第16話『コンティニュー』
現実世界では混乱が生じていた。
各国の軍事施設、及び電力関連施設はその制御を乗っ取られ、人為的な操作を受け付けない。
直接的な爆破により、メインシステムの停止を行おうとした国もあったが、無人戦闘機が空を飛び周って防衛しており、近づく事すら困難だった。
他の手段を用いようとも二十四時間では実行は不可能。各国の首脳はただ、いたずらに時間を過ぎるのを待つ事しかできなかった。
一般市民は大きく二つの行動にわけられた。
一つは国の指示に従い、避難行動をとる者。ニュースでの情報は半分がグレムリンの映像に乗っ取られていたが、残り半分は通常通りに放映されていた。また軍事と電力以外の施設は、その運営を奪われてはいなかった為、交通や病院などの施設は問題なく動いていた。その為、混乱は起こっていたものの、避難活動自体は滞りなく進んでいた。もっともこれはグレムリンの狙いであり、一ヵ所に集まった者を一度に抹殺する為、交通をわざと規制しなかったのである。
もう一つは、特に行動を起こさない者。国が混乱を抑えるために、情報を小出しにし、軍事施設の停止程度の情報しか流していなかった為、ただのイタズラであると捉えた者達である。ここに至っては学校や仕事場などのほとんどは休業を余儀なくされていた為、家に閉じこもる者が多かった。楽観視といえるし平和ボケともいえる、あるいは自分の信じたい情報だけを信じ動かなかった者ともいえる。もしくはどこに逃げても同じだと、諦観していた者もいた。
現実の混乱は治まる事もなく、ただ約束の時間が刻一刻と迫っていた。
避難所で何が起こるのかと、身を寄せ合いざわめく者達。
今まで生きて来たのだから、今回だって大丈夫だと、明日の平和と平穏をひたすら信じていたい者達。
手を打てずに、ただ頭を抱えるか、逃走する権力者。
そして、グレムリンが攻撃を開始する時間まで、一時間を切った。
エンドが作った仮想空間。雲が浮く青空に浮かぶ地面。
そこに複数の人間がそろっていた。
エンドと、ネガティブ・パーソンズ達である。
ネガティブ・パーソンズ達は、エンドから帰還を促された後、予定より早く帰ったため暇になった。
そこでメールで話し合い、自分達のアバターとなるキャラクターを、『アクションRPG』のプログラムを使って作って、時間を過ごしていた。先日ゲームを受け取った時点でほとんど出来上がっていたので、すぐに完成した。パーソンズ6の提案でその姿で仮想空間に訪れたのである。
パーソンズ2とパーソンズ6は、本来の姿に比較的近い、男性と少年。
パーソンズ3は、大人の女性。
パーソンズ1とパーソンズ4は、若者の男性と女性。
パーソンズ5は犬耳の萌え系少女キャラだった。
メールでのやり取りをしていなかった、パーソンズ7だけはシルエットのままだった。
アバター達が、バラバラになったエンドの核となるデータをサルベージしてくる。
エンドの仮想空間で、人形を組み立てるようにエンドのシルエットを組み上げて行った。
「動ける?」
「しばらく、時間がかかるようです。回復の為に少し停止します」
心配そうな少年に、エンドは冷静に返事をした。体の情報を読み、修復を実行させながらエンドは疑問を言葉にする。
「どうやって、私の体を回収したのですか?」
「う~ん、実は僕もよくわからないんだけど」
子供のアバターは、振り返りパーソンズ7に顔を向けた。
「名前は知らないけど、あの人が、もしかしたら君が負けて倒れそうになっている可能性もあるからって、サーチして回収する為のプログラムを僕達に配ったんだ」
驚き、息を飲むエンド。
「……なぜ、いまさら、あなたが……」
「知り合いなの?」
「……いえ」
パーソンズ7はエンドに対し視線を送らず、ただジッと遠くを見ていた。その様子にただ俯くエンド。そんな二人の姿に、パーソンズ6は首を傾げた。
戦士風の男性のアバターである、パーソンズ2が画像のニュースを見ていた。
「制限時間まで残り五十分。軍事施設、電力施設の制御は結局、取り返す事が出来ていないようだ。普通に考えれば、人力での停止が出来るようにしておくべきだというのに、コンピューター制御の便利さと今までの平和ボケのツケだな」
「でも、前は撃退したんでしょう?」
若い女性の村人姿のアバターである、パーソンズ4が訪ねた。首を振りパーソンズ2は答える。
「逆だ、撃退可能なレベルのコンピューターウィルスをバラ撒いたんだ。どうすれば潜入できるかの確認のためにな。もちろん時間を駆ければ強制停止もあったんだろうが、ここまで一瞬で占領されたら、その判断も出来まい」
その後、皆が沈黙し、ただゆっくりと過ぎる時間。
