保安隊海へ行く 113
「ご馳走様。ちょっとパーラ、コーラまだ?」
黙ってパーラがアイシャにコーラを渡す。アイシャは何も言わずに受け取ると、一息でコーラを飲み干し、空いたグラスをパーラに向ける。
「あのね、アイシャ。私まだ食べてないんだけど」
恨みがましい目でパーラはアイシャを見つめた。
「大丈夫よ、そうめんならまだあるから」
箸を置く春子の優雅な姿を見とれていた誠だったが、わき腹を要に小突かれて我に返った。
「俺はもう良いや。パーラさんもっと食べてくださいよ」
オレンジジュースを飲みながら島田も箸を置いた。
「そうね、あのアイシャの部屋を片付けに行くんだものね。それなりの覚悟と体力が必要だわ」
「なによその言い方。まるでアタシの部屋が汚いみたいじゃないの!」
「汚いのは部屋じゃなくてオメエの頭の中だもんな」
パーラはそうめんをすする。濃い目のつゆを飲みながら要が言ったその言葉に、思わずアイシャが向き直った。
「あなたの部屋なんて、どうせ銃とか手榴弾が転がってるんでしょ?そっちの方がよっぽど問題なんじゃない?」
アイシャの言葉に要はまったく反応せず、口直しの番茶の入った湯のみを口元に運ぶ。
「それは無い。私が行った時には手書きのタイガースのスコアーブックが一面に散らかっていただけだ」
同じように番茶をすすっていたカウラの言葉にお茶を噴出す要。
「らしいわね。まるで女の子の部屋じゃ無いみたい」
「そう言うアイシャの部屋の漫画もほとんど誠ちゃんの部屋のとかわらない……」
サラが言葉を呑んだのはアイシャの頬が震えているのを見つけたからだ。
「はい、皆さん食べ終わったみたいだから、片付け手伝って頂戴」
春子が気を利かせて立ち上がる。黙って聞き耳を立てていた菰田達もその言葉に素直に従って空いた鍋につゆを入れていたコップを放り込む。
「島田。何もしなかったんだからテーブルくらい拭けよ」
そう言うと菰田は鍋を持って厨房に消えた。
「どうせあいつも何もしてねえんじゃないのか?まあいいや、サラ。そこにある布巾とってくれるか?」
サラから布巾を受け取った島田はサラと一緒にテーブルを拭き始める。
「おい、誠」
要の言葉に振り向いた誠。そこには珍しくまじめな顔をした要がいた。
「ちょっと荷物まとめるの手伝ってくれよ」
そう言うとそのまま頬を染めてうつむく要の姿に、誠は違和感を感じていた。
「そう言うことなのね」
黙って様子を見ていた茜が口にした言葉に、要は顔を上げてみるものの、何も言わずにまたうつむいた。




