保安隊海へ行く 142
「西園寺さん!」
誠は振り向きもせず喫煙所に着いた要に声をかけた。
「どうした?」
そのままソファーに腰を下ろしてタバコを取り出す要。いつもと特に変わりのない彼女になぜか誠は安心していた。
「お前は良いのか?」
不意の言葉に誠は振り返る。エメラルドグリーンの流れるような髪をかきあげるカウラの姿があった。要の顔が一瞬曇ったように誠には見えた。
「なんでオメエがいるんだよ。カウラ」
そう吐き捨てるように言うと要はタバコに火を点す。そのまま大きく息を飲み込み、天井に向けて煙を吐いた。
「私がいるとまずいことでもあるのか?」
そんな要の態度に苛立ちながらカウラが要の前に立った。
「ああ、目障りだね」
そう言いながらまたタバコを口にくわえる。
「あの、良いですか?」
にらみ合う二人に声をかけたのはレベッカだった。後ろにはロナルド、岡部、フェデロが立っていた。
「何だよ。タバコを止めろとか言うのは止めとけよ」
「違います。これをもってくるように言われたので」
そう言ってレベッカがスーパーのレジ袋を差し出した。とりあえず誠がそれを受け取って中身を見る。
手打ちそばが入っていた。よく見ればロナルドがねぎを、岡部がめんつゆを持っている。
「隊長にこれをみんなで食えって渡されたんだが。あの人は一体、何しに本部まで来てるんだ?」
ロナルドがカウラの方に目をやる。
「昨日言ってた引越しそばだな。誠、パーラを呼んでくれないか」
カウラの言葉に誠はそのままアイシャの部屋の前に向かった。キムをはじめ、手伝っていた面々はダンボールから漫画を取り出して読んでいた。
「パーラさんいますか?」
「何?」
部屋の中からパーラが顔を出す。当然、彼女の手にも少女マンガが握られていた。
「なんか隊長がそば打ったってことで、レベッカさん達が来てるんですけど」
「隊長はこういうことだけはきっちりしてるからね。アイシャ!後は自分でやってよ」
そう言うと漫画をダンボールに戻してパーラは立ち上がった。
「エダ、サラ、それに西君。ちょっとそば茹でるの手伝ってよ」
パーラの言葉に漫画を読みふけっていたサラ達は重い腰を上げた。




