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保安隊海へ行く 39

 そんな彼らの意思とはかかわり無く、料理が並べられ、饗宴は続いた。しかし、誠にはどうもしっくりしなかった。要はさすがに手馴れた調子で黙々と食事をし、それなりに楽しんでいるように見えた。カウラも誠と同じくこのような席には似つかわしくない自分に気がついたようで、言葉も出ずに食事を続けている。アイシャは要に対抗心を持っているのか、要の作法をワンテンポ遅れて真似しながらフォークとナイフを動かしている。

「誰か話せよ。つまんねえじゃねえか?」 

 要は言葉ではいつもの調子に戻っているが、その優雅で手馴れた所作はいつもの彼女とは明らかに別人のそれのように見えて、誠は呆けながら見とれていた。

「なんだ、神前。アタシの顔になんかついてるか?」 

 珍しそうな誠の視線に気づいた要から目を反らす。それを見ると静かにナイフとフォークを動かして食事を続ける要。

「気味が悪いんじゃないの?アンタがそうやってお上品に食事をしている様が!」 

 アイシャがわざと嫌味をこめて要に食って掛かる。

「そんなこと無いですよ!楽しんでますよ、なんと言ってもこの鯛のマリネとか……」 

 そう言って誠はかすかにレモンの香る鯛のマリネを口に放り込んだ。味は悪くない。それ以上に誠は要の機嫌が気になっていた。

「それならいいがな」 

 要はそう言うと隣の席の面々のほうを見た。島田はサラやエダ、リアナに向かって法螺話を続けていた。キムは時々毒のある相槌を打ち、そのたびに鈴木夫妻は楽しげに笑っている。

「食事はああいう風にするもんだぜ。誠、アニメの話でもいいからなんか気の聞いたこと言えよ」 

 要のそんな言葉に少しばかり寂しげなところが見えて、誠は胸が詰まった。

「そんな急に言われても……」 

「そう言えば今週の『魔法少女エリー スマッシュ!』録画予約してきたの?」 

 気を利かせてアイシャが話題を振ってくれた。ようやく苦行のようなナイフとフォークを使っての食事に飽きていた誠はすぐにそれに食いついた。

「当たり前じゃないですか。それに明日発売のアニメ雑誌は全部予約してきましたから」 

 そう言ってちらりと要の表情を見る誠。自分の付いていけない話に明らかに不機嫌な様子が見て取れた。アイシャもそれを読み取ってか、少しばかり白々しい笑いを残すと、皿に残っていた千切りにされた野菜を口に運んだ。

「良かったじゃねえか。帰ったらアタシに見せろよ」 

 要は静かにそう言うとグラスに残った白ワインを飲み干した。そしてそのまま機先を制してアイシャをにらみつける。突っ込みを入れようとしてタイミングを逸したアイシャはそのまま添え物の野菜を口に運んでごまかした。

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