保安隊海へ行く 93
「しかし、叔父貴の奴。珍しく焦ってるな」
保安隊基地の隣に隣接している巨大な菱川重工豊川工場の敷地。夜も休むことなく走っているコンテナーを載せたトラックに続いて動き出した、カウラのスポーツカーの後部座席。不機嫌そうにひざの上の荷物を叩きながら要がつぶやく。
「そうは見えませんでしたけど」
助手席の誠がそう言うと、要が大きなため息をついた。
「わかってねえなあ」
「まあしょうがないわよ。私だってあの不良中年の考えてることが少しわかったような気がしたの最近だもの」
そう言って自分で買ってきた缶コーヒーを口にするアイシャ。
「どうしてわかるんですか?」
「部隊長は確定情報じゃないことを真剣な顔をして口にすることは無い。それが隊長の特徴だ」
ギアを一段あげてカウラがそう言った。
「法術武装隊に知り合いがいねえだ?ふざけるなっての。東都戦争で叔父貴の手先で動いてた嵯峨直参隊の連中の身元洗って突きつけてやろうか?」
要はそう言うとこぶしを握り締めた。
「たぶん隊長の手元に着く前に吉田少佐にデータ改ざんされるわよ」
そのアイシャの言葉に右手のこぶしを左手に叩きつける要。
「暴れるのは止めてくれ」
いつもどおり淡々とハンドルを操るカウラ。
「西園寺さんでもすぐわかる嘘をついたわけですか。じゃあどうしてそんなことを……」
「決まってるじゃない、あの人なりに誠君のこと気にしているのよ。茜お嬢さんを出してくるなんて私はかなり驚いたけど」
飲み終わったコーヒーの缶を両手で握り締めているアイシャの姿がバックミラーを通して誠の視線に入ってくる。
「どう読むよ、第二小隊隊長さん」
要の声。普段こういうときには皮肉が語尾に残るものだが、そこには場を凍らせる真剣さが乗っていた。
「法術適正所有者のデータを知ることが出来、その訓練に必要な場所と人材を所有する組織。しかも、それなりの資金力があるところとなると私は一つしか知らない」
「遼南青銅騎士団」
カウラの言葉をついで出てきたその言葉に誠は驚愕した。
「そんな!嵯峨隊長のお膝元じゃないですか!それに形だけとはいえあそこの団長ってシャムさんで、副長が吉田少佐ですよ!」
誠が声を張り上げるのを見て、要が宥めるようにその肩を押さえた。




