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笑ってはいけない貞操逆転世界!  作者: ながつき おつ


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22話 よし、56そう 

一ミクロンでも口角が上がれば★やブックマークをお願いします。




――どんな人でも良いところはある。誰かが言った、有名な言葉。


 僕はそうは思わない。


 だってさ、このテレビで「看板息子」とか紹介された畜生は、どこからどう見ても口から不快感を喚き散らすだけの、ゴミなんだもの……



「第一問!こちらの老舗温泉宿は、築100年を超えている? マルかバツか!」


 僕は家で一人、僕のつてで取り寄せたディスクをテレビに入れ、ある番組のワンコーナーを見ていた。


「ふんふんふーん~」


 外はもう深い夜、いわゆる深夜だというのに、まだまだ僕が眠る気配はない。


 今も僕の大好物、レモンマーマレードをたっぷりパンに塗り、温かいカフェオレなんてものまで飲んでいる。


 だいたい僕がいつも寝る時間の平均は、深夜5時だ。


 日光が苦手だからといって、ちょっと夜を楽しみ過ぎかな。


 だめだよなあ……僕。


 ま、僕なんかのことはどうでもいいんだ。大事なのは今テレビに映ってるそばかすちゃんだから。


「うへえ……寒そう。そばかすちゃん達、がんばってるなあ」

 

 今の季節は5月だというのに、テレビの向こうは雪が降り積もっている。


 北の地方かつ、ロケ日が2月とのことだ。


 そんな状況で、そばかすちゃんとその他数人の若手芸人が、上半身真っ裸でクイズをさせられている。


 正解すれば温泉で暖まることができるという、そういうタイプの番組だ。



「いくらこの世界でその大きな胸が無価値だからといって、あんまりその美しい肉体を晒してほしくなんだけどなあ……」


 あれは、僕にとっては魅力の塊だ。


 本人から聞いた話では、カップ数は「6番目」らしい。うん、あえてちょっと濁してみた。


 ちなみに、前世ではテレビで女性が上裸を晒すことなんてありえないことだが、この世界ではよくある光景だ。


 前世で男が下半身の大事なところさえ隠していればオッケーだったように、この世界でもそうなのだ。


「さあ、この難問! 流石に考える時間が必要でしょう! それでは! シンキングタイム、スタート!」


「そんなのいらないわよ! 寒いんだから、さっさと答えさせなさい!」


 司会者の意地悪に、若手芸人たちがブーイングの嵐を巻き起こす。


 その中でもそばかすちゃんの声は大きく、聞き取りやすい。


 こういうところがまだ若手なのに、ほんの少しテレビに呼ばれだした所以なのだろう。


「では、そばかすちゃん! 答えをどうぞ!」


「こんなの簡単よ! こんなクイズ、百年以上経っていなければ、問題にするはずないもの! 答えは絶対にマルよ! エナジー!!!」


 最後に前を指さしながら「エナジー!!!」と、決め顔を晒す。


 ぶっちゃけどういう意味なのかは分からないが、そばかすちゃんはとにかく連発しているんだよね。


「では、正解を発表します。ドゥルルルルルル……」


「そんなの良いから、さっさと答えを発表しなさい!」


「答えは……残念! バツです! ということで、そばかすちゃんはまだ温泉はお預けです」


「うそ! なんでよ!」


「実はこの旅館、来年で築100年なんですよねー、いやあ、残念でした」


 ここでテレビの編集により、この旅館の魅力紹介映像が流れる。


 うん、風情があって、なかなか良さそうな場所だ。



「さて、ここで突然のサプライズゲストです!」


「そんなのはもういいわ! とにかく温泉に入らせなさい!」


「ふふっ、これを聞いても同じことが言えますかね? なんと、この旅館の看板息子さんが、わざわざこちらに出向いてくれたようです!」


「「「ええー!!」」


 若手芸人たちの色めく声が重なる。


 寒空だというのに、どれだけお金を積んだんですか? とか、趣味は? どんな女性がタイプ? など、質問が鳴り止まない。


「では登場していただきましょう。どうぞ!」


「ふんっ」


「「きゃー!!!」」


 紹介されて不機嫌そうに出てきたのは、豚のようにでっぷりと肥え太った醜い男だった。


 まあ、ね、うん。確かに若いは若いけど……いや、やっぱり何も言うまい。


 この世界の男ってまあ、そんなもんだし。


「すごい!私、こんな間近で男の人に出会えるなんて思ってもみませんでした! 感激です!」


 ある身長の低い若手芸人の一人が、寒さも忘れた様子で口火を切る。


 彼女の頬は赤く染まっているので、本気で嬉しいのだろう。他の面々も同じような感じだ。


 ……まあ、ここで妙にそばかすちゃんにカメラが当たらないところを見ると、彼女だけは冷めた目をしているのだろうな。


 あの子、僕に慣れちゃってるからね。


「喚くな、醜い無価値のゴミ共め。この俺がわざわざ出向いてやったのだから、せめてもう少し華のある女をよこすべきだろう。だというのに、なんだこの面々は。どいつもこいつもクソのような女ばかりではないか。醜すぎて、もはや笑えんな」


「ちょっと!なによそ……」


「だれが口を開いて良いと言った? 身の程を知れ」


「……」


 は? 何こいつ、そばかすちゃんに何言ってんの? 


 よし、この男、殺そう。


 確かあの棚にマグロ解体用の包丁があったはずだから……


「ふんふんふーん♪」


 僕は鼻歌を歌いながら、手に持った包丁を研ぐ。一撃で仕留められるように、念入りに。


 そしてその後。この男の姿を見たものは誰もいなかった――



 まあ、もちろんそんなのは嘘である。


 野蛮なのはダメだね。かっこよくないし。


 殺すにしても、もっとやり方を選ばないと。


「では、次の一問は看板息子さんに問題を読んでもらいましょう!」


「いいや、俺はもう帰る。この俺のことを一目見られただけでも、こんな醜女(しこめ)どもには一生物の宝となったことだろう。なんともまあ、素晴らしいことをしたものだ。では、ギャラの方はしっかり振り込んでおけよ」


 えっと……【完全犯罪 証拠 残らない】 検索っと。


 うんうん、なるほどなるほど……



 って、少し冷静にならなきゃ。


 大丈夫、そばかすちゃんは強くて、みみっちい人だ。


 こういう嫌な出来事一つ一つを、しっかり覚えている。


 きっと自分の力で復讐するだろう。


 だから、僕にできるのはそのサポートと、癒やすことだ。


 今度帰ってきたら、最高のおもてなしをしてあげようね。



 その後の番組はそばかすちゃんの活躍はなかったので、編集で男の登場以降のところは消去し、僕はそばかすちゃんの活躍を繰り返し見るのだった。




感想、ツッコミ等、じゃんじゃんお待ちしています。


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