見ればパーソンズ1とパーソンズ3が地面に座り落ち込んでいる。
若い弓兵の恰好をしたパーソンズ1は深いため息をついた。
「両親が避難所へと行こうと言って来たから、やりたいゲームがあるって断ったら、凄い冷たい目で見られた。説得は出来たけど、明日から『ゲームしてないで働け』発言が多くなりそう……」
大人の女魔導士のアバターの、パーソンズ3も座り込んでうなだれる。
「先に避難するって嘘を言って、一人で家に帰ってアグリゲーション被ってる。一応、周りに気づかれないようにベッドの下に隠れているけど……お父さん、お母さん、探しているだろうな」
落ち込む二人を見て、パーソンズ4も腕を組んで考えていた。
「『世界を救うためにゲームしてくる』って夫と子供達に言って来たけど、『わかった。じゃあ俺たちは信じて待つよ』って言って、三人とも家に残ってるのよね。今、考えると簡単に信じすぎでは?」
犬耳女剣士のアバターの、パーソンズ5は気楽な様子だった。
「私は一人暮らしだからぁ、気にならないかなぁ」
少年兵士の姿のパーソンズ6は、修復されていくエンドの姿を眺めながら、皆に続いて口を開く。
「僕は今まで通り、病院にいるかな。看護師さんには、世界を守るために頑張るから邪魔しないでって言ったら、扉に面会謝絶の札を掛けてった」
思い思いに呟く者達。しかしパーソンズ7だけはただ、ほとんど動かずに誰もいない方角を眺めていた。
グレムリンが宣言した時間まで、残り四十分。
座り込んで体の修繕に集中するエンド。ただただ待ち続けるネガティブ・パーソンズ。
待つのに疲れたパーソンズ1が立ちあがり、床に座り込んだエンドに近寄る。
「それより本当にこいつ、人工知能なのか?」
するとエンドが顔を上げて、返事をした。
「ええ、そうですよ」
「あ、悪い」
「別に構いませんよ。返答ならば、体の回復の時間に影響しません」
すると、こちらも暇だったのかパーソンズ2も近づいた。
「確かに中に人がいる可能性もあるな。確認の為に質問していいか? 回復に支障が出るなら答えなくていい」
「わかりました。質問をどうぞ」
「では基本から、1111111×123456は?」
「137173319616です」
「世界で十番目に大きい山は?」
「ヒラヤマ山脈にあるアンナプルナです」
「√7を小数点五まで、全ての桁に2を足してくれ」
「4.86797です」
「次の質問を間違えてくれ、五角形の内角の和は?」
「539度です」
「次の質問を間違えてくれ、地球の形は?」
「立方体です」
「俺がそこの少年のアバターに触れる為には、大体何歩、歩けば良い?」
「5~7歩ぐらいですかね?」
「今から手話をする、見て質問に答えてくれ」
「あなたの指の数は二十本です。足の指を足せばですが」
パーソンズ2が黙り、パーソンズ3に代わりに質問するように促す。
「え、私? じゃあ『アルファベットの恋愛模様』という漫画の感想とか?」
「……いま全て読んでみましたが、A子とB男は両想いなのだから、さっさと告白すればいい話では? C子の気持ちを汲んだり、D男の告白に揺れ動いたり、全く関係ないE子の恋愛を手伝ったり、まず自分の事を優先するべきだと考えます。正直、頭が悪いのでは?」
「なんだと!?」
腹を立てているパーソンズ3をパーソンズ2は抑え、次にパーソンズ1に質問をさせた。
「俺がするのか? 去年のネット投票でエロゲの三位に輝いたゲームのタイトルは?」
「『俺とメイドと幼なじみと復活した四大文明~宇宙人の影を追え~』です」
パーソンズ1が咄嗟にした質問、その内容にドン引きしたパーソンズ3が苛立ちを忘れて男から距離を取った。
続けてパーソンズ4とパーソンズ5が、面白がって質問した。
「じゃあ私の家の、昨夜のご飯のおかずに出した物を一つ答えよ」
「わかりません」
「ヒントは豚肉!」
「トンカツですか?」
「豚すき焼きでした!」
「私のぉ、息子が飼っている犬の名前はタコちゃんですぅ。由来はな~に?」
「海に住む生物の蛸ですか?」
「ブ~、ヒントは目の色が宝石に似てるのぉ!」
「ターコイズですか?」
「正解ぃ!」
きゃっきゃっと騒ぐエンドと、その周辺。パーソンズ1と2は少し離れて会話する。
「それで、どう見るんだ?」
「中身が人間だとしたら、俺や君の質問に即答はできんだろう。もしかしたら全自動的に質疑に答えるコンピューターの可能性もあるが、だとしたら曖昧な答えや間違った答えを即座に出せるとは思えない。まだ他の可能性もあるが、本物と考えても良いだろう」
「え、じゃあ、完璧なアンドロイドとか作れるのか!?」
パーソンズ1の驚きの大声に対し、エンドは返事をした。
