保安隊海へ行く 135
「加減しておけよ。また誠が暴走したら私は知らないからな」
そう言いながらカウラは手をかざして鉄板の具合を見ている。
「なんだ、まだ始めて無いのか?仕方ねえなあ」
戻ってきた要は、すぐさまもつとキャベツを鉄板の上に広げる。他のテーブルの鉄板でも同じようにタレをつけられたもつが焼かれ、肉の焼ける香ばしい香が部屋に満ちてくる。
「おい、小夏!アタシのボトル持って来いや!」
叫ぶ先の小夏はあからさまに嫌そうな顔をしながら階段を下っていく。
「貴様また小細工して誠を潰す気か?」
「なに怖い顔してるんだよ」
要が残っていたビールを飲み干す。その隣ではアイシャがニヤニヤしながら要を見つめていた。
「気持ち悪いな。アイシャ、先に言っとくがコイツはアタシの部屋じゃなんにもしてねえからな」
「何か言ったかしら?私」
アイシャはグラスを持って一口飲む。そして、すぐさま誠のコップが空だとわかると手近なビール瓶を持って誠に差し出した。
「調子に乗るなよ、アイシャ」
カウラは叱るような調子でアイシャをにらむ。だが、誠にはアイシャの酒を拒む勇気はなかった。黙ってその有様を見つめながらパーラは一人で鉄板の上を切り盛りしていた。
「おい、外道!持って来たぞ」
小夏がぞんざいに要の前にウィスキーとラム、それにテキーラのボトルを並べた。
「いいねえ、こう言うささやかな幸せっていう奴を大事にしたいもんだ」
そう言いながらビールが少し残っていると言うのにテキーラを注ぐ要。
「出来ましたよー!」
パーラが声を上げると同時にアイシャがキャベツをもつのタレに絡ませて手元の皿に集めた。
「キャベツ取り過ぎだろ!アイシャ!」
「え?そう?いつもは野菜はいいから肉食わせろって騒ぐ癖に」
「じゃあ私はこれをもらうか」
大き目のもつの塊を箸でつかむカウラ。手元のもつを見つけると、誠も箸を伸ばす。
「誠。お前も飲め!」
コップに半分以上注いでいたテキーラを飲み干し、ウィスキーに手を伸ばした要が、そのまま誠のコップを奪い取るとそのまま注ぎ始めた。
「だからそれを止めろと言うんだ!」
「だって注いじまったからな!ささ、ぐっとやれ!」
勢いだった。誠は言われるままに喉にしみるウィスキーを一息で飲み干した。




