魔獣戦3 28
魔獣は剣を胃まで落としたのか、二人の方を向き直した。
「?」
「回る動きが無ければ、なんとか……」
前足を軸に回転することで、突進の反動を最小限に抑える。それだけでなく、浮いた足を木に着けて蹴ることで、突進に必要とする時間を大幅に短縮する。
リーナはミサキの余裕を信じるよりも、目の前の魔獣の脅威に冷や汗をかいた。
魔獣はリーナの不安を感じ取ったのか、リーナに向かって突進を始めた。
「リーナ!」
ミサキの声に返すほど余裕はなく、リーナは魔獣に集中する。魔獣は一直線にリーナに向かってくる。リーナは姿勢を低くして魔獣の方へ走る。魔獣とリーナが衝突する、瞬間にリーナは魔獣の牙と足との間に滑り込む。
魔獣は突進が失敗すると、回転の時と同様、前足を地面にめり込ませた。
「させない!」
仰向けの体を横に倒し、魔獣の後ろ脚に腕を回して掴まる。魔獣は足に掴まったリーナを振り落とそうと、後ろ脚を浮かせ地面に足を何度もぶつける。しかし、リーナは必死の思いで腕に力を込めて離さない。
「ありがとう、リーナ!」
その攻防の最中にミサキは木から飛び降り、魔獣の背中に着地した。
「さぁ、あんたの好きな血だよ!」
ミサキは木の上で拾ったのか、枝を自分の右腕に突き刺した。ミサキの腕から血が流れ、魔獣の体の奥にしみ込んでいく。その間も魔獣は二人を落とそうと、暴れまわる。
「ミサキ、まだ!?」
「……反応がないんだ!っち!」
ミサキは剣の反応がないことに気付くと、魔獣の頭の上まで進んだ。魔獣は顔を地面にこすりつける。
「いい加減に帰ってこい!」
ミサキは頭の上から、魔獣の目に右腕を突き刺した。その瞬間、魔獣が声にならない悲鳴を上げバタリと
倒れた。
「リーナ!」
ミサキが魔獣から降り、リーナに駆け寄る。その手にはミサキの剣が握られていた。
「やったね…!」
リーナは笑顔を作り、ミサキに手を伸ばす。
「あぁ!」
ミサキはその手を握り、リーナの体を抱きしめた。リーナも強く抱き返す。しかし、違和感に気付いた。ミサキの息が弱弱しくなり、意識がなくなっていた。見ると、背中には矢が刺さっていた。
パチパチパチパチ
木の陰から拍手が鳴り響く。
「お疲れ様。もう、死んでいいぞ」
木の陰からデルゴンが笑みを浮かべて現れた。




