魔獣戦2 27
リーナとミサキは魔獣を左右から挟み込むようにして、展開する。魔獣はミサキの方を向き、突進の構えを取った。背後を取る形になったリーナは、姿勢を低くして走る。魔獣の後ろ脚が短剣の範囲まで近づいた。リーナは、短剣に力を籠め、腱を切り裂こうと、横に振りかぶった。
しかし、魔獣の肉を切り裂きき、血を噴出させるはずの短剣は魔獣の体毛に阻まれ、短剣の勢いは止まってしまった。
魔獣は足元にいるリーナの存在に気付き、後ろ脚でリーナのお腹を蹴り、めり込ませた。
「がっは!」
お腹に衝撃が走る、その直後に飛ばされた勢いのまま木に衝突し、背中からも衝撃が走る。
ミサキはリーナが反撃されたのを見ると、魔獣の右側に走りこみ、剣を横腹に突き刺す。しかし、リーナと同様に体毛に剣が阻まれてしまう。
ミサキが後ろに飛んで、魔獣と距離を開けると、魔獣は地面を蹴り、ミサキに向かって突進する。ミサキはそれを横に転がることで、回避する。目標から外れた魔獣は減速後、停止すると考えたリーナは悲鳴を上げる体を無理にでも起こし、魔獣の背後を追う形で走る。
だが、魔獣は一切速度を落とさない。このままでは木にぶつかる、そう思った瞬間魔獣は前足を地面にめり込ませ、その前足を軸に百八十度の方向転換をした。三メートルを超える巨体からは想像もできない動きだ。
「…!」
魔獣の正面に立ってしまったリーナは慌てて、ミサキと反対方面に飛ぶ。その際にリーナは、魔獣が突進するにはまだ時間がかかると思い魔獣から目線を外してしまった。再び、魔獣に目線を向けると魔獣はリーナの目の前まで接近していた。見れば、魔獣が方向転換した場所にあった木が折れている。つまり、魔獣は木を蹴ってリーナに突進してきたのだ。
回避が間に合わないと判断したリーナは魔獣の牙に、短剣を押し当てる。魔獣は短剣ごとリーナに突進すると、牙を上に振り上げた。その勢いで、リーナは宙に打ち上げられる。
下では大口を開いて、魔獣がリーナを待っている。重力に従いリーナは魔獣の口に吸い込まれる───はずが横から強い衝撃が加わり、軌道が逸れる。結果、落ちたのは魔獣の区ではなく、木の上だった。
「大丈夫か!?」
リーナは激しく痛む腕と何かが衝突した脇腹の痛みをこらえ、状況を確認する。魔獣はまだ、リーナが落下するはずだった地点で口をもごもごと動かしている。その奥を見ると、ミサキがこちらに視線を向けていた。その手には持っているはずの剣が無かった。そのことで、リーナはミサキが剣を投げて救ってくれたのだと把握した。
リーナは木の上を走り、急いでミサキの横に着く。
「魔獣が今食べてるのって……」
「あぁ、あたしの剣だよ」
リーナを助ける代わりに、ミサキは大事な武器を失ってしまった。助けられたリーナも度重なる魔獣の攻撃で、満身創痍。絶望的な状況に、リーナは思わず顔を下に向ける。
「どうしよう…。一旦、全員で逃げても」
ここで逃げても勝算はない。いや、シヨン達のような強い冒険者に頼むのが最善だとリーナは考えた。
「安心していいよ。この勝負おそらくあたしたちの勝ちだ」
「……え?」
武器もないこの状況で、勝てるという言葉がリーナには理解できなかった。
「私の剣は特別でさ、あたしの血に反応すると手元に帰ってくるんだ」
「……つまり?」
「あたしがあいつの上に乗れれば、勝手に剣が内部から切り裂いてくれる」
ミサキは勝ちを確信したのか、微かに笑った。




