保安隊海へ行く 57
「酷いよー!要ちゃん」
着替えてパラソルの元で海を見ている要達のところに戻ってきた誠が見たのは、首から下を砂に埋められてわめいているシャムと小夏の姿だった。
「西園寺さんあれはちょっと……」
誠は頭を掻きながら首を振って助けを求めている二人を指差す。
「なにか?誠。お前が代わるか?」
そう言うとにやりと笑ってサングラスを下ろす要。誠は照れ笑いを浮かべながら視線を波打ち際に転じる。自分でも地味とわかるトランクスの水着を要が一瞥して舌打ちをするのが非常にシュールだった。島田、サラ、パーラ、キム、エダ。波打ち際で海水を掛け合うといういかにもほほえましい光景が展開している。
「そういえば他の面子は……」
「カウラが先頭になって……ほら、沖のここからも見えるブイがあるだろ?」
「もしかしてあそこまで泳いでるんですか?」
確かに視線の先に赤いブイが浮いている。三百メートルは離れていることだろう。
「でもよくアイシャさんが付き合いましたね」
「ああ、アイシャなら女将とお姉さん夫妻、それにあのレベッカとかいう奴と一緒に昼飯の準備してるよ」
「なるほど」
いかにもアイシャらしいと相打ちを打つ誠はぼんやり波打ち際で戯れる島田達を見ていた。
「誠ちゃん助けてー」
またシャムが叫ぶ。隣の小夏は顔色が変わり始めているが、意地でも要には助けを求めまいと頬を膨らませて黙り込んでいる。
「西園寺さん、いくらなんでも……」
「そうだな。ここでいつまでも見られちゃたまらねえや。誠、そこにスコップあるから掘り出してやれ」
そこにはどう考えてもこのことをする予定で持ってきたとしか思えない大きなスコップが立てかけてある。誠はとりあえず小夏から掘り出しにかかる。
「兄貴、すまねえ」
小夏はそう言いながらもぞもぞと動いて砂から出ようとする。
「苦しくない?」
かなり徹底して踏み固められている砂の様子を見て誠が話しかけた。
「余裕っすよ」
明らかに血流が止まっていたのがわかるほどふらふらと立ち上がる小夏。
「ジャリ。強がっても何にもならねえぞ」
サングラスをかけて日向で横になっている要がつぶやく。
「早くこっちもお願い!」
隣のシャムが叫んでいる。仕方なく誠は更に掘り進めた。




