保安隊海へ行く 69
とりあえず海水に頭から入り、足をばたばたさせる誠。次第にその体は浮力に打ち勝って体が沈み始める。息が苦しくなった誠はとりあえず立ち上がった。起き上がった誠の前にあきれているカウラの顔があった。完全に呆れると言うところを通り過ぎて表情が死んでいた。
「そんな顔されても仕方が無いじゃないですか。人には向き不向きがあるわけで……」
「神前……君。もう少し体の力を抜いてとにかく浮くことからはじめましょう」
突然、心を決めたとでも言うように強い口調で話し始めたレベッカを見て驚く二人。
「そうだな、誠。とりあえず浮くだけでいい。やってみろ」
カウラはレベッカのあとをついで誠に指示する。
「浮くだけですか、バタ足とかは……」
「しなくて良い、浮くだけだ」
カウラのその言葉でとりあえず誠はまた海に入った。
動くなと言われても水に入ること自体を不自然に感じている誠の体に力が入る。力を抜けば浮くとは何度も言われてきたことだが、そう簡単に出来るものでもなく、次第に体が沈み始めたところで息が切れてまた立ち上がった。
「少し良くなりましたよ。それじゃあ私が手を引きますから今度は進んでみましょう」
レベッカが手を差し伸べてくる。これまでのシャイなレベッカを見慣れていたカウラはただ呆然と見つめていた。
「じゃあお願いします」
誠はただ流されるままにレベッカの手を握りまた水に入る。手で支えてもらっていると言うこともあり、力はそれほど入っていなかったようで、先ほどのように沈むことも無くそのまま息が続かなくなるまで水上を移動し続ける誠。
「良いじゃないですか、神前君。その息が切れたところで頭を水の上に出すんですよ」
「そうですか、本当に力が入るかどうかで浮くかどうかも決まるんですね」
これまで怯えたような、恥ずかしがるような顔しか見せなかったレベッカが笑っている。誠はつられて微笑んでいた。
「よう!楽しそうじゃねえか!」
背中の方でする声に思わず顔が凍りつく誠。
「西園寺さん……」
振り返ると浮き輪を持った要がこめかみを引きつらせて立っている。
「西園寺さん、神前君少しは浮くようになったんですよ」
レベッカのその言葉にさらに要の表情は曇る。
「ああ、オメエ等好きにしてな。アタシはどうせ泳げはしないんだから」
そう言うと要は浮き輪を誠に投げつけて浜辺へと向かった。




