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保安隊海へ行く 73

「さてと訪問先は……げ、崎浜だって!タコ中、やるわね」 

 アイシャがその場にいないことを良いことに保安隊副隊長、明石清海あかし きよみ中佐のことをそう呼んでいた。それがおしゃれな街として知られる崎浜氏にいる。あのどんなに暑い日でもど派手な背広を着こんで肩で風を切って歩くサングラスにはげ頭の大男を思い出してあんぐりと口を開けた誠。

「あの面でか?それこそヤクザと間違えられて職務質問でもされるんじゃねえのか?」 

 これも実に失礼なことを言っている要だが、誠もその二メートルを超える頑丈な巨体の持ち主を思い出した。実家が胡州きっての名刹と言うこともあり頭をツルツルに剃り上げている。紫と赤と言ったような派手なワイシャツとネクタイをして出勤している彼の姿を想像すると自然と笑いがこみ上げてきた。

「きっと今頃は洒落たランチも終わって港が見える喫茶店とかにいるんじゃないの?」 

 すっかり観衆と化したリアナが画面を見ながらそう言った。

「お姉さんちょっと待ってくださいよ」 

 そう言うとアイシャは端末を操作して二人の現在の位置を確認する。

「出ましたよ、やっぱりだ。東海亭だって!」 

「似合わねえー!絶対それは無しだろ!」 

 要が叫ぶまでも無く、オタク知識は満載でも世事に疎い誠ですら知っている喫茶店の名前が出てきてそれを想像してしまった。

「ガンバだよ!タコ中!」 

 聞こえるはずも無いのに端末に向かって応援するシャム。

「明石の旦那。それ定番過ぎますよ」 

 少しあきれ気味に画面を見つめる小夏。

「おい、ちょっと」 

 そんな一同の盛り上がりについていけないとでも言うように、要が席を抜けて誠の肩を叩いた。立ち上がった誠を見ると、要はバッグからビーチサンダルを取り出し、シャツを着た。

「少し歩こうか」 

 誠は何もわからないまま言われるままに立ち上がった。今度は先ほど向かった岩場とは反対側に歩く。観光客は東都に帰る時間なのだろう、一部がすでに片付けの準備をしていた。

「あいつ等、野暮なことするなって叔父貴に言われてるってのに」 

 要の口元に笑みが浮かぶ。誠もそのサングラスの下にある目を想像して微笑んだ。しかし、松の並木が続く遊歩道に入ったところで要は不意に立ち止まると小声でささやく。

「誠、気づいてるか?」 

 不安に襲われる誠。

「気づくって……つけられているんですか?」 

 先月の近藤事件の発端も、自分が誘拐されたところから始まっただけあって、誠は辺りの気配を探った。見る限りには誰もいない。しかし、以前、菱川重工の生協で感じた時と同じような緊張感が流れていた。

「素人じゃねえ、かなりのスキルだ。こっちが気づいたら不意に気配が消えやがった。どうする?」 

 要がサングラス越しに誠を見つめる。その口元が笑っているのは、いつものことだと諦めた。

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