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【笑え】笑ってはいけない貞操逆転世界!【おもんなくとも】  作者: ながつき おつ


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4/7

3話 とにかく、歪むんだ


「ひかりさーん! 今日も相変わらず目つきが怖くて偉そうですね!!」

「あっ、ママー、見て見て! 悠久君のお母様だよ! 生で見ると大迫力だね!」

「大帝国の番組、いつも見てます!!」


 商店街で、母が色々な人に声をかけられている。


 あんなつっけんどんな母でも、地元ではかなり愛されているのだ。


 芸人というのは不思議なものだ。あんなつっけんどんな母でも、世に出てその独自のキャラクターが認知され始めた辺りから、愛されキャラとして扱われる。


 案外母には芸人という仕事は向いていたのかもしれないな。


「お前ら。以前この私が教えたありがたい教えを、しっかり覚えているな?」


 母がいつものように目をくわっとかっぴらいた。


「「「もちろんです」」」


「では、言ってみろ」


「「「この命は悠久くんのために!!!」」」


「よろしい」


「よろしいじゃねえよ! お前は地元民に何を教えてるんだ!!」


 うぐっ、あまりのテンポの良さと、息ぴったりさに笑いそうになった。危ない危ない。



 そもそも、なぜ僕がこんなに笑うのを我慢しているのか。


 すっごく簡単に説明すると、僕の素の笑顔が、この世界の女性には刺激が強すぎるからってことになるのかなあ……



 突然だが、僕はものすごくイケメンだ。


 そんな僕が一度(ひとたび)笑うと、周りの女性がたちまち変になる。


 僕と笑顔の相性は、すこぶる悪いのだ。


 いや、良すぎるっていうのが正しいのかな? ま、どっちでもいいや。


 実際、僕の母や姉、幼馴染は、僕が笑ったことで突然お笑い芸人になってしまった。

 

 ……まあ、流石に全てを捨てて芸人になるなんて、稀な例だけどね。


 よくあるのは「笑ったってことは、合意ありってことだよね?」と、謎の理論を展開され、相手を性犯罪者にしてしまうことかな。


 びっくりするかもだけど、これは本当に数多く経験してきたんだ。もう一度言うけど、びっくりするくらい、本当に数多く。


『なんだかあの笑顔を見て、許された気がした』

『その自然な笑みにムラっときて、つい本能が勝手に動いた』

『美少年が私だけに笑っていた。いけると思った』

『逆に聞きましょうか。ねえ、おまわりさん。あなただって、私の気持ちが分かるはずですよね?』

『あの笑顔を見て、全身を愛撫されたようなくすぐったい快感が、全身を駆け巡りました。そして思ったんです。愛撫されたなら、キスくらいしてもいいよねって』


 僕の笑顔により性犯罪者になってしまった人の言い分は、こんな感じ。


 僕の自然な笑顔は、女性の何かをかき立ててしまうらしい。


 だから僕は安易に笑わないってわけ。



 まあ、心から笑いたくない理由は、実はもう一つあるんだけどね。


 これはとても個人的かつ、かなりしょうもない理由だ。


 言うなれば……


「(って、あの、カメラマンさん?)」


 僕はVTRの邪魔をしないように、視線だけで言葉を発する。


 その舐めるようなカメラアングル、やめてよ。これ、ただのワイプでしょ?


 まあ、僕ってギャラがとんでもなく高いから、多少のやんちゃは受け入れるけどさあ……







 母達の勇姿を純粋に楽しみながら、頭の片隅で冷静な部分が僕にこう語りかけてくる。


『おまえはなにも成し遂げていないのに、なぜこんなところに座っているのだ』


『おまえはアイドルになどなりたくなかったはずだ。それなのに、なぜ偉そうにタレントなどになっているのだ』


 いや、そんなの正直、僕にも分かっていない。でも、なんというか、うーん、その……


 僕はまるで言い訳するように、ここまできた流れを頭に思い浮かべてみることにした――



 違うんだよ、最初はさ、母がお笑い芸人を目指すとか言うから、全力で応援してただけなんだ。


 遺伝子研究の第一人者として超有名な天才が、何故わざわざ芸人の道を進むのかは心底理解できなかった。


 でも、母はやると決めたらやるかっこいい女性だ。


 それなら僕もできる限り協力したいと、子供ながらに思ってたんだよね。


 僕って前世で親に恵まれなかった分、温かい母と姉のことが大好きだったから、成功してほしいと思ってさ。


 ただ、当時幼稚園生だった僕には、この世界の理解度が足りていなかった。


 男が貴重ということは分かっていても、それによってどんな社会になっているのか、ちゃんと理解できていなかったんだ。


(別に男女比が1:10でも、言ってみれば10人に一人は男がいるってことだよな? なら、大したことないか)


 あの時は安易に考えていたっけ。


 ……バカだなあ、僕。前世でもっと勉強しておけば、こんな安直な考えは持たなかったのに。


 ただ単純に、数字の問題じゃない。十人に一人男がいるっていうだけじゃないんだ。


 男女比が偏るってことは、想像以上の影響がある。


 とにかく、歪むんだ。


 なにがって? 


 価値観だよ。ノリ、とも言うかな。


 ほら? 前世の男子校でずっと過ごしてきた人なんかは、「女性と何を喋っていいのか分からない」とかさ。


 女子校にずっと通っていた人だって、「社会に出てから男が怖かった」とか、「生理用品が恥ずかしいものだと思いもしなかった」とかさ。


 そういう話はいくらでも転がっていたでしょ?


 前世では、男女比が同じということで、知らず知らずのうちに色んな常識が成り立っていたんだと、今ならすごく思う。


(前世の常識が、ここでの常識とは限らない。僕が考える普通が、全然普通じゃなかったんだよね……)


 前世の記憶は武器にもなるけれど、「(かせ)」にもなるということを、僕はまだ理解していなかったのだ。



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