保安隊海へ行く 162
「もう秋かねえ」
要は外からの風に短めの髪をなびかせていた。
「じゃあクーラーは要らないな」
「おい、風情ってモノの話をしただけだ。ちゃんとつけろよ、クーラー」
要に言われなくてもカウラはもうすでにクーラーを動かしていた。
「こんな道あったんですね」
「このルートの方が早いのよ。まあ、誠ちゃんは原付だから渋滞とか関係ないものね」
アイシャは涼しげな目を細める、細い路地、他に車の姿は無かった。そして住宅街を抜けると一面の田んぼが広がっている。
「ここから先はどう行っても大丈夫よ。まあ、菱川重工の正門で出勤組みの渋滞につかまるでしょうけど」
アイシャが伸びをする。カウラはそのまま細い農道を飛ばしている。
「そう言えば今日は誰もついてこないな」
「ああ、駐車場を出て住宅街の中でまいたぞ」
「カウラ、お前なあ。せっかくの胡州の税金使って護衛してくれるって言う連中まいてどうすんだよ」
至極もっともな要の突っ込みにカウラが笑みを浮かべた。車は菱川重工豊川の正門へと続く通称『産業道路』に出た。トレーラーが次々と走っていく中、カウラはタイミングを合わせてその流れに乗った。
「何とか間に合いそうね。カウラちゃんこれ食べる?」
アイシャはガムを取り出し、カウラを見つめた。カウラはそのまま左手を差し伸べる。
「アタシも食うからな。誠はどうする?」
「ああ、僕もいただきます」
ガムを配るアイシャ。六車線の道路が次第に詰まり始めた。
「車だとこれがね。どうにかならないのかしら」
「ここじゃあアサルト・モジュールや戦闘機なんかも作ってるんだ。セキュリティーはそれなりに凝ってくれなきゃ困るしな」
ガムを噛みながら腕を組む要。しかし、意外に車の流れは速く、正門の自動認識ゲートをあっさりと通過することになった。




