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ミキタビ始めました!  作者: feel
1章  初めての王国
25/293

デルゴンという男 25

魔獣が姿を現し、周囲の匂いを嗅いでいる。辺りを警戒しているのか、なかなか餌に食いつかない。


(リーナ、焦らない。魔獣、餌に興味津々)


リーナはネルの言葉で冷静に戻り、じっと魔獣を見つめる。そして、魔獣が罠まであと一歩のところまで来ると


「助けてぇぇ!!!」


遠くから子供の叫び声が鳴り響いた。魔獣はその声の方向を向き、匂いを嗅ぐと凄まじい速度で向かって言った。


「今の声……!」


リーナにはその声に聞き覚えがあった。


「ネル、何があった!?」


ミサキは魔獣が離れていくのを見ると、木から飛び降りネルに駆け寄る。リーナも同じように木から降りる。


「待って。見てみる」


ネルは目をつむり、杖の先を光らせる。その光はあっという間に円状に広がった。


「……子供が、怪我して木に縛られてる!近くにデルゴンも!」

「ネル、その子供ってバレン!?」

「わからない。けど、リーナと喋ってた子」


その、言葉を聞くとリーナは全身から何かがこみ上げ、魔獣を全速力で追おうと足に力を入れる。


「待ちなリーナ!」


駆け出そうとしたリーナの腕をミサキが掴む。


「離して!早くしないと、バレンが!」

「走るより、あたしが連れて行った方が早い!」


ミサキはリーナの体を抱きかかえる。その頭には既に杖の先を光らせ続けているネルが乗っていた。


「デルニング!」


杖の先の光が三人を包むと、白黒の世界で光る三つの存在を認識する。それは、バレンとそれに向かって突き進む魔獣。そして、バレンの木の上で待ち構えているデルゴンだ。


「しっかり掴まりなよ!」


ミサキが足を屈め姿勢を低くすると、穴を掘った時同様の赤い光がミサキの全身を包む。


「鬼跳!」


その瞬間、リーナ目をつむり、開けた時には遥か上空にいた。ミサキは上空で、バレンの方向を見るともう一度足を屈めて


「鬼跳!」


なんと宙を蹴り、魔獣よりも早く移動した。リーナは押し寄せる風により、目を閉じた。

風がなくなったのを感じ、目を開けると、目の前には木に縛り付けられ、足から血を流して目隠しまでされているバレンの姿があった。


「バレン!」


リーナはミサキの腕から飛び降り、急いでバレンの目隠しを外す。ミサキは背中の剣を抜き、バレンを縛っている縄を切り裂いた。


「バレン、大丈夫!?」


「……お姉ちゃん!」


バレンはリーナを見ると涙を流し、リーナに抱き着いた。暗い森の中で、怪我をしながら身動き一つできないのはどれほどの恐怖だろうか。リーナも震えるバレンを強く抱きしめた。


「もう大丈夫だからね!すぐにお家に返してあげるからね!」

「ぼ、ぼく、魔獣を、狩る所、見せて、あげるって、言われて」


バレンは泣きじゃくりながら、言葉を発する。リーナはなおもバレンを強く抱きしめながら、頭を撫でる。


「大丈夫だよ。もう大丈夫…!」

「ご、ごべんなざい!」

「おいおい、人の狩りを何邪魔してくれてんだ」


突如、頭の上からあざ笑うかのような男の声がする。リーナはその声をバレンが聞こえないように、バレンの耳を腕で抑える。


「ガッディール・サウンディ」


ネルの声がすると、バレンは瞼を下ろしてすうすうと息を落ち着かせた。


「眠ってもらった。朝、起きる」


どうやら、ネルがバレンを魔法で眠らせたようだ。リーナは眠ったバレンを抱き上げ、ネルに近づく。


「ありがとう、ネル。バレンのことお願いするね」

「うん」


リーナはバレンをネルの近くの木にそっと置き、木の上にいるデルゴンを睨む。


「これは、マナー違反じゃないのか?人の狩りを邪魔してよぉ!」


リーナはざわつく心を、唇を噛むことで必死に抑える。その傷口から、血が流れていることにも気づかない。


「デルゴン、降りてこい。お前のやったことはもう許されないぞ」


ミサキの低い声が、視線がデルゴンを捕らえて逃がさない。


「いいぜ?けど、先に魔獣をどうにかしないと何じゃないか?」


なおも、ふざけた声で挑発するようにデルゴンはミサキと別の方向を見た。その先からは、魔獣が木をなぎ倒しながら向かってきていた。


「やっぱり、魔獣には幼い人間だな...」



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