保安隊海へ行く 59
誠はなんとなくその場を離れることが出来なくて、要の隣に座った。
「せっかく来たんだ。それにカウラの奴の提案だろ?アタシのことは気にするなよ」
その言葉に要の方を見つめた誠。満足げに海を眺めている要。
「なんか変なこと言ってるか?」
すこし頬を赤らめながら要はサングラスをかけ直す。誠はそのまま視線を要が見つめている海に移した。島田達はビーチボールでバレーボールの真似事をしている。シャムと小夏は浮き輪につかまって波の間をさまよっている。
ようやく菰田が砂浜にたどり着いた。精も根も尽き果てたと言うように波打ち際に倒れこむ。そしてそれに続いた連中も浜辺にたどり着くと同時に倒れこんでいた。
「平和だねえ」
要はそう言うとタバコを取り出した。
「ちょっとそれは……」
周りの目を気にする誠だが、要にそんなことが通じるわけも無い。
「ちゃんと携帯灰皿持ってるよ、叔父貴じゃあるまいし投げ捨てたりしねえ」
そう言ってタバコを吸い始める要。空をカモメが舞っている。
「なんだかいいですねえ」
そう言って要の顔を見た誠だが、サングラス越しにも少し目つきが鋭くなったような気がした。戦闘中の要の独特な気配がにじみ出ている。
「おい、誠。お姉さんとカウラとアイシャ呼んで来い、仕事の話だ」
真剣なその言葉に、誠は起き上がった。
「どうしたんです?」
要の表情で彼女の脳に直結した通信システムが起動していることがすぐにわかる。
「公安が動いた。そう言えば分かる」
要のその言葉に砂浜の切れかけたところにあるバーベキュー施設に向かい走る誠。保安隊で『公安』と言えば安城秀美局長貴下の遼州同盟司法機関特務実働部隊のことだ。やり口の残忍さで公安配属になるところを保安隊勤務となった要はネットワークリンクしている有機コンピュータの脳のおかげで、公安や所轄からの情報を常にリアルタイムで知ることが出来る状況にある。
誠は人を避けながら走って水場で野菜の下ごしらえをしているリアナの姿が目に入った。
「すいません!」
「あら、神前君。どうしたの?」
半分ほど切り終わったたまねぎを前に、リアナが振り返る。
「あわててるわね。水でも飲む?」
アイシャはそう言うとコップに水を汲んで誠の差し出した。一息にそれを飲むと誠は汗を拭った。カウラは健一とコンロの火をおこしている。
「西園寺さんが呼んでます。公安が動いたそうです」
その言葉に緊張が走る。
「端末は荷物置き場にあったわね。アイシャちゃん、カウラちゃん。行くわよ」
リアナの声で木炭をダンボールで煽っていたカウラが向かってくる。アイシャも真剣な顔をして作業を見守っていたレベッカに仕事を押し付けて歩いてきた。
「因果な商売ね。こんな日でも仕事のことが頭を離れないなんて」
リアナはそう言うと早足で要の寝ている場所に向かった。




