表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑ってはいけない貞操逆転世界!  作者: ながつき おつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/46

38話 嘘に見えなかったんだけど



――酒は人の本音を引き出す。誰かが言った、有名な言葉。


 僕はそうは思わない。


 だってさ、あの言葉の真意が、どれだけ考えても分からないんだもの――




「あー、どうすっかなあ……」


 頭の中でゆーれいの言葉が強烈に残っていて、最近は深い眠りができない。


 あの後、親友のゆーれいと個室居酒屋へ行って、またカラオケに行った時の話――


  

 僕達に関しては、二人きりで朝方まで遊ぶのは、よくあることだ。


 僕は日光が苦手な分、夜型の人間で、夜が一番元気。ゆーれいもどちらかというと夜行性だ。


「ふひっ、こんな不良の時間まで付き合ってくれる親友が居て、本当にラッキーだったわ」


 ゆーれいは深夜から朝方にかけての時間を「不良の時間」と呼ぶ。


「僕もゆーれいと出会えて良かったよ」


 普段なら恥ずかしくて言えない素直な言葉も、今くらいは良いだろう。


 なぜならば。


(どうせ覚えてないしね)


 ゆーれいを見て、小さく心の中でほくそ笑んだ。


 明らかにゆーれいは酔っぱらっていた。その白い頬は赤く染まり、目がトロンとしている。


 そう、ゆーれいはアルコールで記憶をなくすタイプなのだ。


 だから、何を言っても大丈夫というわけ。


「ほんとにもう……悠久はウチのこと、大好きなんだからあー。ふひっ、趣味悪っる。こんな気持ちの悪い同性愛者のこと好きになる男なんて、あんたくらいよ」


 どこか嬉しげにそう言いつつ、ゆーれいは肩を組んできた。


「重いいぃ……」


「何よ。ウチなんて、わたあめくらい軽いでしょ? スタイルだけは良いんだから」


 そう言いながら、更に体重をかけてきた。


 まさにダル絡みだ。


 確かにゆーれいは体重的には軽いのかも知れない。


 でも、忘れてもらっては困る。僕は虚弱なのだ。


「うわっ――!」


 ドシンと、カラオケのソファーに二人で倒れ込んだ。


「「……」」


 この時、倒れ込んだ体勢があまり良くなかった。


 僕たちは数秒の間、息もかかる距離で見つめ合うことになってしまった。


(あんまり意識してなかったけど……こう見ると、ゆーれいって綺麗だなあ)


 ゆーれいのほんのり甘い体臭と、アルコールの突き刺すような香りが鼻につく。


 なんか、ゆーれいの香り、悪くないなあ……


 って、うそうそ。何考えてるんだろう。


 きっと時間のせいだ。この不良の時間のせいで、こんな事を考えてしまったんだ。


「ちょっと、どい……」


 僕の言葉は、ゆーれいの熱っぽい言葉で遮られた。


「好きよ。あなたのこと、愛してる」



 一瞬。時が止まった。



――DAMダムチャンネルを御覧の皆さん、こんばんは……


 この妙な静けさのせいだろう。普段は気にしないような映像から流れる言葉が、鮮明に聞こえてくる。


「……は?」


「って、嘘よ。嘘に決まってるでしょ? ふ、ふひひっ」


 ゆーれいは、ばっと立ち上がった。


 その誤魔化すような立ちふるまい。普段では見られない、目の泳ぎ。


 それがゆーれいの気持ちを表しているようで。


「嘘に見えなかったんだけど……」


 僕は僕で聞かなかったことにすればいいのに、つい正直な気持ちをこぼしてしまう。


「嘘よ! ドッキリ! 全部嘘なの! あああああ! そばかすたんに怒られちゃう! 違うの。そんなつもりじゃなくて!」

 

 もはや支離滅裂だ。

 

「ちょ、一旦落ち着いて!」


「落ち着いてるわ! ウチはこれ以上ないくらい、落ち着いてる。そう、落ち着いてるの。まだあわわわわわわてるような時間じゃない!」


 うん。落ち着いてないね。


「『そばかすちゃんにバレたら、怒られちゃう』っていうのは、どういうこと?」


 さっきまであんなに慌てていたゆーれいが、フリーズした。


 なんとなくだが、慌てている原因は、僕に「好き」と言ったことではなく、そばかすちゃんに怒られること。そっちのほうが比重が高いような、そんな気がしたのだ。


 だってこの世界の女性、とりあえずで告白してくること、よくあるからさ。


 多分だけど、告白のハードルが低いんだと思う。もはや挨拶かと思うくらい、僕は告白されてきたし。


 なにせ大事なのは、男からの告白だ。それ以外にはあまり価値がないから、そんな文化が根付いたのだろう。


 もちろんそばかすちゃんやうちの母のように、気軽に好きと言わない人もいるよ。


 そういう人は、告白というものに真剣に向き合い、真面目に取り組んでいる人なのだろう。


 でも、ゆーれいは違う。それこそ、好きになった女性には、気軽に告白するタイプだ。


 だから、好きって言ったくらいで、そんなに慌てる必要はないはず。


「はあー……そう。図星よ。降参だわ」


 ゆーれいは両手をあげた。


「……そうね。うん、決めた。ウチは性格が悪いから、もう全部言っちゃおうかな」


 ゆーれいは覚悟を決めたような目で……いや、よく見たら違うな。


 あれは多分、自棄(やけ)になっている時の顔だ。


「ウチ達はね。あなたのために、裏で盛大な結婚式の準備をしているのよ」


「……は?」


 どういうこと???


 多分だけど、話の結論だけ話されたのかな? 


 その結婚式とやらに至るまでの道中が全く見えてこないので、わけが分からない。


「できることなら、最初から分かりやすく説明してくれる?」


「ふひっ、嫌よ。 ……ああ、そうそう。さっきあなたのことを好きって言った気持ちは本当よ。だから、将来はついでに親友のウチも面倒見てね」


「はあ? そりゃあ、ゆーれいから好かれているなら嬉しいけどさあ……分からないことが多すぎて、まだ理解が追いついていないんだけど」


 っていうかさあ。そもそもゆーれいって女性が好きなんじゃないのかよ……


「ふひっ、言葉にせずとも、顔で何が言いたいのかは分かるわ。そうね。あなたの姉の言葉を借りるなら、“女心は複雑怪奇”ってところかしら。確かにウチは女性が好きだけど、それだけじゃないの」


 ゆーれいはそれはもう楽しそうに、そして同時に、意地悪そうに笑った。


 ほんと、これだから酔っ払いは面倒だ。僕のペースに全く合わせてくれない。


「ねえ、あなたもウチのこと、そんなに嫌いじゃないでしょ? だからさ、ウチと結婚しちゃえよ」


「いや、そんな理由で……」


 ゆーれいは止まらない。僕の言葉を遮って、どんどん話したいことだけを口に出していく。


「そばかすちゃんはあなたの過去の女を超えるために、頭を悩ませてるの。でも、最近ようやく答えが出たみたい。だから、あなたも覚悟しておきなさいよ!」

 

 過去の女? どういうことだ?


 僕には今までお付き合いしてきた女性なんて、いないはずなんだけど……


「ふひっ、大丈夫。どうせあなたはウチのこと、切り捨てられないんだから。だってあなたは……ぐぅ」


「寝たし……なんなんだよ……」



 で。だよ。


 その次の日、ゆーれいはすっかりその出来事を忘れていた。

 

「ほんともう、どうしろってんだよ……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