保安隊海へ行く 165
「少し遅いのでなくて?」
実働部隊控え室では、湯のみを手にしてくつろいでいる茜がいた。当然、彼女は紺が基調の東都警察の制服を着ている。
「さっさと着替えて来いってわけか?」
「そうね。そのまま第一会議室に集合していただければ助かりますわ」
そう言うと茜はぼんやりと立ち尽くしている誠達の横をすり抜け、ハンガーの方に向かって消えていった。
「私も?」
アイシャの言葉に誠達は頷く。そのまま四人は奥へと進んでいく。
「おはよう!誠君、人気者ね」
そう言ってロッカールームから歩いてきたのはリアナだった。
「急いで着替えた方が良いわよ。茜さんは怒ると怖いんでしょ?」
「まあな。表には出ないがかなり黒くなるからな」
「ダーク茜」
要とアイシャが顔を見合わせて笑う。カウラは二人の肩を叩いた。その視線の先にはハンガーに向かったはずの茜が、眉を引きつらせながら誠達を見つめていた。
「じゃあ、第一会議室で!」
要はそう言うと奥の女子ロッカー室へ駆け込む。カウラとアイシャもその後を追う。
「誠君も急いでね」
そう言うとウィンクをして去っていくリアナ。
誠は急いで男子ロッカー室に入る。冷房の効かないこの部屋の熱気と、汗がしみこんだすえた匂い。誠は自分のロッカーの前で東和陸軍と同形の保安隊夏季勤務服に着替える。かなり慣れた動作に勝手に手足が動く。忙しいのか暇なのか、それがよくわからないのが保安隊と言うところ。誠もそれが理解できて来た。
とりあえずネクタイは後で締めることにしてそのまま第一会議室に向かった。小柄な女性が会議室の扉の前を行ったり来たりしている。着ている制服は東都警察の紺色のブレザー。
「こんにちわ」
声をかけた誠を見つめなおす女性警察官。丸く見える顔に乗った大きな眼が珍しそうに誠を見つめる。
「神前曹長っすね。僕はカルビナ・ラーナ巡査です。一応、嵯峨筆頭捜査官の助手のようなことをしています!」
元気に敬礼するラーナに、誠も敬礼で返す。
「僕ってそんなに有名人なんですか?」
「そりゃあもう。近藤事件以来、遼南司法警察でも法術適正検査が大規模に行われましたから。軍や警察に奉職している人間なら知らない方が不思議っすよ!」
早口でまくし立てるラーナに呆れながら、誠はそのまま彼女と共に第一会議室に入った。




