保安隊海へ行く 58
「じゃあ行きますよ」
誠はそう言うとシャムを掘り出し始める。明らかに小夏よりは元気だがそれでも頬を膨らませて要をにらみつけているシャム。
「どうだ?気分は」
にやけた笑いを浮かべてその様子を眺める要。
「苦しい……苦しいよう」
シャムはわざとらしくそう言う。明らかに顔色が変わりかけていた小夏に比べればかなり元気なシャム。
「師匠!もう少しですよ」
そう言いながら隣に立っているだけで手伝うつもりの無い小夏。日差しが照りつけている。海に来て最初にしたことが穴掘りとは、そう思いながらも掘り続ける誠。
「大丈夫!あとは……」
膝の辺りまで掘り進んだところでシャムが砂から飛び出す。そして手にした砂の玉を要に投げつけた。
「何しやがる!」
そう言って飛び起きる要だが、シャムと小夏は浮き輪をつかんで海のほうに駆け出した。
「あの馬鹿、いつかシメる」
そう言うと再び砂浜に横になる要。
「いい日和ですねえ」
誠は空を見上げた。どこまでも空は澄み切っている。
「日ごろの行いがいい証拠だろ?」
「お前が言える台詞ではないな」
誠が振り向くと緑の髪から海水を滴らせて立っているカウラがいた。
「お疲れ様です、カウラさん」
沖に浮かぶブイを眺めてもう一度カウラを見上げる。息を切らすわけでもなく平然とした態度のカウラ。
「ああ、どいつも日ごろの鍛錬が甘いというところか」
そう言うと再び沖を振り返る。潮は引き潮。海水浴客の向こうに点々と人間の頭が浮かんでいる。
「凄いですね、カウラさん」
正直な気持ちを誠は口にした。
「ただあいつ等がたるんでいるだけだ。それじゃあちょっとお姉さん達を手伝ってくる」
「嘘付け!どうせつまみ食いにでも行くんだろ?」
要は口元をゆがめてカウラを追い出す。
「要さんは……」
言いかけて止まる誠。要は子供の頃の祖父を狙った爆弾テロで、脊髄と脳以外はほとんどが有機機械や有機デバイスで出来たサイボーグである。当然のことながら水に浮かぶはずも無い。
「なんだ?アタシは荷物を見てるから泳いできたらどうだ」
海を眺めながら要は寝そべったままだった。




