保安隊海へ行く 54
「んだ。暑いなあ。やっぱ島田辺りに押しつけりゃ良かったかな」
焼けたアスファルトを歩きながら要は独り言を繰り返す。
「やっぱり僕が持ちましょうか?」
気を利かせた誠だが要は首を横に振る。
「言い出したのはアタシだ、もうすぐだから持ってくよ」
重さよりも汗を拭えないことが誠にとっては苦痛だった。容赦なく額を流れる汗は目に入り込み、視界をぼやけさせる。
「ちょっと休憩」
要がそう言って抱えていたビールの箱を置いた。付き従うようにその横に箱を置いた誠はズボンからハンカチを取り出して汗を拭うが、あっという間にハンカチは絞れるほどに汗を吸い取った。
「遅いよ!二人とも!」
呆然と二人して休んでいたところに現れたのはピンク色のワンピースの水着姿のサラ、紫の際どいビキニのパーラ、そしてなぜか胸を誇張するような白地に赤いラインの入った大胆な水着を着たレベッカまでがそこにいた。要は彼女の存在に気づくとサングラス越しに舐めるようにその全身を眺める。
「おい、サラ。なんでこいつがいるんだ?」
不機嫌に指を刺す要。
「そんな言い方無いじゃないの!」
サラは口を尖らせて抗議する。レベッカは恐れをなしてパーラの後ろに隠れた。
「おいサラ。それ持っていけ。アタシも着替えるわ」
そう言うとそのまま四人を置いて歩き出す要。
「そんなの聞いてないよ!」
サラは叫ぶが軽く手を振って振り向くことも無く歩いていく要。
「僕が二つ持ちますから、あと一箱は……」
「いいのよ神前君。あなたも着替えてらっしゃいよ。レベッカさん。荷物置き場まで誠君を案内してもらえるかしら」
パーラのその言葉にようやく誠の前に出てきたレベッカ。肩からタオルでごまかしているものの、どうしても誠の視線はその胸に行った。
「じゃあ神前君。こっちよ」
案内すると言うにはか細すぎる声で誠の前を行くレベッカ。
「シンプソン中尉……」
誠が声をかけるとビクンと震えてから振り返る。
「あの……レベッカの方が呼ばれなれてるから……」
相変わらず消え入りそうな声で答えるレベッカ。
「じゃあレベッカさん。技術章を付けてらしたと言うことは、配属は技術部ですか?」
「ええ、M10の運用経験者は保安隊にはいらっしゃらないそうですから私が担当することになります」
相変わらず小声でささやくように話す。
「じゃあ島田先輩とかの上司になるんですか?」
「島田さんは先任士官ですから、階級は私の方が上ですが私は副班長を拝命することになります」
小声で恐る恐る話すレベッカ。誠も彼女の怯えているような様子に何を話していいのか迷っているうちに、彼女は堤防の階段を登り、菰田と島田が怒鳴りあっている海岸へとたどり着いた。




