保安隊海へ行く 27
続く松の並木。瓦屋根の張り出す土産屋が続く海べりの道を抜けてバスは進む。誠は逆流する胃液を腹の中に圧し戻した。
「だらしねえなあ!もうすぐ着くんだから大丈夫だよ」
要は青ざめた誠を見ながらジンの瓶をあおる。
出発してすぐにリアナのリサイタルが始まり、その電波演歌で頭をやられないように酒の瓶が車内に回された。冊子を作ってまで綱紀粛正につとめたアイシャもさすがに参ってビールを飲み始めると、バスの中はもはや無法地帯状態になっていた。
昼飯時には、しらふなのは運転していた島田、黙ってウーロン茶を飲みながらヘッドホンでラジオを聴いていたカウラ、そして家村親子だけだった。ドライブインで午後はカウラが運転を続けている。島田は隣で電波演歌を聞かされ続けて後ろの席で倒れていた。
「もうすぐ着くから大丈夫よ」
脂汗を流している誠に声をかけるアイシャ。繁華街を抜けたところで街道を外れ、バスは山道に入り込んだ。
ブロック作りの道のもたらす振動で、誠はまた胃袋がひっくり返るような感覚に包まれる。
「吐く時はこれにお願いね」
パーラがビニール袋を誠に手渡す。
「大丈夫ですよ。これくらい」
とりあえず強がっている誠だが、口の中は胃液の酸が充満し、舌が苦味で一杯になる。
「見えたぞ!」
よたよたと起き上がった島田が外を指差す。瀟洒な建物が誠の目に入った。
「結構、凄いホテルですね」
「まあな。親父がここのオーナーの知り合いで、結構無理が聞くからな」
要はポツリと呟いた。
「いつも要のおかげで宿の心配しなくて済むしね」
アイシャが立ち上がる。バスが静かに正面玄関に乗り入れた。
「ハイ!到着」
そのアイシャの言葉で半分死にかけていた乗員は息を吹き返した。シャムと小夏が素早くバスから飛び降りる。誠もようやく振動が収まった事もあって、ゆっくり立ち上がると通路を歩き始めた。
「肩貸そうか?」
要がそう言うが無理やり余裕の笑みを作った誠はそのまま歩き続ける。
「お疲れ様です、カウラさん」
「お前よりはましだ」
同情するような目で誠を眺めてカウラはそう言った。




