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保安隊海へ行く 37

 廊下を出てエレベータルームに向かう誠。

「桔梗の間か」 

 そう独り言を言って上昇のボタンを押す。静かに開くエレベータの扉。誠は乗り込んで五階のボタンを押した。上昇をはじめるエレベータ。四階を過ぎたところで周りの壁が途切れ展望が開ける。海岸べりに開ける視界の下にはホテルや土産物屋の明かりが列を成して広がる。まだかすかに残る西日は山々の陰をオレンジ色に染め上げていた。

 誠はエレベータのドアが開くのを確認すると、目の前に大きな扉が目に入ってきた。『桔梗の間』と言う札が見える。誠はしばらく着ている儀礼服を確認した後、再び札を見つめた。

「ここで本当にいいのかな」 

 そう言って扉を開く。正直なところ誠はその広さの割りに二つしかテーブルが無い状況に困惑していた。青いドレスの女性が手を上げている。よく見るとそれは要だった。誠は近づくたびに何度と無く、それが要であると言う事実を受け入れる準備を始めた。

 白銀のティアラに光るダイヤモンドの輝き。胸の首飾りは大きなエメラルドが五つ、静かに胸元を飾っていた。両手の白い手袋は絹の感触を伝えている。青いドレスはひときわ輝くよう、銀の糸で刺繍が施されている。

「神前曹長。ご苦労です」 

 いつもの暴力上司とは思えない繊細な声で語りかける要。驚きに身動きが取れなくなる。だが明らかにそのタレ目の持ち主が要である事実は覆せるものではなかった。

「レディーを待たせるなんて、マナー違反よ」 

 その隣で髪の色に合わせた紺色の落ち着いたドレスのアイシャ。彼女はそう言うと自分の隣に座るカウラに目をやる。カウラも誠と同じく、東和陸軍の儀仗服に身を包んでいた。

 もうひとつのテーブルには島田、サラ、キム、エダ、そして鈴木夫妻が腰をかけて誠のほうを見つめていた。

「あのー、他の方々は?」 

 誠がそう言うと要がいつもと明らかに違う、まるでこれまでの要と別人のように穏やかに話し始めた。

「ああ、ナンバルゲニアさん達ですわね。彼女達はこういう硬い席は苦手だと言うことで地下の宴会場で楽しんでいらっしゃいますわ」 

 アイシャ、カウラ。二人は明らかに笑いをこらえるように肩を震わせている。確かにいつもと同じ顔がまるで正反対の言葉遣いをしている様は滑稽に過ぎた。思わず誠も頬が緩みかける。

「TPOって奴だ。笑うんじゃねえ」 

 声のトーンを落とした要がいつもの下卑た笑いを口元に浮かべて二人をにらみつけると、その震えも終わった。

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