保安隊海へ行く 82
「大丈夫?誠ちゃん」
アイシャはそう言って誠の手を取る。横たわった誠が薄目を開けると夕日の赤に染められて紫色に輝くアイシャの長い髪が見える。
「平気だろ?前だって力を使ったときそのまま気絶したこともあったじゃねえか」
淡々とそう言うと菰田達を押しのけて誠の前の席に陣取る要。
「法術適正がまだなのでしょう。しばらくは私が訓練の相手をさせていただくわ」
「嵯峨茜。貴様が訓練をするというのか?」
カウラがそう言って茜をにらみつける。
「しょうがないでしょう?現在法術特捜の構成員は三人ですわ。とてもこれから多発するであろう事件に対応するには手が足りない状況ですもの。お父様もそのおつもりですわよ」
「オメエ、基地まで着いてくるのかよ」
「仕方ないですわね。ガサツな誰かさんと年中顔を合わせることを想像するとうんざりしますけど」
「何だと!コラ!」
思わず立ち上がり隣のカウラと誠に付き添っているアイシャに取り押さえられる要。
「静かにしないとだめよ!病人がいるんですから!」
リアナの叫び声にうなだれる要。
「それにあなた達では神前君の本来の能力を開発することは出来ませんわ。その資格があるのはお父様か私だけ」
要はその言葉を聞くと腰を落ち着けた。
「出ますよ!座ってくださいね!」
島田の声が響く。バスはゆっくりと動き出した。
「茜さん」
誠は気分がようやく安定して来ていた。
「何かしら?」
「これからもこんなことが続くんですか?」
誠のその言葉に一同は静まり返った。
「そうなるわね。私がお父様からいただいたシミュレータと実機の起動時に発生させた法力の展開に関するデータを見させていただいた限りでは、誠さんの潜在能力の高さは驚異的と言っても過言ではないレベルですわ。それこそ数千万人に一人いるかどうか」
「僕が、ですか」
うなだれる誠。一月前にはただの射撃が下手な幹部候補生に過ぎなかった自分がそんな重要な存在になっていた事実に打ちのめされた。
「そして、その精神的弱さも矯正する必要がありますわね」
大きすぎる自分の力。それに振り回されているようで誠は目をつぶった。
「とりあえず寝ます。着いたら起こしてください」
そう言うと誠は目をつぶった。




