保安隊海へ行く 56
「西園寺さん、いつからいました?」
自分で言葉を確かめながら誠が言葉を発する。額を走る汗は暑さがもたらすものでは無かった。
「オメエがあのおっぱいお化けと腕組んで歩いてる所くらいからか」
視線をカウラ達に投げる誠。四人とも誠がそこにいることを無視してカキ氷を食べている。
「怒ってますか?」
誠は恐る恐るたずねる。
「いや、別に怒る必要のあることなのか?所詮お前はアタシの部下の一人に過ぎないし」
明らかに感情の載っていない言葉。そんな要を見つめる誠は手のひらに汗がにじんでくるのを感じていた。
「言っちゃったー。ご愁傷様ねえ誠ちゃん」
わざと誠達に聞こえるように話すアイシャ。要がそのまま無視して誠から離れようとしたところで、誠の視界から要が消えた。
「スーパーキックだ!見たか!悪者め!」
代わってそこにはシャムがいた。誠が視線を落とすと、顔面から砂に突っ込んだ要の姿が見える。
「外道!参ったか!」
小夏の叫び声。しかし、誠にとってはその姿が衝撃的であった。
「シャム先輩。その水着は……」
「そう!海と言えば、スクール水着!当然胸には白い名前コーナーをつけて、当然黄色いキャップは忘れずに!」
「神前の兄貴!アタシもおそろいですよ!」
『3−2 なんばるげにあ』、『2−3 家村』。胸に踊る手書きのネーム。
「やっぱりシャム先輩が年上の設定なんですね」
あきれ果てていた誠だが、とりあえずそう言ってみる。
「違うよ!誠ちゃん。アタシは小学生の……」
シャムの姿がまた消えて要の水着が飛び上がってきた。
「いつまで乗ってんだ!このアホ餓鬼が!」
跳ね飛ばされたシャムだが、受身を取ってすばやく体勢を整える。要は顔から胸にかけて付いた砂を払いながら、シャムをにらみつけた。
「人に砂浜とキスさせたんだ!ただで帰れると思うなよ」
「師匠!どうしましょう。外道はまだ健在ですよ」
「そう言う時はね!小夏」
シャムは浮き輪を手にじっと要と相対する。
「逃げるのよ!」
ちょこまかと人ごみの中に逃げ込んでいく二人。
「待てよ!こら!」
条件反射のようにそれを追い始める要。誠は胸をなでおろすと、海の家の更衣室に向かった。