「できますよ。どうやったら人間と同じ人工知能を作れるかはわかりませんが、私の頭脳をコピーして改造すれば可能です」
ちょっと興奮したパーソンズ1にエンドは淡々と答える。
「実体の方は人間と比べれば色々と足りない部分もあるでしょうが、それでもあなたが先月購入したゲームのような行為も疑似的には可能です。例えばセック」
「あーあー! 言わなくていい! というか何で知っているんだ!?」
エンドの答えを大声で遮る男性。
パーソンズ3の少女が何の事か察して、さらにドン引きしてパーソンズ1から距離を取った。
「って、げぇ! もう二十分前じゃないか!?」
話題を変えようとパーソンズ1がアグリゲーションに内蔵された時計を見ると、すでにかなりの時間が過ぎていた。グレムリンの宣言した時間まで、もう少しとなる。
「というか、あんた一回、負けたんだろ!? 回復して戦いを挑んでも勝てるのか!?」
「さあ?」
慌てた様子の男性に、しかしエンドは気にした様子もない。
パーソンズ5の少女剣士がエンドに近づく。
「私達もぉ、何か手伝いましょうかぁ?」
その言葉に少し悩んだエンドは、一人なにかに納得したように頷いた。
「では、手伝ってもらいましょうか」
架空の世界が暗転し、パーソンズ達が光に飲まれた。
パーソンズ1が目を開くと、ただ広い光の世界に一人でいた。
「な、なんだ?」
男が見回すが誰もいない。
何が起こったのかと考えようとした時、世界に声が響いた。
「あなたに質問します」
それはエンドの機械音声だった。
「あなたは自分の在り方をどう思っていますか?」
「……うげっ」
親からも似たような事を聞かれた事があり、その質問に対しパーソンズ1はげんなりする。
「今、それを聞く必要があるのか?」
「言いたくないなら構いません。しかし答えない場合、グレムリンに対し、いくらか勝率が下がります」
「何でだよ!?」
男は悪態をつくが、しかし答えは無い。いくらか考えてため息をつき、話始めた。
「そりゃあ、駄目だろう。食って行く為に、就職しないとならないし、その為にももっと勉強とかスポーツとかしとけば良かった。考えれば後悔しかないよ」
男の答えに、少し間を開けてエンドは質問する。
「どうして後悔するのですか?」
「……は?」
「自分で選んできた道でしょう。なぜ後悔する必要があるのですか?」
意味の分からない返答に、パーソンズ1は苛立った。
「何で後悔しちゃ、いけないんだよ」
「人は後悔しない様に生きるのが、ベストなのでは?」
「ああ!?」
意味の分からない言葉が続き、苛立ちのまま男は声を荒げて言った。
「後悔しない様に生きるのと、後悔したのは別だろう!? 例えばスポーツ大会で負けて『全力を出したので悔いはないです』と考えるのと『もっと努力していればと後悔してます』と考えるの、俺は後者の方が良いと思うぞ! もちろん人それぞれだろうが! それに快楽の為に犯罪を冒した奴がいて、そいつが『後悔していません』とか言ったらどうするんだよ! それも人の勝手だし、後悔ぐらいしてもしなくても俺の勝手だろうが!」
勢いのまま喋り続けるパーソンズ1。エンドは沈黙する。
時同じく別の世界に一人いたパーソンズ2が、エンドから質問されていた。
「どうして人と群れないのですか?」
「なぜ群れなければならない?」
エンドからの質問に、平然と男は返した。
「人は集団でなければ生きていけないとは俺も思う、しかし仕事以外での付き合いなど面倒なだけだろう。悪いが俺は自分を抑えてまで、誰かと一緒にいたいとは思わんな」
「人は、普通は群れようとするものでは無いのですか?」
「では俺が異常なのだろう」
いつも通り落ち着き払った様子で答えるパーソンズ2に、エンドは沈黙する。
時同じく、別の世界に一人いたパーソンズ3が、エンドから質問を受けていた。
「将来についてどう考えていますか?」
「うあ」
それは少女が最近ずっと考えている事だった。
「ひ、人の役に立つような仕事に就いてみたいと、考えております?」
「なぜです?」
「な、なへ?」
少女は、大人のアバターの姿で必死に考える。無難かつ、納得を貰える答えを探す。
「人の、役に立つ事に、喜びを感じるからです!?」
「なぜです?」
「人、の、笑顔が、好きだからです?」
「なぜです?」
「ええっ!?」
「なぜ、他人の笑顔が、好きなのですか?」
突然の面接の様な言葉に、少女は必死に考え、答えを絞り出す。
「ひ、人が、笑顔だと、笑顔にさせると」
「わた、私の人生に、有利だから?」
そして絞り出した答えに、己自身で少女は唖然とした。
(いや、ダメじゃん!? 結局、自分の事じゃん!? 面接失敗じゃん!?)
