保安隊海へ行く 68
「あのー私はどうすれば?」
急に声がしたので驚いて振り向く要と誠。その視線の先には申し訳なさそうに立っているレベッカがいた。
「そうだ!レベッカさん、アメリカ海軍出身ってことは泳げるわよね?じゃあカウラちゃんとレベッカさんで誠ちゃんに教えてあげて、私とアイシャちゃんで要ちゃんに教えましょう」
「あのー、お姉さん。アタシは教えるとかそう言う問題じゃ無くって……」
「要ちゃん、いい物があるのよ」
そう言うとアイシャはシャムが残していった浮き輪を要にかぶせる。要の額から湯気でも出そうな雰囲気。誠はすぐにでも逃げ出したい衝動に駆られていた。
「おい、アイシャ。やっぱ埋める!」
逃げ出すアイシャに立ち上がろうとした要だが、砂に足を取られてそのまま顔面から砂浜に突っ込む。
「あら?砂にも潜っちゃうのかしら?」
「このアマ!」
アイシャを追って走り出す要。
「あいつは放っておこう。行くぞ誠」
そういつもの通り淡々と言うと、カウラはレベッカと誠を連れて海に向かった。
「神前曹長は泳げないんですか?」
まるで不思議な生き物でも見るようなレベッカの瞳に見られて、誠は思わず目を逸らしてしまった。
「泳げないと言うわけじゃなくて……息つぎが出来ないだけ……」
「それを泳げないと言うんだ」
波打ち際で中腰になって波を体に浴びせながらカウラが言う。
「とりあえず浅瀬でバタ足から行くぞ」
レベッカに手を取られて誠はそのままカウラの導くまま海の中に入る。
「大丈夫ですか?急に深くなったりしてないですよね」
誠は水の中で次第に恐怖が広がっていくのを感じていた。
「安心しろ、これだけ人がいればおぼれても何とかなる」
誠の前を浮き輪をつけた小学生の女の子が父親に引かれて泳いでいる。とりあえず腰より少し深いくらいのところまで来ると、カウラは向き直った。その視線がレベッカに引っ張られている誠の左手に向いたとき、少しきつくなったのを感じて思わず手を離す誠。
「それでは一度泳いでみろ」
「手を引いてくれるとか……」
「甘えるな!」
レベッカの胸と誠の顔を往復するカウラの視線。それを感じて仕方なく誠は水の中に頭から入った。




