保安隊海へ行く 75
誠は精神を集中した。
「どうする気だ!誠!」
要の叫ぶ先に銀色の空間が現れる。
「そのくらいのことは出来て当然と言うことですか。確かに私の力ではそれを突破することは難しいでしょう。ただ……」
男はそう言うと自らが生成した銀色の空間に飛び込んだ。銀色の空間もまた消える。
「どこ行った!」
銃を手に全方位を警戒する要。
「ここですよ」
「何!」
要の足元の岩が銀色に光りだす。思わず飛びのいて銃を向ける要。誠は一度、銀色の干渉空間を解いた。相手はどこからでも空間を拡げる事が出来る。ヨハンに聞いた限りでは、その空間に他者が侵入すれば要が撃った弾丸同様蒸発することになると言う。
完全に手詰まりだった。
「逃げましょう!西園寺さん」
「馬鹿言うな!逃げれる相手なら最初から逃げてる!銃声で誰かが来れば……」
要は自分の後ろに銀色の空間が生成されようとしたことに気づいて発砲する、スライドがロックされ弾切れを示す。
「弾が無いのですか」
また再び地上に銀色の空間が現れ、その中から赤いアロハシャツの男が現れる。
「これでわかったのではないですか?」
男の顔に勝利を確信した笑みが浮かんだ。
「この糞野郎!きっちり勝負しろ!」
「胡州四大公爵家のお姫様がそんな口をきいてはいけませんねえ」
男は今度は確実に一歩一歩、二人に近づいてきた。
「あなたは何者ですか」
ようやく誠が搾り出せた言葉は、自分でも遅きに失している言葉だった。
「なるほど、こういう時は自分から名乗るのが筋ですね。もっとも私個人の名前などあなた達の関心ではないでしょうが。私は遼州人の権利と自由を守るために活動している団体の構成員の一人です。屈辱の二百年の歴史にピリオドを打つべく立ち上がりました」
「アタシ等も遼州人なんだけどねえ」
もはや言葉で時間を稼ぐしかない、そう判断した要が皮肉めいた笑みを浮かべながらアロハシャツの男に声をかけた。




