保安隊海へ行く 92
「でも、まとまって空いてるのは三階の西側だけだったと思いますよ。良いんすか?」
携帯電話を取り出しながら島田が確認する。
「こいつの安全のためだ、仕方ねえだろ?」
要がそう言ってうつむく。
「何よ、照れてるの?」
「アイシャ、グーでぶたれたいか?」
向き直ってアイシャにこぶしを見せる要。その有様を見つめながらメールを打ち始める島田。
「明日は掃除で、次の日に荷物搬入ってな日程で良いですよね?」
「私は良いがアイシャが……」
カウラはそう言うと要にヘッドロックされているアイシャを見る。
「無理よ!荷物だって結構あるんだから」
「あのなあ、お前のコレクション全部運べってわけじゃねえんだよ」
そう言って脇に挟んだアイシャの頭をねじり続ける要。
「送信っと」
島田は二人の様子を確認しながら携帯電話の画面を見つめている。
「あのー」
全員が忘れていた声の主に気づいて振り向いた。レベッカが携帯を持って立っている。
「なんだよ、オメエ」
アイシャがギブアップを示すために自分のわき腹を叩いているのを無視しながら要が怒鳴る。怯えながら、ようやく決心が付いたと言うようにレベッカが口を開いた。
「神前さんの機体の写真、撮って良いですか?」
「好きなだけ撮れよ!」
そう言うと要はようやくアイシャを解放した。不安そうな顔から笑顔に変わったレベッカは、早速誠の機体の周りを歩きながら構図を考えているように見えた。
「じゃあ、アタシ等帰るわ」
要はそう言うと誠の手をつかんだ。
「カウラ、車を回せ!」
「わかった」
「じゃあ私はジュース買ってくるわ」
「カウラはメロンソーダだぞ!」
「知ってるわよ!」
誠はこうなったら何を言っても無駄だとあきらめることをこの一月で学んでいた。




