保安隊海へ行く 164
ハンガーの前ではどこに隠していたのか聞きたくなるほどのバーベキューコンロが並んでいた。それに木炭をくべ、発火剤を撒き、火をつけて回っているのは島田だった。
「おう、ついたか」
目の下にクマを作ってふらふらと火をつけて回る島田。顔には血の気が無い。
「大丈夫なのか?そのまま放火とかしないでくれよ」
「西園寺さん大丈夫ですよ。火をつけ終わったら仮眠を取らせてもらうつもりですから」
そんな島田の笑いも、どこか引きつって見える。
「じゃあがんばれや」
それだけ言って立ち去る要に誠達はついていく。その先のハンガーには新しいアサルト・モジュールM10が並んでいる。
「へえ、結構良い感じの機体じゃねえか」
「俺にとっても都合の良い機体だな」
突然の男の声に驚いて飛びのく要。そこでは管理部長、アブドゥール・シャー・シンが牛刀を研いでいた。
「やっぱり牛を潰すのはシンの旦那か」
「まあな、俺はこの部隊では自分で潰した肉しか食えないからな」
敬虔なイスラム教徒である彼は、イスラムの法に則って処理した肉しか口にしない。
「総力戦が発生しても十分にコスト的に間に合い、さらに稼働率を高めるために部品に必要とされる精度もかなり妥協が可能な機体。予算の請求もこう言う機体ばかりだと楽なんだけどな」
シンはそれだけ言うと、また牛刀を研ぐ作業に戻った。
「またバーベキューですか?」
「そりゃそうよ。誠ちゃんだけ特別扱いってわけには行かないでしょ」
そう言うとアイシャはそのまま事務所につながる階段を上り始める。
「おう、おはようさん」
大荷物を抱えた明石清海中佐が立っている。
「その様子、出張ですね」
「まあな。法術対策部隊の総会ってわけだ。西園寺、ジュネーブって行ったことあるか?」
「スイスは機会がねえけど、まあ会議を開くには向いてるところだって聞いてるぜ」
「そうか。ワシはあんま知らんからどないすれば良いか……」
明石はそう言うと剃りあげた頭を掻く。
「まあ、地球の連中に舐められないようにしてくれば良いんじゃねえの?」
それだけ言うと要は実働部隊事務所のドアを開けた。




