルゴンの件も、何もしてないのと同じですし…」
リーナはデルゴンを倒したことも、起きてから聞いただけで実感なんてものはない。
「それに、護衛の方も帰りは寝てだけですよ!」
「その件も含めて聞いていますよ。なので、魔獣討伐補助で二十万エル。デルゴン制止で八十万エルになっています」
どうやら、護衛クエストは失敗扱いの用だ。それにはリーナも納得している。
「デルゴンの件で八十万エルなんて、多すぎませんか?」
それだけで、討伐クエストの百倍以上ある。一つのクエスト達成にしては多すぎるのは明確だった。
「そういえば、リーナさんにはまだ話してませんでしたね」
モミジは机の下から、一枚の紙を取り出して読み上げ始めた。
「冒険者デルゴン この度幼児誘拐、並びに殺人未遂の発覚により冒険者の資格をはく奪。並びに財産の押収。余罪を調べたのちに当ギルドにて、ギルド長じきじきに刑を執り行う」
モミジはふぅ、と息を吐いて紙を机の下にしまった。
「それで、この押収した額の一部を報酬金に充てることになったんですよ。なので、このお金はリーナさ
んが頂いちゃってください!」
「そういう事なら…」
リーナは机の上に置かれたお金を受け取とろうと、手を伸ばす。しかし、掴む前にその手が止まる。
「…このお金って、デルゴンが報酬を横取りして稼いだお金ですよね?」
「はっきりとそうです、とはまだ言えませんが…」
モミジは言いよどむ。まだ、余罪を調べているとのことだったので、おそらく断言はできないのだろう。
「なら、私が貰うのは魔獣討伐補助の二十万エルだけにしてください!」
その言葉を聞いたモミジは驚き、口に手を当てた。隣ではミサキとネルも驚いているようだ。
「残ったお金は奪われた人に渡してください。あ、あとエレネー村のバレンって子の家にもいくらか渡して欲しいんですけど…」
二十万エルしか受け取らないと言った手前、使い道を決めるのは少し抵抗があった。
「…わかりました!もともと、バレン君の家にはギルドから慰謝料を出すつもりだったんですよ」
モミジは笑って、机の上の袋を籠に戻すと受付の奥に消えていった。
「リーナ、良かったの?百万エルもあれば家を持つことも夢じゃなかったのに…」
「私は旅をしたいだけなので、お金は最低限でもいいんです!」
「…立派だね。よぉし、なら今夜はあたしがおごってやろう!」
ミサキはリーナの頭をわしゃわしゃと撫でた。ぐわんぐわんとリーナの脳内が揺れる。
「お待たせしました。こちら、魔獣討伐補助の二十万エルと保存リュックです!」
モミジは小さくなった袋とネルが持っているカバンより大きいリュックを持ってきた。
「これって…?」
リーナはピンク色のリュックを手に取る。見かけよりは軽く、口も十分大きい。
「本来は護衛クエストの報酬として割引価格で売るようにギルド長から言われてたんですけど、お渡しさせていただきますね!」
「いいんですか!?」
ネルが使っているのを見て、リーナも欲しいと思っていたので嬉しい誤算だった。
「この保存リュックは保存袋と同じ効果で、容量が増えたものと思ってくださいね」
リーナは持っていたリュックを保存リュックの中に入れる。すると、リュックは吸い込まれるように中に消えていった。
「ありがとうございます!」
リーナは新たなリュックの中に報酬金も入れて、背中に背負った。今まで使っていたリュックとの違和感もなく、すぐに受け入れることができた。
「それじゃ、ご飯に行こうか?」
ミサキはリーナが報酬を受け取ったのを確認すると、ネルと二人で先にギルドを出た。リーナも後を追おうとすると
「あの、リーナさん。今回の件、本当にすみませんでした」
モミジは腰を折り、頭を下げる。その声にさっきまでの明るい雰囲気は含まれていなかった。
「デルゴンの件も、魔獣の件も本来はこちらが対処すべき問題。それなのに、お三方にはご迷惑をおかけいたしました」
「そんな、私迷惑だなんて全然!」
リーナは慌てて、体の前で手を振った。確かに問題は多くあったが、どちらもギルドに非があるとは思えない。
「それに、何も知らない私にすごく丁寧にしれくれたモミジさんと、このギルドには感謝しかありませんよ!」
「リーナさん…!」
モミジは頭を上げる。その顔は今にも泣きだしそうになっていた。
「モミジさん、本当にありがとうございました!」
その言葉を聞いたモミジははっと息をのんだ。
「ということは…」
「予定よりも早くにお金もまとまったので、明日にでも旅に出ます!今までお世話になりました!」
今度はリーナが頭を下げて、お礼を述べた。右も左もわからないリーナにクエストを出してくれたモミジには、ずっと感謝していた。
「旅に出ても、体調に気をつけてくださいね!あと、いつでもクエストを用意して待ってます!」
その言葉を聞き、リーナはギルドを後にした。
リーナはお昼ご飯をミサキとネルの三人で食べた後、二人にも旅に出ることを伝えた。
「そっか、もうちょっと一緒にクエストをしたいと思っていたんだけどな…」
「ネルも…」
ミサキとネルが寂しそうな顔を見せる。だが、すぐに笑顔を作り
「リーナが決めたことなら応援するよ!頑張ってな!」
「頑張って!」
「うん!二人も頑張ってね!」
お互いがお互いを励ましあう。そんなことをできる仲間を持てたことに、リーナは嬉しく思う。
「ところで、旅をするってどこに行くかとかは決めたのか?」
「メルモっていうところに行こうと思ってるんだ!」
リーナはギルドに入った日に食堂でマルロ達教えてくれた地名を言う。
「そっか!メルモか!あそこは何かと楽しいところだから、良いと思うぞ!」
ミサキはリーナの肩を叩きながら、笑った。
「ミサキ、ネル。誘ってくれてありがとね!二人とのクエスト、大変なことになっちゃったけど、できてよかったって思ってる!」
「あたしもだよ!リーナがいてくれなきゃ、どうなってたか。ありがとね!」
「ネルからも、ありがと!」
三人は顔を合わせ、笑いあう。魔獣やデルゴンと言った緊急事態もあったが、最後にはすべて丸く収まり、笑いあえる。
「それじゃ、私はもう行くね。また、どこかで。バイバイ!」
「あぁ、またどこかで!バイバイ!」
「バイバイ!」
二人と手を振りあい、別れを告げる。胸にはどこか寂しさも残るが、リーナは宿に戻り、旅の支度を整える。支度が終わり、宿の女性に挨拶をしようと思ったが、あいにく不在だったのでリーナは書置きと、料金を老婆に渡して宿を後にした。
「ありがとう初めての王国。ありがとう初めてのギルド」
リーナはギルドの前で感謝を口にすると、王国の検問を出て空を見上げた。
「みんな、見ててね。私の旅を!」
魔界のこれからを決めるための旅が、始まる。王国での出来事は魔界にいるころのリーナの考えに良くも悪くも大きな変化をもたらした。
この先も考えは二転三転するだろう。だから、リーナは旅をする。その目で見極めるために。
これにて、リーナの物語一章は完結です!
次回からは、旅をメインとした物語が始まりますので、お楽しみに!
かくいう私も、どんな冒険になるのか楽しみと不安でいっぱいです!!




