保安隊海へ行く 55
「うるせえ!魔法使い!そんなだから彼女も出来ねえんだよ!」
島田が菰田に吐き捨てたタンカ。
「馬鹿野郎!俺はまだ30超えてねえんだ!」
「あと四年だろ?」
島田が優勢に口げんかを続ける。二人が犬猿の仲だと分かっている部隊員達は静かに動静を見守っている。
「誠君。はい、このバッグでしょ?」
笑いながら小夏の母、家村春子が誠にバッグを手渡した。
「大丈夫ですか?あの二人」
誠はやんやと煽り立てる隊員達を見守っているただ一人冷静そうな春子にたずねる。背中にこの喧嘩に怯えて誠にしがみついているレベッカの胸が当たる。
「大丈夫よ。二人とも手を出したらカウラさんとリアナさんにしめられるの分かってるから。どうせ口だけよ」
春子は落ち着いていた。東都の暴力団の幹部の愛人だったと言う過去のある彼女から見れば、島田と菰田の言い争いなど子供の喧嘩にしか見えないんだろう。誠はそう思いながらバッグを抱えて近くにあった海の家へと歩き始めた。
そこで突然左腕にしがみついているレベッカ。
「あのー」
立ち止まって振り向く誠。
「はい?」
レベッカが不思議そうに答える。
「これから着替えるんで、一人にしてもらえますか?」
自分の手と誠の顔を何度か見やったあと、顔を赤くして手を離すレベッカ。
「すいません!それでは!」
慌てふためくように戻っていく。
「神前君!」
名前を呼ばれて振り向けば、そこにはカキ氷を食べているリアナの姿があった。隣では健一がリアナと同じ苺金時を、カウラはメロン、アイシャはブルーハワイを食べていた。
「見てました?」
「人気者だな」
「これなんてエロゲ?」
カウラ、アイシャは冷たく誠を一瞥すると、カキ氷を食べ続ける。
「違うんです!」
叫ぶ誠。
『何が?』
夫婦でシンクロして誠を見つめてくる鈴木夫妻。
「言い訳はいい」
冷静に答えるカウラ。こめかみの辺りに青い筋が浮かんでいてもおかしくないような形相だった。
「誠ちゃんはこれからフラグクラッシャーと呼びましょうよ」
明るく話す分だけ恐ろしさが増すアイシャ。
「だから!」
「だからなんだよ」
背中からの声に誠が振り向くとその先には誠が選んだことになっているきわどい水着を着た要が立っていた。