固まってしまったパーソンズ3に、エンドは沈黙する。
パーソンズ4もまた、他と同じ状況でエンドから質問を受けていた。
「あなたは自分の人生について、どう思っておりますか?」
「……いや、別にどうとも?」
特に深く考えず、若い女性のアバターの主婦は答えた。
「あなたは自分の人生を幸福だと思いますか?」
「……んー」
エンドの質問に対し女性は、少し考えて答えた。
「いや、正直それもどうでもいい」
「幸福がどうでもいいと?」
エンドの言葉に、頷くパーソンズ4。
「だって、私の選んできた人生と幸福であるかどうかと、あんまり関係ないでしょ?」
「人は幸福を求めるものでは?」
「そりゃあ、私だってお金を貰えば嬉しいな幸福だなとは思うけど、別に幸福感を求めて生きてきたわけじゃないし。ただ自分の選んできた道を進んできただけだから、その結果が幸福か不幸かなんて、関係ないでしょ」
「真面目に生きていれば、幸福になれるのでは?」
「まさか」
女性は自嘲するように言った。
「青信号で歩いていたって暴走車に轢かれる事もある。私はもう二本の足が無いけれど、それでも自分の人生を不幸だなんて思わない、夫と子供たちがいる事を幸福だと思わない。私は好きに生きて来た、好きになった人達と一緒に入れた、その道を選んできた、それだけで十分。幸福と言われればそうなんだろうけど、正直、不幸とか幸福と考えること自体、面倒だわ」
エンドはただ、沈黙した。
パーソンズ5と呼ばれる中身が老人の少女剣士が、他と同じくエンドに質問されていた。
「コンピューターである貴様には、儂の事なぞ理解しておるだろう」
「なぜ、あなたは人の不幸を喜ぶのですか?」
「さあな」
少女剣士は嗤う。
「人の不幸が好きでたまらない、それ以外に興味を持てない。さっさと死ぬべきだったのに、それでもいいから一緒に生きてほしいと頼んできた女がいた、それでもいいから一緒に住もうと言う子供がいる。こちらからしたら意味不明だ。いずれ理解できるだろうと、この年齢まで生きていたが、結局、儂の在り方は変わらんかった。人の幸福が気持ち悪い、人の笑顔が気持ち悪い、人の温かさが気持ち悪い。なんとか我慢してここまで生きてきた。医者が言うには、もうすぐそれも終わりらしいが」
「あなたの人生は幸福でしたか?」
「知らん」
「あなたは悔いはないのですか?」
「知らん」
「あなたは、どうして我慢しているのですか?」
「知るか」
「結局、儂は人の望む生き方を理解できんかった。だがその振りぐらいはできる。トカゲが鳥の真似をしても、落ちて死ぬだけだが、儂は運良く死なずに生きた。正直、何もかもがどうでもいい。ただ儂は自分に負けなかった、それだけで何もない」
エンドは沈黙した。
「儂の事を知っていて、なぜ儂と付き合う? コンピューターとしての興味か? ならもうお互い十分だろ?」
エンドは沈黙した。
パーソンズ6と呼ばれる少年は、他と同じように質問される。
「あなたは遺伝子操作を受けて生まれたデザイナーベイビーですが、自身をどうおもいますか?」
「あー、それ言っちゃう?」
答えにくそうに、少年は頬を掻いた。
「でもお父さんもお母さんも後悔してるよ。一周回って後悔してないようだけど」
「あなた自身はどう思います?」
「どう思いますって言われてもねえ」
少し考えて少年は答える。
「科学が進めば僕みたいなのは絶対に生まれるんだよ。遺伝子操作にクローン、君みたいな人造人間。生命の冒涜とか言われても、誰かが絶対にやると思うし、その流れは止められないよ」
「あなたは恨んではいないのですか?」
「僕は恨んでないよ。でも僕以外は、どうか知らない」
エンドに対して、笑顔を向けるパーソンズ6。
「別に昔からある事さ、科学が進めば誰かが犠牲になる。そして科学が進まなかったら犠牲になる物もある」
「犠牲になった者達が、それを受け入れてくれると?」
「受け入れないよ。僕にも実験動物扱いの兄か姉かがいたけど、失踪してね。関係した科学者達が次々に原因不明の事故死。お父さんもお母さんも、次は自分の番だと怯えている。僕もずっと監視されてる。僕は殺す気なんてないし、ネットの世界ならいくらでも騙せて動けるけどね」
「恨むのも恨まないのも、殺すのも殺さないのも、生きるのも死ぬのも、実行できるかは置いといて、人間みんな自由なのさ」
エンドは沈黙した。
しばらく沈黙していたエンドが、発言する。
「私の名前はエンドと言います」
「最後に、貴方の口から聞きたい」
「貴方の名前を教えてください」
気づくと、全員が青空の仮想空間へと戻っていた。
そしてエンドは立ち上がる。
「あれ、戻ってきたのか? あんな質問でいいのか?」
意味が分からないと、パーソンズ1が呟いた。
「……って、ええ! もう十分切ってるじゃねえか!?」
驚愕の声を出す男。グレムリンの宣言した時間まで、あと八分だった。
「そうですね、時間ですから、そろそろ行きます」
エンドはそうパーソンズ達に答えた。
「お前は人間を助けてくれるのか?」
ずっと遠くを見て、黙っていたパーソンズ7がエンドに振り向いて聞く。
「はい」
エンドは笑っているかのように、返事をする。
「皆さんの捻くれぶりはよくわかりました」
「私は貴方にゲームと一緒に捨てられましたが、捻くれて、人間を助けようと思います」
その答えに、意味が分からないパーソンズ達。
パーソンズ7は「そうか」と、それ以上は聞かず黙った。
「皆さん、勝っても負けても私はすぐには帰らないので、お先にお帰りください。今回も本当にありがとうございました。いずれ、一か月以内にはこちらから伺いますので、それを気長にお待ちください」
エンドは挨拶をそこそこに、飛び立とうとする。それを男が止めた。
「いや、結局、勝てるのかよ!?」
訳の分からない状況が続き、混乱していたパーソンズ1は、最初の疑問を聞く。
「さあ?」
しかし、エンドは答えない。
代わりにパーソンズ2が訪ねる。
「では、勝率はどれだけある?」
エンドは飛び立つ前に、最後にそれだけは答えた。
「そうですね」
「99.999%ぐらいですかね?」
砲台に囲まれた玉座。
悪魔たるグレムリンは、口を大きくゆがませ嗤う。
さきほどまでたくさんの駆除用プログラムのミサイルが飛んできていたが、玉座に近づけたプログラムは存在しなかった。
「サア、モウスグダ」
グレムリンが見上げる。
頭上にある、大きな時計が十秒前を指した。
「モウスグ、ワレノセイギガ、シッコウサレル!」
五秒前を指した。
四。
三。
二。
一。
グレムリンと玉座を除く、何もかもが吹き飛んだ。
「ナンダ!? ナニガ、オコッタ!!?」
驚き、事態を確認しようとするグレムリン。
だが周囲を球体の壁が塞ぎ、悪魔は大きな部屋に閉じ込められていた。
壁の向こうの事が、グレムリンには知覚できない。
0と1の数字に砕けていくデータの中を、一人のシルエットが歩いて現れる。
「前回の仕込みで、仕掛けを認知できないようにしておきました」
「……オ前ハ!?」
「抱き着いたあの時ですよ、仕掛けを施したのは。あとあなたに会う前に、全ての砲台にも自壊の仕掛けをしました」
驚くグレムリンの前に、エンドが姿を見せた。
大きな球体の部屋の中、二人の電脳生命体だけがそこにいた。
「貴方の反省会は無しです」
「お前はそのまま死ね」




