罠の代表格 23
リーナは額から落ちてくる汗を腕でぬぐう。太陽はちょうど頭の上にあり、周囲には土の匂いが漂っている。
「まだ、一メートルも行ってない…」
バレンから聞いた狩猟方法は猪の好物の果物を置いて、その周りにワイヤーをしかけて捕獲すると言うものだった。しかし、あの魔獣サイズになるとワイヤーも切られるということで、落とし穴を用意することにした。
「ミサキはともかく、ネルの方は大丈夫かな?」
幸い、土はそれほど固くはないが三メートルの魔獣を落とすほどとなると気が遠くなった。リーナは、再び村から借りたスコップを手に持ち穴を掘り始めようとすると
「おーい、リーナー!調子はどうだー?」
ミサキの声が、近づいてきた。ミサキも離れたところで、穴を掘っているはず。戻ってくるには早すぎる。
「ミサキ!?終わったの!?」
リーナはスコップを置き、穴から出てミサキの方を見る。すると、汗をかいていないどころか一切汚れていなかった。
「うん!ネルの方も終わったから、手伝いに来たんだ!」
「ネルも終わったの!?」
体力面では勝っているとどこかで、思っていたのか劣等感が生まれてしまう。
「あはは!あたしが手伝ったっていうか、一発殴ったんだよ」
「え?殴った?」
「おおー!頑張ったね!あとは任せな!」
そう言うとミサキはリーナが掘った穴の手前まで来ると、腕をまくり
「鬼腕!」
ミサキの腕が赤い光を纏う。そして、その腕で地面を殴ると大きな音と共に土埃が舞う。
「げっほげほ」
のどや鼻に埃が入り、せき込む。次第に土埃が落ち着きミサキの姿が見える。
「さて、帰って昼ご飯でも食べよっか?って、リーナは先にお風呂だね」
ミサキは頭の後ろで手を組んで、鼻歌を歌いながら村に向かって歩き出した。リーナはミサキが殴った地面を見る。そこには、リーナが数時間かけて堀った小さな穴の姿はなく、地面が大きな口を開けているのかと思わせるほどの大穴が空いていた。
宿に戻り、リーナはとミサキは大浴場でくつろいでいた。部屋にもシャワーはついているが、どうせならと思い、来たところ先にミサキが入っていたのだ。
「あんなことできるなら、初めから言ってくれればよかったのに!」
そうすれば、今お風呂に入る必要も汗水流して穴を掘る必要もなかった。
「悪い悪い、でも私だってちょっとは掘ったんだよ?で、掘ってる途中に殴った方が早くね?ってなったの」
「ネルも────」
ネルも同じことを思っていただろうと、ネルに聞こうと思ったがどうやら大浴場には来ていないらしい。
「ネルは部屋で寝てるよ。昼食の時には起きると思う」
「魔法ってやっぱり疲れるんだね」
ミサキは先日、ネルの魔法は燃費が悪いと言っていたが、一日の半分以上を寝ているようだ。
「ま、作戦は夜だし、あたしたちも今はゆっくり休もう」
そう言ってミサキは湯船にブクブクと泡を立てて沈んでいった。




