保安隊海へ行く 40
デザートの皿がテーブルに並んだ時にはすでに誠とカウラは疲れきっていた。静々とスプーンを使う要の機嫌を損ねないよう、ゆっくり、丁寧に指先に全神経を集中してライムの香りがたなびくアイスクリームを食べる二人。
「あーあ。やっぱりシャムちゃん達のとこ行けばよかったかしら」
そうつぶやいたアイシャを要がにらんでいる。
「奴等は下の宴会場でドンちゃん騒ぎか?明日の昼も食べるんだからだから飽きるんじゃないか?」
彼女なりの気の使い方とでも言うような調子でアイシャを宥めるカウラ。
「神前。お前はどうなんだ」
うつむき加減に低い声で要はそう言った。どこかさびしげに見える要の面差しに誠の胸が締め付けられる。
「僕はこういうの初めてですから、いろいろ参考になりましたよ」
「そう言うこと聞いてんじゃねえよ。楽しいかどうかって……」
下げられる皿。そしてしばらく沈黙が支配することになる。
「そんなの聞くまでも無いんじゃないの?」
食後のコーヒー。静かにそれを口に運びながらアイシャが呟く。その挑発的な言葉に、要の肩が震えている。
『これは切れるぞ』
誠はそう思った。どう切れるか、どこにはけ口が向かうか、それは考えるまでも無く自分だろう。覚悟を決めて顔を上げた誠だったが、その視線の正面にはいつの間にかリアナが立っていた。
「ありがとう!要ちゃん!本当においしかったわ!」
そう言って要の手をとりにこやかに笑うリアナ。要は何が起こったかわからないとでも言うように、ぼんやりとリアナのきらきら輝いている青い瞳を見つめていた。
「そうですか……甲斐がありましたよ」
とりあえず調子を合わせようと口にした言葉に満足げに頷くリアナ。
「でもワインってこんなにおいしかったのねえ。それにお料理の魚も新鮮で最高!」
「それは良かったですねえ」
ただあまりに正直に反応しているリアナに戸惑う要。あの青い澄んだ瞳で見られるとどうにも調子が狂うのは隊員すべてに言えることである。
なんとか落雷は防げた。誠がため息をついたとき、要が不意に立ち上がった。
「島田、キム。こいつ借りるぜ」
そう言うと要は飲みかけのコーヒーを見つめている誠の横に立ち、肩に手を当てた。
「侘びだ、付き合え」
そう言うと有無を言わさず誠を立たせて、そのまま静かに席を立った。カウラとアイシャは突然のことに呆然として宴席に取り残された。




