旅の醍醐味 34
今回からミキタビ二章が始まります!
リーナは王国を出てから、しばらく同じ木々に挟まれた道を歩いていると、あることに気付いた。
「一日待って、朝になってから出ればよかった…」
まだ日が落ちるには早いが、何分太陽の光を遮るものがない状況をただ黙々と歩くには、少し熱い気温だった。これが、夜明けならば気温も涼しく快適な旅のスタートを切れただろう。
「水、水」
リーナリュックから水筒を取り出し、水を口にする。ギルドからの報酬で貰った保存リュックの中に入っていた水は、入れたばかりかというほど冷たかった。
「よし、日が落ちるまでには村に着くと思うし、頑張ろう!」
冷えた水を飲み、気力が復活する。旅に出る前に決めた目的地は王国の一番近くの村だ。王国からその村までは徒歩なら、三時間ほどで着くと書いていたので、あと二時間ほどの計算だ。
「景色ももうちょっと変わってくれるといいんだけどなぁ…」
前を見ても後ろを見てもそこには、深い緑の木々と肌を出している道だけだ。これでは、自分が進んでいるのかもわからなくなりそうだ。
「ねーこが鳴いたら、すぐ帰れ。にわとり鳴いたら、すぐ起きろ。明日雨が降ったら、次は晴れ!」
「面白い歌ですね。続きはどんな感じなんですか?」
リーナが誰もいないと思い、大きな声で歌っていると、横の草むらからバイオリンのようなものを持った
男性が声を掛けてきた。
「えっと、誰、ですか?」
「これは、失礼しました。僕はバスクーラムと申します。職業は詩人で、様々な歌や物語を弾くことと、
聞くことが趣味でも仕事でもあります」
バスクーラムと名乗った男性は自己紹介を済ませると、手に持っているバイオリンのようなものを奏で始めた。その音色は軽やかで爽快な気分を作り上げてくれた。
「良ければ、あなたのお名前を聞いても?」
「私はリーナです!職業は冒険者で、今日からメルモという街を目指して、旅を始めました!」
バスクーラムはリーナの自己紹介を聞くと、持っている楽器をカラランとならした。
「それは、素晴らしい!メルモを目指すと言ことは、今日はラーシェン村で宿泊を?」
「はい!そのつもりです!」
バスクーラムは目を大きく開け、再び楽器をカララランと鳴らした。
「実は僕もラーシェン村を目指しておりまして、ご一緒してもよろしいですか?」
「もちろんです!私も一人は寂しかったので」
リーナはバスクーラムの申し出を快諾した。折れそうではなかったが、寂しかった一人道中がにぎやかになるのは願ってもないことだった。
「バスクーラムさん、よろしくお願いしますね!」
「僕のことは、クラムと呼んでください。こちらこそお願いします」
クラムはカランカランと心地の良い音を再び奏でた。どうやら、彼は気持ちを音楽に乗せているようだ。
「ところで、さっき歌っていた歌はどこの歌なんですか?」
リーナは一人のつもりで歌っていた歌を聞かれたことを思い出し、顔が熱くなる。
「あはは。あれは私の故郷の歌で、子供に教える歌なんですよ。ちゃんと時間通りに生活しなさい!って意味ですよ」
「やっぱり面白い歌ですね。鶏が鳴いたら起きるのは理解できますが、どうして猫が鳴いたら帰るんでしょう?」
クラムは興味津々という顔で、リーナに迫る。リーナ少し、後ろに下がる。
「さ、さぁ?教えてもらった話なので…。それに、相当古い歌なので」
「そうですか…。では、教えていただいたお礼に僕から、一曲!」
そう言って、リーナはクラムの歌や物語を聞きながら村を目指して、二人で歩いて行った。




