保安隊海へ行く 53
「ああ誠、冷えてるビール二缶持って来い」
要はレジを操作している店員を見ながらそう言った。
「銘柄は……」
奥に向かおうとした誠だが、振り返って思い出したように尋ねた。
「何でもいいぜ。ただ発泡酒はやめろ、ちゃんとしたビールな」
そう言われて冷蔵庫に向かう誠。とりあえずあまさき屋で出しているのと同じ銘柄の缶ビールを二つ持って要のところまで行く。
「ありがとな。店員!こいつも頼むわ」
追加の商品にあからさまに嫌な顔をする店員。いつもならサングラスをはずして眼を飛ばすくらいのことをする要だが、特に気にすることも無く会計を済ませる。
「誠。アイス食ってるアホの分も頼むわ」
要はそう言うと軽々と二箱のビールを肩に担ぐと、あきれながら見つめている店員や周りの客の視線を無視して表に出る。あわてて誠もその後に続く。
店先でアイスを食べているシャムと小夏の前にどっかと二箱のビールを置くと、誠が持っていたビールを受け取って一気にのどに注ぎ込む要。
「やっぱ夏はこれだぜ」
そう言って簡単にビールの缶を握りつぶす要。
「もう飲んだんですか?」
まだプルタブを開けたばかりの誠が問いかける。
「ビールはのど越しで味わうもんだ。シャム、その目は飲みたいって顔だな?」
「うー……」
シャムの目はビールを飲み始めた誠を見つめている。
「どうせ身分証はバッグの中だから買えないんだろ?ざまあみろ」
シャムが膨れている。どう見ても小学生な彼女。恨みがましく要を見ている。
「おい、誠。先に行くからゆっくり飲んでてくれよ。とりあえず一箱シャムの分だ」
「誠ちゃんこれ持ってくね!」
そう言うとビールを飲み始めた誠から、シャムが一箱ビールを軽く肩に乗っけた。
「じゃあ先行くから!」
シャムはそう言うと誠からつまみ類を受け取った小夏と一緒に恥ずかしいのぼりを目指した。
「しかし、元気ですねえ。ナンバルゲニア中尉」
「まあ他にとりえが無いからな。それより気をつけろよ」
少しうつむき加減に要がサングラスをはずす。真剣なときの彼女らしい鉛のような瞳がそこにあった。
「今日のロナルドとか言う特務大尉殿だ。前にも言ったろ、アメリカの一部軍内部の勢力は貴様の身柄の確保を目的にして動いている。叔父貴が認めたくらいだから海軍はその勢力とは今のところ接点は無いようだがな。だが、あくまでそれは今のところだ」
誠は残ったビールを一気に流し込むようにして飲むと、缶をゴミ箱に捨てた。
「局面によっては敵に回ると言うことですか?」
「分かりやすく言えばそうだな。あのロナルドって男は特殊任務の荒事専門部隊の出なのは間違いない。それこそ、そう言う指示が上から降りれば間違いなくやる」
それだけ言うと、要は再びサングラスをかけた。
「まあそれぐらいにして……今日は仕事の話は止めようや。とっとと付いて来いよ!」
そう言うと軽々と二箱のビールを抱えて、早足で要は歩き始めた。




