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それはライドラとともに魔王城を目指し始めて1ヶ月ほどが経った頃だった。
「召喚士、1度降りるぞ」
その日の目標の半分も満たないところでライドラが地上に降りた。
目の前にあるのは大きめの街。
ミュナーの町を出発して以来初めての街と呼べる場所だった。
「こんなところにも街があるんだな……」
「何を悠長なことを言っている。この地平線の彼方まで伸びている結界が見えないのか」
「結界なんて見えねぇよ……」
「そうか。それは悪かった。──今俺らの前には強力な結界が張られている。迂回しようにもその規模が大きすぎて先が見えん」
「つまり?」
「これ以上先には空を飛んでの移動は無理だ」
まったく……誰だよこんなところに邪魔な結界を張った馬鹿は……
いや、街があるなら街の中を進めばいいんだけどな。
──なんてことを考えていた時期が俺にもあった。
そうこれは過去形だ。
そもそも街の中に入れないなんて事態は想像していなかったわ……
「つまりどういうことだ?」
街を通り抜けようとした俺は門前払いをくらいノコノコと戻ってきているわけで。
「ここから先男子禁制。女人以外の通行を禁ずとのことだ」
「ならばどうする?」
選択肢はそう多いわけではない。
一番手っ取り早いのは街に攻め行って無理矢理にでも突破することだろう。
現実的ではないけどな。
「リリィたちを呼んで、あいつらに突破して貰うしかないだろうな」
「そうか。なら俺はしばらく塒へ戻ることにする」
「分かった。──解除!」
ここを突破するまではライドラの出番はないだろう。
まあ、そんなに時間はかからないだろうけどな。
「解除! ──そして召喚!」
「マスター、どうなさいましたか?」
「実は斯々然々で」
「またそれですか……つまり男子禁制の街と結界が邪魔をして先に進めないということですね」
何故これだけでリリィが分かるのかはもう気にしたら敗けだろう。
これくらいのご都合主義くらいあっても言いはずだ。
「そういうことだ。──というわけでリリィたち女性陣に突破をお願いしたい」
「分かりました。1度門の近くまで行ってきます」
リリィが街へ近付いていく。
そして戻ってきた。
「移動ポイントは確保できました。やはり私なら入れるみたいなので、準備を1度整えましょう」
「そうだな」
今日はもう日が下がり始めている。
また明日出直して貰うことにした。
そして翌日。
サシャを除いた女性陣が男子禁制の街へと向かい、1時間程経って戻ってきた。
どうしてリリィだけではなく残りの2人まで帰ってきてしまったのか不思議だったが、理由はこうだった。
「残念なお知らせです。あの街を抜けて対面に行くことはできたのですが、そこから先が私には越えられない領域でした」
「簡単に言うと魔法が使えないエリアみたいなの」
「それを抜けるのに徒歩だと最低でも1週間はかかるらしいわ」
何故ここで役割分担をしたかのように情報を分割したのかは分からないが、今置かれている状況が大変だと言うことは伝わった。
魔法が使えないならリリィのワーティで俺が街を越えることができない。
その最低でも1週間という距離を彼女たちに野宿をしながら走破して貰わないことにはこれ以上は進めないということになる。
いや、まあ、ワーティでそのまま魔王城へ向かうプランに変更すればいいだけなんだけどな。
「なので3人で1つ案を考えてきました」
「なんでも召喚士は魔法が使えない状況でも召喚ができるとか」
「それならあんたがあの街を抜ける方が効率的だと私たちは考えたわ」
あの。
あのあの。
貴女たちは何を言っているんでしょうか?
いや、できれば詳しい話は聞きたくないんだがな。
「──マスター。申し訳ありませんが、女装をしてあの街を突破してください!」
「しかし断る!」
「何を拒否してんだよ……男らしく腹を括れ」
「他人事だからって簡単に言うなよ! なんで俺が女装なんてしなきゃいけないんだ!」
「そういうと思っていたからゼノにも一緒に行って貰うことを考えてるよ」
あのエリスさん……
目が笑ってないですよ……
「…………ついていく」
「そうね。本当の女の子がいた方がバレにくくなるから助かるわ」
あのサシャさんまでどうして乗り気なんですか!?
「ついでにござるの人も参加させようか」
「とばっちりでござる!? ──それと拙者は正成でござる!」
はい。
犠牲者が1人増えた。
そもそも正成は忍術でそういうのもあるだろうから俺よりはショックが少ないのが癪だがな。
「──まさか某までそのようなことをさせるつもりではなかろうな」
「あんたはしなくていいわよ……したいなら勝手に独りでやってなさい」
「さすがにそこまで厳ついとすぐにバレてしまうからね」
「──そういうわけで女装をするための道具を揃えに行きましょう」
「いや──」
「──往生際が悪いわよ! さっさと諦めなさい!」
ワーティで魔王城へ行けるから。
そう言おうとしていた俺の言葉は彼女らに通じることはなかった。
そして結局俺は女装をさせられる羽目になったのであった。




